28.夏休みの生徒会
終業式から数日。
生徒たちで賑わっていた学園はすっかり静まり返り、広い校舎には蝉の鳴き声だけが響いていた。
夏休みに残る生徒はごくわずか。そんな中でも、生徒会の仕事だけは普段と変わらずある。
セラは生徒会室の扉をノックした。
「失礼します。」
「あっ、セラ!」
最初に顔を上げたリリアが嬉しそうに手を振る。
「おはよう!」
「おはよう、リリア。」
部屋の中にはレオン、ノア、カイの姿もあった。
「おはよう、セラ嬢。」
「おはよ〜。」
「セラちゃん、おはよう!」
三人に挨拶を返しながら部屋へ入る。
(あれ?シオンが最後なの珍しいな)
そう思った瞬間。
「……失礼します。」
再び扉が開き、シオンが入ってきた。
「おはよう、シオン。」
「……おはよう。」
短く返事をすると、シオンはそのまま一番奥の席へ向かう。
(……?)
なんとなく様子がおかしい。
(まだ体調悪いのかな。この前も顔色が悪そうだったし、疲れが残っているのかも)
そう思ったセラはシオンに近づき、小声で聞いてみる。
「大丈夫?具合悪い?」
「!……大丈夫。」
シオンは肩をびくりと震わせ、少しだけ椅子を引き、そっけなく返事を返した。
(……?目線が合わない?)
「それじゃあ始めようか。」
レオンが書類を机へ並べる。
「今日は文化祭の残りの会計整理と夏休み中の予定確認、それから備品整理だ。」
「すぐ終わりそうだね〜。」
ノアがのんびり笑う。
「頑張ります!」
リリアも元気よく頷いた。
静かな校舎に、紙をめくる音だけが響く。
夏休み中の生徒会室は、いつもより落ち着いた空気が流れていた。
しばらく書類を整理していると、探していた紙が見当たらないことに気付く。
(あれ……さっきここに置いたはず。)
机の上を見回していると。
「これ?」
ノアが一枚の書類を差し出した。
「あ。」
「さっきレオンがまとめてたから、こっちに混ざってたよ〜。」
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
ノアはいつもの調子で笑う。
特に気にする様子もなく、自分の作業へ戻っていった。
そのやり取りを見ていたリリアがにこにこ笑う。
「ノア先輩って、本当にセラのことよく見てますよね。」
「え?」
「さっきから困る前に気付いてるんですもん!」
「そうかな……?」
セラは首を傾げる。
「偶然じゃない?」
「えぇ〜?絶対違いますよ!ねぇ!ノアさん!」
リリアは楽しそうに笑う。ノアも困ったように肩をすくめた。
「好きな子が困ってるのを見逃せなくない?」
あまりにもさらっと言われて。
「っ!」
セラの頬が一気に熱くなる。
「そういうこと、さらっと言わないでください……!」
「事実なのに?」
「もう……。」
リリアは「きゃー!」と嬉しそうに声を上げる。レオンも小さく笑っていた。
そんな賑やかな空気の中で。
「……。」
ふと視線を向けると、シオンは静かに書類を書き続けていた。
こちらを見たかと思えば、すぐに視線を落としてしまう。
(やっぱり変。)
声を掛けようか迷ったけれど。真剣に作業をしているようだったので、結局やめておくことにした。
仕事は思っていた以上に順調に進み、お昼前にはほとんど終わってしまった。
「終わったー!」
カイが大きく伸びをする。
「そうですね。」
セラも書類を重ねながら頷く。
その時。
「セラ。」
ノアが机の横へ歩いてきた。
「荷物持つよ。」
そう言って、セラがまとめた資料の束をひょいと持ち上げる。
「あ、大丈夫ですよ。」
「知ってる。」
ノアは笑った。
「でも、これくらいはさせて。」
「……ありがとうございます。」
少し照れながら礼を言う。
その様子を見ていたリリアは、また嬉しそうに笑っている。
「本当に仲良しですね。」
「からかわないで。」
セラは恥ずかしくなって顔を逸らす。
その隣では、カイが頬杖をつきながら、いつものように笑った。
「いやー婚約するとこんな感じになるんだねー。ノアパイセン羨ましー」
軽い口調。
誰もがいつもの軽口だと思う。
けれど、その金色の瞳だけは、一瞬だけノアの手元を見つめていた。
セラの荷物。
セラの隣。
ーー全部、ノアが当たり前のように触れている。
「……。」
カイは笑う。いつもと変わらない笑顔で。気付かれないように。
ちょっと小話!
実は夏休みに残る生徒は本当に少ないらしいです!……まあゲームの都合上だと思います!




