表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を何度も殺してきた人たちと恋愛したら、ヤンデレ化された件  作者: ニアン
文化祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/62

24.婚約とそれぞれの想い

 文化祭が終わって一週間。


 定期テストも終わり、学園にはようやくいつもの空気が戻ってきていた。


 昼休み。


 校舎中央の掲示板には、生徒たちが何重にも人だかりを作っている。


「順位出たぞ!」


「うわ、緊張する……!」


 あちこちから悲鳴や歓声が上がる。


「セラ!」


 人混みの向こうからリリアが手を振っていた。


「見に行こ!」


「うん。」


 二人で人をかき分けながら掲示板の前へ向かう。学年ごとに順位表が貼り出されていた。セラは自分の学年の順位へ目を向ける。


一位 695/700 シオン・クロウ

二位 683/700 セラ・ウィンドフォール

三位 670/700 リリア・フェルノア

         …


「やったぁ!」


 リリアが嬉しそうに声を上げる。その一方でセラはシオンの点数に呆然とする。


(695点…!?そんな点数取れるんだ!?私なんて最初から大体の問題知ってるのに、それでも負けるって何事!?)


 少し遅れてシオンも人混みを抜けてくる。


「また勝ったな。」


「……やばくない?695?なんかもう勝てる気がしない……」


 その言葉にシオンは目を丸くする。


「珍しいな。いつもなら『次は勝ってやるから!(セラの真似)』くらい言いそうなのに。」


「は!?私そんな声じゃないし!シオンはそう見えてるんだ〜!……でも、シオンに努力では勝てそうにないし……」


 その言葉に赤くなったシオンに気づきもせず、セラは『死に戻りしてなかったら絶対こんな競れないな』と思うのだった。




♡ ♡ ♡




 その日の放課後。


 業務が終わった生徒会室ではテストの話題で盛り上がっていた。


「リリア嬢は三位だったんだね。」


「えへへ!」


 嬉しそうに胸を張る。


「今度は二位目指します!」


「十分すごいよ。私も一年生の点数を見たけれど、いつもだったら首席を取れる点数だ。シオンとセラ嬢が異常なだけで。」


 穏やかな空気が流れる。その時だった。


 生徒会室の扉がノックされた。


「失礼いたします。」


 入ってきたのは王城からの使者らしい男性だった。


「レオン殿下。」


「どうしました?」


 使者は一礼し、一通の封筒を差し出す。


「こちら、お父上様より()()の連絡として届いております。」


「ありがとう。」


 レオンは封筒を受け取ると、使者が音もなくササっと退出する。


 レオンは中に目を通すと、納得したように頷く。


「……ああ。」


 その様子にカイが首を傾げた。


「なんですか?」


「正式な届け出が受理されたそうだ。」


「届け出?」


 レオンは書類を畳み、自然な調子で答えた。


「セラ嬢とノアの婚約について。」


 部屋が静まり返る。


(……一週間…思ったよりも随分早く承認されたわね。承認されること自体あり得ないと思っていたけれど…それくらい二大公爵家の権力が強いのかしら……)


 セラも静かに驚く。


「…………え?」


 最初に声を出したのはリリアだった。


「婚約……?」


「うん。」


 レオンは落ち着いた様子で頷く。


「王家が彼らの届け出を正式に受理したみたいだ。」


 数秒の沈黙。


「………………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 叫んだのはカイだった。


「こんっ……えっ!?は!?」


 勢いよく椅子を蹴立てて立ち上がる。その金色の瞳が、驚愕と、それから信じられないものを見るような色に染まっていく。


「婚約って!?誰と誰が!?」


「だから。」


 レオンが苦笑する。


「セラ嬢とノア。」


「いや聞こえてましたけど!」


 カイは勢いよくセラを見る。いつもの軽薄な笑みが一瞬だけ消えかけ、すぐに引き攣ったような笑顔が張り付く。


「セラちゃん!?」


「あ、はい…。」


 セラは少し困ったように笑う。


(これでノアとの『協力関係』は公のものになった。断罪を避けるためなら、これが一番確実なはず……!)


「……正式に発表されるまで話してなかったんですけど、王家の承認も終わったので。これから両家で細かい話を進めることになると思います。」


 リリアが目を輝かせる。


「すごい……!本当におめでとうございます!」


「ありがとう。」


 セラはリリアの反応に安堵の笑みを浮かべた。


 その隣で、ノアものんびりと笑う。


「よろしくね〜。」


「……っ」


 セラはシオンが声にならない声を上げたことに気づいた。


(顔色が悪い?)


「……シオン?」


 シオンはセラの言葉にハッとしたかと思えば、逃げるように教科書を鞄に押し込んだ。


「……具合が悪いようなので、先に、失礼します」


「ほんとうだ。大丈夫?引き止めるようになってしまってごめんね。ゆっくり休みな」


 シオンはレオンの言葉を聞くか聞かないかのうちに、生徒会室を飛び出していった。


(やっぱりテストで夜更かしでもしたのかしら?まあ確かにあの点数は異常だったけど。)


 そんなセラの視界に、不自然なくらいニコニコなカイが入り込んでくる。


「……ねえ、セラちゃん。それ、本当に本気?」


 カイはいつものように机に頬杖をついたが、その金眼はいつもよりほんの少しだけ光が薄く、じっとセラを見つめている。


「カイ、先輩……?」


「いや、ちょっとびっくりしちゃってさ。ほら、俺、絶対大事にするよーってアピールしてたじゃん? なのに、そっち選んじゃうんだなーって。」


 言葉遣いはいつものカイのそれだったが、声のトーンが妙に落ち着いていて、どこか恐ろしい。


(え?なに?怒ってる?高級チョコ食べときながらなんだよこのヤロー的な?)


「え、あ、はい。両家の話し合いも進んでいて……」


「あー!ごめんねセラちゃん!怒ってるわけじゃなくてーそうだよね政略結婚とか?」


(それ聞かれると思わなかった〜!てか普通聞かないでしょ!…んーでもお父さんには両想いって書いちゃったし……)


 なんて返答するか悩んでいると、ノアが返答する。


「まさか〜恋愛結婚だよ〜」


(そういう設定にするの!?まあ私的にはありがたいけど。)


 セラは顔をボンっと赤くした。リリアからキャーという声が聞こえる。ノアが笑う。


その一言で。


カイの笑顔が、一瞬だけ止まった。本当に、一瞬だけ。


「……そうなんだ。」


笑っている。笑っているはずなのに。目だけが、笑っていなかった。


「……おめでとうございます」


 カイは一瞬、セラの隣で平然と微笑んでいるノアに冷ややかな視線を向けたが、すぐにいつもの笑みを貼り付け直した。お祝いの言葉を口にするカイの笑顔はどこか不自然で、その目の奥には暗い光が揺れている。


(な、何これ……。やっぱなにか間違えた!?……大丈夫よセラ。そのための婚約なんだから。)


「そろそろ生徒会室閉めよっか。はい!みんな帰る準備!」


 いつもはこの掛け声で騒がしくなるけど、今日は何故か静かになった。


「じゃあ、失礼します。」


「あ〜待って」


 ノアから声がかけられる。


「僕が送るよ〜」


 セラは驚く。


「いつもレオンさんと帰ってるじゃないですか」


「私は構わないよ。流石に婚約者との時間を引き裂こうとは思わないからね。まあでもノアが私と一緒に帰りたいなら一緒に帰ってあげるけど。」


「じゃあ行こっか〜」


「ノア!」


 リリアがそのやり取りを見ながらくすくすと笑った。


 ノアは当たり前のようにセラの荷物を持ち、レオンも後を追うように生徒会室を後にする。


「じゃあ、お先に〜。」


 扉が閉まる音だけが静かに響いた。


 残された生徒会室には、さっきまでの賑やかさが嘘のような静寂が落ちる。


「……カイさん?」


 リリアが様子のおかしいカイに声を掛ける。カイは扉を見つめたまま、小さく瞬きをした。


「……あ。」


 それから、いつものようにへらりと笑う。


「やばー。俺、ちょっとショック受けてるかも。」


 軽い口調。冗談みたいな笑顔。なのにリリアは笑えなかった。


「カイさん……」


「大丈夫、大丈夫。」


 そう言って笑う。笑う。


 笑っているのに。その笑顔だけが、どこか壊れそうだった。


「俺も帰るね。」


 荷物を肩へ掛ける。背中を向けたまま片手だけひらひら振る。


「じゃ、お疲れー。」


 扉が閉まる。


 リリアはその姿を呆然と見ていた。


「……なんだか、カイさん。」


 小さく呟く。


「泣きそうな顔、してました。」

ちょっと小話!


実は王家が正式に承認した婚約は破棄するなら王命か、重大な不祥事かが必要です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ