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私を何度も殺してきた人たちと恋愛したら、ヤンデレ化された件  作者: ニアン
文化祭編

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20/62

19.文化祭ー夜の部(前半)

「あっ、朝ぶりですね!巡回いきましょうかノアさん。」


 生徒会室の前まで行くと、ノアが待っていた。


「あ〜。そうだね」


 日が落ちても、学園の熱はまだ冷めていなかった。

 中庭からは軽音楽の演奏が響き、遠くでは打ち上げ花火の準備をする声がする。廊下にはまだ行き交う生徒が多く、笑い声や呼び込みの声が途切れない。


 ランタンと魔法灯が混ざり合い、昼とは違う賑やかさが学園を包んでいた。


「思ったより人いますね……」


 セラが巡回表を見ながら呟く。


「ん〜、ここからが本番みたいなところあるからね〜」


 隣でノアがのんびりと歩いている。


「夜の方がテンション上がる人、多いし〜」


「確かに騒がしいですね。」


「でしょ〜」


 いつも通りののんびりとした返事に、少しだけ肩の力が抜ける。


(ノアと巡回か……気まずいんだよな〜。こないだ何か言いかけてたこと言うためにペアにされた気がする)


 なるべくノアとは関わらないように、周りに目を向ける。


「いらっしゃいませー!魔法お化け屋敷やってますー!」


「焼き菓子まだ残ってますよー!」


 昼とは違う、少し浮かれたような熱気。その中を、私たちはゆっくりと歩く。


 すると突然ノアが口を開く。


「ねえ。こっち。」


 なにを思ったのかそう言って、巡回ルートではない方に進んでいく。


「え?どうしたんですか?」


「ちょっと気になることがあって」


 そう言いながらぐんぐん進んでいくので、ついていくしかない。


「それなら報告した方がいいんじゃないですか?」


「まだ確証はないから」


「……?」


(本当にどうしたんだろう。私は異常を感じなかったけど…)


ーー校舎の裏手


 装飾のために開放されている中庭のさらに奥。普段はあまり人が来ない場所だ。


 賑やかな音が遠くなる。そこでピタリとノアが止まる。


「ここですか?」


「うん〜」


 ノアは周囲を見回す。

 ランタンの光は届かず、魔法灯もまばらで、少しだけ薄暗い。


「……特に何もないように見えますけど。」


(……嫌な予感がする…)


「そうでもないよ〜」


 ノアは軽く指を鳴らした。

 刹那、なにかの攻撃魔法が飛んでくる。


「っ……!」


(なに!?もう!?こんなところで!?)


 セラは断罪が今行われていると判断した。

 セラは狙われたのはノアだったことに気がつく。

 セラに向けられた魔法よりも、ノアに向けられた魔法の方が遥かに多かったからだ。

 視界の端で、セラよりも魔法がノアの腕に直撃与えたのが見えた。




ーー腕が弾けた。


(……え?)


「ノアさん!!」


 吹き飛ばされたノアは、石壁にぶつかる。

 鈍い音。

 魔法灯が揺れ、光が一瞬乱れた。


(気絶してる……は、早くどうにかしないと…!)


 もう魔法は飛んできていない。だからと言ってノアの助けを呼ぼうにも、近くに人がいない。


(今ここを離れたら、ノアになにがあるかわからない……)


 この時、セラはもう少しよく考えるべきだった。

 この状況を作ったのはノア自身で、魔法が飛んできたトリガーがノアの指パッチンだったことを。

 そう、パニックとノアは気絶しているという油断で使ってしまったのだ。


「ーー{ヒール}」


 紡がれた詠唱とともに、指先から一粒の光が生まれた。それは夜空へ舞う蛍のようにふわりと浮かび上がり、次の瞬間には幾千もの光の粒へと姿を変える。


 淡い金色の輝きは静かに渦を描きながらノアの腕を形作っていく。


 光は熱を持たない。けれど、見ているだけで心まで温まるような、不思議なぬくもりがそこにはあった。


 輝く光は腕を形作り終わると、突然霧散し、そこにはなにもなかったように腕が元通りになっていた。


 夜の闇に残されたのは、微かに光の余韻だけ。まるで星屑がひととき地上へ舞い降りていたかのような幻想的な空間がそこにはあった。


「……ふう。やっぱ久しぶりに使うと結構疲れるなぁ」


 魔法を行使した後の気怠さで息を吐いた次の瞬間。


「……あは…あはは、あははははは」


 さっきまで気絶していたノアが笑いながら、立ち上がる。


「やっぱり僕は正しかった!君は天才だよセラ・ウィンドフォール!」


 狂気の沙汰のようなノアの様子に、セラはドン引くと共に、今までの行動を思い出し、やらかしたと悟った。


「君が風属性の魔力を持っているのは僕が確認済みだから、その若さで、しかも、腕一本治せるほどの光魔法が使えるなんて、普通はありえない!でもそれをやり遂げてしまった!君は魔法の申し子だ!」


 大袈裟なまでの身振り手振りをしてしゃべる目の前の人は本当にノアなのだろうか。セラはノアの中身が入れ替わったのではないかと錯覚する。


(なんとかいつものノアに戻さないと…!)


「いや、ノアさんは気絶ーー」


「本当に君は純粋な子だね。だから光魔法にも愛されるのだろうけど……まさか本当に僕があの程度の魔法を避けれないとでも?」


 言い終わる前に、遮られた。でも、そんなのどうでもいいくらいにノアの発言にショックを受けた。


「じゃあ全部自作自演で…?私が光魔法を使えなかったらどうするつもりだったんですか!」


 声が震える。


「君みたいに腕一本治す力がなくても、応急処置程度のヒールはできる……なんでそこまでやるのかって顔してるね。もちろんやるさ!それくらい光魔法は()()なんだから!」


(あっ)


 少し前に感じた違和感の正体がわかった。

 

 それは信じられないくらいの光魔法への『執着』。


「君が現れる前はリリアが申し子だと思っていたけれど、危なかった。」


(だから、めんどくさがりなノアが光魔法の指導をリリアにしてあげていたのね…)


「ああ今日はなんていい日なんだろう!」


 セラは考えた。別にセラも光魔法が使えると知らせること自体はなにも問題はない。けれど、攻略対象者たちに知られて断罪が早まることは絶対に避けたいのだ。


(…なんかこの人にはもう殺されない気がするから、もうバレても仕方ないって思い始めてきたけど……)


 目がやばくなり始めているノアに目を向ける。


「……ノアさん。このことは口外しないでもらえませんか?」


 意を決して声をかけると、今までの興奮が嘘のようにスンッと冷静になり考えるようなポーズをとった。

 セラはもう少し興奮を抑えて欲しいとは思ったけれど、そこまで急に抑えられると怖くなった。


「……じゃあ交換条件をつけよう。」


「……はい。」


 セラは断罪が早まるよりも怖いことはないと知っているので、どんとこいという気持ちになる。


(運良くこっちは金持ちだし、ノアと同じくらいの身分もある!)




「ーー僕の婚約者になってくれない?」


「…はい?」

ちょっと小話!


実はノアが指パッチンして魔法が飛んできたのは魔法陣が設置してあったからです!

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