14.忘れてきた頃に
定期テストが近づき、放課後に残って勉強する生徒の姿も少しずつ増えてきた。
セラもその日、生徒会の仕事を終えて寮へ戻ろうと、廊下を歩いていると、前方から聞き慣れた声が聞こえる。
「セラー!」
振り向くと、リリアが小走りで駆け寄ってきた。
「よかった、まだ帰ってなかった!」
「どうしたの?」
「実はね、最近やってなかった光魔法の練習をしようって話になって!」
「今から?」
「うん!」
リリアは嬉しそうに頷く。
「ノアさんが今日ならいいって!セラも一緒にどう?」
(…生徒会ではほぼ関わりないから大丈夫だったけど、あんなことがあってからリリアと三人はなぁ。)
「セ〜ラ〜」
「…いいよ。」
「やった!」
いつになったらリリアの上目遣いに対抗できるんだと嘆くセラにリリアはぱっと笑った。
♡ ♡ ♡
中庭には夕日が差し込み、噴水の水面が橙色にきらめいていた。
花壇には季節の花が揺れ、風が木々の葉を優しく鳴らしている。
「お、来た来た。」
ベンチにもたれかかっていたノアが片手を上げた。
「思ったより早かったね。」
「お待たせしました!」
「今日もよろしくお願いします。」
セラが頭を下げると、ノアはくすっと笑う。
「正直リリアさんの指導はセラさんに任せてる節があるし〜逆に助かってる〜」
「……ノアさんがそう感じてるだけじゃないですか。」
「うーん。そうかな…まあいっか。じゃ、始めるよ〜。」
♡ ♡ ♡
ー一時間ほど経った頃。
「ちょっと喉渇いた!」
リリアが額の汗を拭う。
「飲み物買ってきます!」
「あ、私もーー」
言いかけたセラより先に、
「セラさんは休んでなよ〜」
ノアが笑った。
「今日も結構頑張ってくれたし〜」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。」
リリアは「すぐ戻りますね!」と言って走っていった。
中庭には二人だけが残る。
風が木々を揺らし、噴水の水音だけが静かに響いていた。
「……。」
(…本当になんで引き留めたんだこの人!こっちはあれからすごく悩んだのに!全然説明もなかったし!)
沈黙を破ったのはノアだった。
「そういえば〜」
「?」
「この前の続き。」
セラの肩がぴくりと揺れる。
「『なんでだと思う?』って聞いたじゃ〜ん。その答え分かった?」
あのときのことを思い出してじわじわと顔が熱くなる。ノアはその反応を見て、小さく笑い、ベンチに座ったまま空を見上げた。
夕日に照らされた横顔から、いつもののんびりとした笑みが少しだけ消える。
「今日、ほぼ確信に変わったんだけど、セラさんってさーー」
そこへ、
「戻りましたー!」
リリアが飲み物を抱えて戻ってきた。
空気は一瞬でいつもの穏やかなものへ戻る。
「あれ?セラ顔赤いけど大丈夫?」
「あ!ええ!ちょっと疲れちゃったみたい!」
(ナイス!マジでいつも助けて欲しい時に来てくれる!)
セラは胸の奥に残る小さなざわめきを隠すように、受け取ったジュースへ視線を落とした。
ちょっと小話!
実はノアさんは親の方針で光魔法は独学だとか!もしかしたら教えるのが下手なのは、感覚に全てをかけているからなのかもしれません!




