11.新しい仕事
ーー放課後。
今日もセラは生徒会室の扉を開けた。
「失礼します。」
「いらっしゃい。」
レオンが穏やかに微笑む。
ここ一週間で、この部屋に入ることにもだいぶ慣れてきた。 中にはすでに全員が揃っている。
「セラちゃーん!」
「はいはい。」
反射的に返事をすると、カイが嬉しそうに笑った。
「最近冷たさ減ったよねー」
「そうですか?」
(一週間。よく考えたら今回の目標はある程度攻略対象者と仲良くなることだから、恋愛までいかなければむしろ歓迎すべきことなのよね。)
各々が席に着くと、レオンは手元の書類を軽く整えた。
「今日は少し早いけど、次の仕事について話そうと思う。」
「次の仕事?」
リリアが首を傾げる。
レオンは頷いた。
「七月の終わりにある文化祭。その準備を今日から少しずつ始めるよ。」
(……このくらいの時期から準備が始まるのね…)
「文化祭って、生徒会がそんなに関わるんですか?」
リリアが素直に尋ねる。
「かなりね。」
レオンは笑顔のまま説明を続ける。
「企画の審査、予算の管理、パンフレットの作成、当日の巡回、ステージ進行……全部生徒会が中心になる。」
「全部!?」
セラは思わず声を上げた。
「思ったより仕事多くないですか?」
「多いよ。」
レオンはあっさり頷く。
「だから毎年この時期から準備を始めるんだ。」
「うわぁ……。」
セラは心の底から声を出す。
(生徒会なんて絶対に関わりたくないところだったから知らなかったけど、そんな大変なんだ…)
隣ではカイが同じように肩を落としている。
「めんどくさぁ……。」
「去年も同じこと言ってたね。」
「だってめんどいじゃないすか。」
「その割には最後までちゃんとやるけどね。」
「……レオンパイセン…!」
少し照れくさそうなカイに、部屋の空気が和む。
ノアは頬杖をついたまま欠伸を一つ。
「俺は照明関係だけ頑張る〜。」
「照明だけじゃ困るんだけど。」
レオンが苦笑する。
「光魔法使うところだけ呼んで〜。」
「却下。」
「えぇ〜。」
いつもの調子に、思わずセラも笑ってしまった。
一方でシオンは、すでに去年の文化祭資料を開いている。
「去年の来場者数は約四千人……。」
「もう読んでるの?」
セラが思わず声を掛けると、
「事前に把握しておいた方が効率いいだろ。」
真顔で返される。
(早い……。)
こういうところがシオンらしい。
レオンはそんな皆の様子を見て、満足そうに頷いた。
「じゃあ今日は最初の仕事。」
そう言って一枚の紙を掲げる。
「各クラスから文化祭の企画書を集めてもらう。」
「企画書?」
「文化祭で何をやるか、各クラスに提出してもらうんだ。」
「なるほど……。」
リリアが納得したように頷く。
「もちろん期限もある。」
「期限過ぎるクラスってあるんですか?」
セラが聞くと、
「毎年ある。」
レオンは即答した。
「だから催促するのも生徒会の仕事。」
「うわぁ……。」
思わず二度目の声が漏れる。
「一年生三人には、一年生の各クラスを回ってもらおうと思う。」
「私たちだけですか?」
「うん。クラスも近いし、一番効率がいいからね。」
シオンはすぐに頷いた。
「わかりました。」
「私も大丈夫です!」
リリアも元気よく返事をする。
セラも頷いた。
「わかりました。」
レオンは三人へ企画書の束を渡した。
「今日中に全部配る必要はないから、無理せずね。」
「はい。」
そのまま話は進み、締切日や提出方法など細かな確認が続く。
文化祭という言葉が出ただけで、生徒会室の空気が少しだけ活気づいていた。
そんな様子を見ながら、セラはぼんやりと思う。
(……文化祭か。今までの周回ではあんまり積極的にやってこなかったんだよね)
今まで断罪に繋がりそうなものは、関わってこなかったし、関わりたくなかったセラでもこれだけは分かる。きっとこれはリリアたちに大きな影響を与えるだろうと。
(だから私は、余計なことはしない。)
恋愛未満の距離。
それを保つ。
それが今の目標だ。
(だからきっと、大丈夫。)
胸がズキっと痛む。
セラは分かっていた。少しずつ情が移り始めていることを。でも、ある程度のところで突き放さねば本末転倒なことも。
受け取った企画書を鞄へしまう。
ーーそんなことを考えていたからだろうか。セラはすっかり忘れていたのだ。この時期にもう一人の攻略対象者が登場することを。
ちょっと小話!
実はシオンは基本的にリリアとセラ以外とはあまり仲良くしません(前回の周回ではリリアだけ)!今もノア、レオン、カイとは業務的な話ばかりしています!




