16 最終話
最終話です
「えーっと・・・あちらで準備はすべて終わってて、身一つで嫁いできてくださいと・・・」
「そんな訳にはいかないだろう?」
「でも本当にすべて用意してもらっちゃいました。ドレスから化粧品、住む家まで」
「なっん・・・」
「ウエディングドレスも、この後向こうに戻ったら微調整するだけに・・・なってます」
「できればお父様達にも出席して欲しいけれど、遠いので無理は言わないとのことです」
「あちらには知り合いもいないのに大丈夫なの?」
「知り合いは沢山います。どちらかというとこちらより向こうの方が友人も知人も多いです。こちらでは婚約破棄の件で友人もあまり作れませんでしたし・・・」
貴族の友人は薄情だ。
瑕疵が付くと同様に見られるのを嫌がり一人二人と離れていく。
最近は私が友人を引き止められなかったのかもしれない、と思うようになった。
人間不信だったのよね、私。
「わかった。アマンダはシューレと結婚する。それでいいんだな?」
「はい。すべて私が望んでいることです」
「勿論何があっても結婚式には出席する。一緒には出発できないが、後から馬で追いかけるよ」
「私はアマンダと一緒に行きますからね」
母が父に宣言しているのが、少し可笑しい。
「行ってきなさい」
母は私と一緒に出発して、父と兄は後から馬で追いかけてくることになった。
「お父様、私の我儘を聞いてくださってありがとうございます」
母は涙をボロボロと零した。
「私のせいで苦労をさせた。誰よりも幸せになりなさい」
父は父なりに私に負い目を感じていたのだと思った。
私は満面の笑顔で答えた。
「はい。幸せになります」
翌日、シューレと家族全員が席に着き話をした。勿論リスカも一緒だ。
「アマンダ嬢との結婚を許していただけますか?」
「娘をよろしくお願いします」
リスカ以外が涙した。
という一幕があり、感動もかくや、その後リスカに絡まれた。
ドンと壁際に突き飛ばされる。
「あなたは本当に嫌な存在ね。惨めに小さな家でひっそりと暮らしていればいいのに!いまさら嫁入り?!本当に腹が立つったらないわ」
「私そこまでリスカお義姉様に嫌われるようなことしたかしら?」
「ふん。あなたが惨めったらしくしていたら私の気分がいいだけよ」
「聞き捨てならないな」
リスカが振り返ると、そこには兄がいた。
私には早くから兄の姿が見えていた。
ただ、兄に黙っていろとジェスチャーで示されたので黙っていた。
「前々からアマンダへの態度は許しがたいと思っていたが、妻だからと尊重したのが間違いだったようだ」
「違うのっ!」
焦ったリスカは兄に取り縋る。
「突き飛ばすところから見ていたよ。アマンダの幸せにケチをつけないでくれ!」
「ご、誤解よっ!」
「うんうん。わかった。わかった。アマンダが旅立つまで取り敢えず実家に遊びに行くといいよ。今すぐ」
「そんなっ」
「早くしてくれ?私は今忙しいんだ。手を煩わせないでくれ」
メイドを呼び「リスカを実家に戻せ!」と兄が言いつけた。
「お兄様・・・」
「後で話し合うよ」
私の額にキスを1つ落として兄はリスカの下へ行った。
2日ほどゆっくりして、シューレとヴィーノと一緒に馬に乗り、小さな家に向かう。
持ち帰る荷物など極僅かだ。
ヴィーノに集落の皆に来てもらうよう頼む。
「ここが君が住んでいた家なんだね」
「ええ、カリュース様もここに泊まっていただきました」
背後から抱きしめられ頬にキスをされる。
「ここから私達の出会いは始まっていたんだね」
「そう、だと思います」
振り返るとシューレの優しい微笑みがあった。
唇に小さなキスが落とされ幸せを実感する。
表がにぎやかになり、皆が集まってきたのが分かる。
結婚することが決まってここを出ていく事になったと伝えると皆、喜んで、寂しがってくれた。
「お世話になりました」
「幸せになってください」
「わしらの姫さん、よろしくお願いします」
口の聞き方にヒヤリとしたが、シューレは鷹揚に「確かに承りました」と答えてくれていた。
この家に残っている私の服は集落の女性に分け与えた。
裁縫上手な人がバラして着られるようにするか、売るだろう。
日用品は残しておかないと、カリュースのときのようなことがあった時に困るのでそのまま残すことになっている。
私個人のものだけを小さなバッグひとつにまとめた。
その日一泊し、翌朝、私の小さな家に別れを告げた。
帰宅すると本当にリスカがいなくてなっていて兄に本当にいいのか何度も聞いた。
「私はいなくなるのよ?」
「アマンダのことだけが理由じゃないんだ。他にもいろいろあるんだよ」
両親にも「いいのか」と聞いたが「いいのだ」と答えた。
妹とアレクが「未来のお義兄様と会いたくて」と言い、来てくれた。
妹と会うのは結婚式以来初めてだった。
「お姉様お久しぶりです」
少し膨らんだお腹を見て妹の幸せを知る。
「おめでとう。元気にしてた?アレクも」
「元気ですよ」
「こんな所まで来て大丈夫なの?」
「大丈夫。今会わないともう会えないかもしれないでしょう?」
「そうね。ちょっと遊びに行くっていう距離じゃないものね」
シューレを紹介し、妹とアレクを紹介した。
シューレは思うところがあったのか、アレクの肩をバンバン叩き「よろしく」と言っていた。
兄と母の出立の準備が整い、シューレと父が酒を飲み交わした翌日、ラーセスマイトへ旅立つ日がやって来た。
父は何も用意ができなかったからと持参金として現金を私に持たせてくれた。
その金額はシューレも驚くほどだった。
「お父様、こんなにいただけません!!」
「いいんだよ。これはお前のためのお金だからね」
母と兄もいいのだと首肯いてくれる。
「お父様・・・」
「本当にすまなかった。幸せになるんだよ」
「はい。お父様。ありがとうございます」
「シューレ、娘を頼むよ」
「わかりました」
来た道を帰るのか、帰ってきた道を行くのか。
私とシューレは未来に向かって歩いていることは間違いない。
アデレートでは私は幸せを見つけられなかった。
遠のくアデレート国を振り返り、ラーセスマイトで幸せになるわ。そう心に誓った。
Fin
今までお付き合い頂きありがとうございました。
リスカ視点を補足で書きました。




