12
私達だけ離れた場所で席が作られていて喧騒も遠い。
食事の合間にぽつりぽつりと互いのことを話す。
シューレは二十五歳で四人兄弟の一番下で騎士様。
今まで婚約も結婚もしたことがない。興味が持てる相手がいなかったから。
「私は今、アマンダ嬢にときめいている。このときめきがなにか分かるまでもう少しこの国にいて欲しい」
「私、お世話になるばかりで」
「ヴァレリーの所が居辛いなら私の屋敷に来るのはどうだろう」
「さすがにそれは・・・」
「そうだね。言ってみただけ」
「アマンダ嬢は今の気持ちの終着点を見てみたいと思わないかい?」
「見てみたいと思います」
「よかった」
張り詰めていた糸が緩んだ気がした。
デザートの頃には互いの子供の頃の話をして声を上げて笑っていた。
「残念だけど明日は仕事なんだ。十八時頃に終わるからディナーだけでも一緒にどうだろう?」
「はい。喜んで」
「私が普段行くビストロへ行こう。初めて会った時くらいの格好で」
「わかりました」
長く居たみたいでマーベラス達の姿は見えなかった。
帰りの馬車の中で指を絡めて手をつないだ。
互いに無言で繋がれた指先で遊ぶ。
シューレの親指が私の親指から手首に向けて撫で上げていく。
ゾワゾワした。
きっと私の顔は真っ赤だ。
心の中は大嵐に見舞われていた。
馬車が止まりとが開けられる、シューレが降り、私に手を差し出してくれる。
暗闇でも気が付いたのだろう。
「顔が赤い」と言って私の頬を人差し指の腹でそっと撫でた。
「もう・・・無理・・・」
クスクスと笑われ経験値の差を感じる。
マーベラス邸のドアが開かれ皆に出迎えられる。
全員が私の顔を見てニヤニヤと笑う。
私は居ても立っても居られず「おやすみなさい」と言い、逃げた。
翌日ニーカとシャッテがニヤニヤしている。
腹立たしい。
「シューレが「時間が許す限りアマンダ嬢を留め置いて欲しい」と言っていたわよ」
「ローランもヴァレリーも快く了承していたわ」
「そんなに長い間お世話になってもよろしいのですか?」
「勿論よ。私達、もしかしたら親戚になるかもしれないんですもの」
「あのっ、まだそこまでは・・・」
「シューレが嫌になったら直ぐに逃してあげるわ」
「男共は女性の気持ちなんてわからないんだから」
「私達はアマンダの味方よ」
優しい微笑みに勇気をもらう。
「ありがとうございます」
「今日は仕事が終わってからデートなんでしょう?」
「はい。ビストロに連れて行ってくださると」
「可愛くしましょうね」
ニーカとシャッテが私の部屋に服を見に来て、一着のワンピースを選んだ。
ワンピースにニーカの小物のレースを縫い付け、華やかに見せる。
「着て見せて」
「どうですか?」
「あとは髪をゆるくアップして後れ毛で色気を出しましょう」
「完璧よ」
皆に会う度にニヤニヤされる。
「しっかりね」
「頑張ってね」
迎えの馬車がやって来て皆に送り出された。
私、相手に望まれてデートするの初めてじゃないかしら?
いやだ、どうしよう。
いい年をして小娘みたいに、恥ずかしくなってきた。
シューレに出迎えられ、私の顔が赤いことに気付かれてしまった。
嬉しそうなシューレの表情にうっとりしてしまいそうになり、小さく首を振り正気を保つ。
食事をしながら今日一日どれだけ恥ずかしかったか説明した。
「もうっ!恥ずかしくて死にそうです」
今も恥ずかしい!!
「死なれると困ってしまうな」
「でも、もう死にそうです」
「嬉しいよ」
「へっ?」
「私のことを一日中意識していてくれたんだろう?」
くぅ・・・本当に死にそう。
「シューレ様も意識して下さいましたか?」
「夢の中でもアマンダ嬢に会いたいと望むほどに」
「もう!シューレ様のバカっ」
軽快な笑いをシューレが上げた。
「明日も会える?」
「はい・・・死にそうですけど」
また笑われた。




