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マーベラス邸に戻ってニーカが男性陣に「明日のお芝居にシューレを誘ったの」と話していた。
昼からはゆっくりした。
昨日買ったドレスの一着が朝早くに届いた。
着替えるように促され、マーベラスのメイドがこちらの流行りの髪型にセットしてくれた。
アデレートでは見たことのない髪型とドレス。
鏡に映る私は特別な私のような気がした。
マーメドラインがウエストの細さを強調している。
「似合うかしら?」
「よくお似合いです」と結った本人とヴィーノが褒めてくれる。ちょっと恥ずかしくて顔を赤くして皆の前に行く。
「どうでしょう?似合いますか?」
「とても綺麗よ」「かわいい」「美しい」「お姫様のようよ」
と皆褒めてくれた。ますます顔が赤くなり「ありがとうございます」とお礼を言った。
シューレが到着したと執事が言い、私を見て「とてもお美しいです」と言ってくれた。
全員で玄関に向かい、シューレはこちらを見て息を呑んだように見えた。
取り繕うように咳払いし、私に手を差し出す。
エスコートしてくれるのだと理解して私も手を差し出す。
「ありがとうございます」
「私の方こそ美しい方をエスコート出来て光栄です」
馬車にはカリュース夫妻とシューレと私が乗り、もう1台にマーベラス夫妻が乗った。
劇場に着いてシューレにエスコートされていると若い女の子が振り返る。
「アマンダ嬢を見ようと皆が振り返りますよ」
「シューレ様を見るためですよ」
私達の会話を聞きカリュースが「二人共素敵だよ」とからかう。
特別席に案内され、腰を落ち着ける。
芝居の内容はコメディなのだが、婚約破棄もので身につまされた。
婚約破棄の場面で思わず涙が出てしまった。
その横でシューレがまた息を呑んだことに私は気づかなかった。
芝居が終わる頃には楽しくてちょっとはしたなく笑ってしまった。
「面白かったですね」
「そうだね。よく笑ったよ。あの・・・」
「はい?」
「この後よかったら二人で食事をしないか?」
「えっ?」
「付き合っている人や婚約している相手がいる?」
「いえ・・・」
シューレと私の会話を聞いてマーベラスが言った。
「嫌なら断るといい。もう二度と会うことはないんだから。でも嫌じゃないなら受けるといいと思うよ。未来はあるんだから」
外国なのだし、臆病になる必要はないと背を押された気がした。
「お受けしたいと思います」
マーベラスの馬車に2人だけで乗る。
「少し恥ずかしいです」
カリュース達は先行して私達の席を作ってもらうと言っていた。
「聞いてもいいかな?」
「はい?」
「お芝居を見て涙を流していただろう?どうしてかな」
「ちょっと身につまされちゃいました」
私の過去の話をシューレに話した。
幼い頃のことは笑って話せたが、徐々に声が震えた。
考えたら私は婚約破棄の話を誰かにしたことがなかった。
皆知っていたから。
「それは・・・心無い人が多いね」
「少し人が怖くなってしまって、今は国境近くの小さな村とも呼べない集落で暮らしています」
シューレが長いため息を吐き、私の手をとりシューレの頬に私の手を当てた。
男性にこんな事をされたことがない私は息を呑んだ。
「ドキドキする?」
「は、い」
「嫌な感じがする?」
「い、え」
頬から手を離され、寂しいような、ホッとしたような複雑な気分になる。
レストランに着くまで手を繋ぎ、シューレの膝の上に置かれたままだった。




