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「出会ったのは初めての仮面舞踏会でね、曲が始まった時にたまたま近くにいたから、踊りましょうと軽く声を掛けてきたの」
シャッテはもう、夢見るお嬢様の顔になっている。
「相手が誰かわからないから、派閥がどうとか気にしなくていいし、私も軽くお受けしたのよ。そしたらとても踊りやすくて動きがピッタリ合うのよ」
ダンスシーンでも思い出しているのだろう。
ニーカまで夢見ている表情になっている。
「思わず『踊りやすいですわ』って言ったら相手も『私もとても踊りやすいです』と答えたの。ダンスの上手さにちょっとだけうっとりしてその場はそれで終わり」
シャッテはちょっと寂しそうな顔をした。
「それから夜会で色んな人と踊ったけど、あの仮面舞踏会で踊った人に出会えなかったの。ああ、他派閥の人なんだって理解したわ。それで夢見るのはあきらめたの」
シャッテは寂しそうな顔のまま話す。
「また仮面舞踏会が開催されてまた、近くにいた人に『踊りましょう』と言われて踊ったの。そうしたら前回と同じ踊りやすい人だったのよ!運命でしょう?」
うっとりとした顔になる。
「その時に『あなたを捜したけど出会えなかったわ』ってつい言っちゃって。うふっ」
ますますうっとりした顔になっている。
「『奇遇ですね。私もあなたを捜しました』って言ってその場で膝を付いてプロポーズしてくれたの」
私の手を叩きながら照れている。
可愛いけど痛い。
「私、他派閥だってわかってたのに、即座に受けてしまって、その後仮面を外して互いが誰かわかったの。父親同士がとても仲が悪い相手だって」
ハンカチをギュッと絞る仕草をする。
もしかして父親の首を絞めているのだろうか?
「それからのシャッテ達は凄かったわよ〜親に反対されればされるほど燃え上がっちゃって最後には親が折れたのよね」
「そんな簡単に話を終わらせないで!凄く辛くて凄く幸せだったわ。今も幸せ。だから本当にアマンダには感謝しているの。ローランを助けてくれてありがとう」
改めて感謝されて恥ずかしくなってしまった。
「さぁ、着いたわよ」
馬車から降りて案内されたのはドレスショップだった。
中に入ると店の人はすべてを理解しています。みたいな顔をして次々にドレスを私に充てる。
ニーカとシャッテの2人が首肯いたものだけが残されていく。
諦めて残されたドレスに次々と着替える。
最後に三着のドレスが選ばれサイズ直しに出された。
「吊るしでごめんなさいね」
「とんでもないです。三着も買っていただいてしまって」
恐縮しているとニーカが「お茶にしましょう」と提案してくれた。
そこは高台にあり、王都が一望できた。
「いい眺めですねー」
「そうでしょう」
カフェのテラス席でオススメと言われたマフィンと珈琲をいただいた。
私の前方からこちらに向かって歩いてくる人がいる。
「ニーカ!」
声のする方にニーカが振り向き「シューレ!」
立ち上がりハグをする。
「ヴァレリーの従兄弟のシューレ・マーベラスよ」と紹介してくれる。
「初めまして、お世話になっているアマンダ・コールデンです」
「あぁ、あなたが。ローランを助けた!ありがとうございます」
「そんな私は出来ることをしただけなので・・・」
シューレは私達のテーブルに腰を下ろす。
「こんな所に一人で来たの?」
「近くを通ったら馬車が見えたから寄ったんだよ」
「集ろうと思ってきたのね」
「バレたか」と軽快に笑う。
最後の婚約破棄の一件以来、同世代の男性にはちょっと苦手意識を持っていたけど、爽やかで感じのいい人だなと思った。
「この国はどうですか」
「アデレートより発展していて驚きました。食べている物自体は同じなのに味がよくて、ソースが複雑で美味しいです」
「そうだシューレ明日暇?」
「明日?」
「お芝居を見に行くんだけど一緒に行かない?」
「私が参加してもお邪魔じゃないですか?」
私に問いかける。
「ご一緒できると楽しいと思います」
「じゃぁ、お邪魔させてもらいます」




