お金の危機と天才との出会い
「ふわ~あ」
太陽が昇り、屋敷の中から見える空はすでに澄んでいて、もう昼であることが分かる
う、うーん、明日からはこんな調子で起きてたら遅刻だな
今日は、昨日俺がゴーレムをすべて壊したせいで延期となった戦闘テストが行われる日だが、
既に終えている俺は休みになった、
何をしようとも特に考えてないけど、ずっと家にいるのも暇だしな
部屋にいくつも置いてあるタンスの一つを開ける、その中には服が三着ほどしか入っていなく、
収納スペースはまだまだある、他のタンスには一着も入っていない
流石に少ないかな?それに洗濯とかもほとんどしてないし、・・・
ラプハが屋敷にいてくれたときは、洗濯や掃除などを魔法でよくしてくれていた、
ゲームの魔法に洗濯や掃除の魔法があるはずもなく、ラプハに頼りっきりだったわけだが、
今日からはそういう訳にもいかないよな。
よし、今日は生活用品を買いに行こう!
そう決めてタンスの中の服を一着とりそれを着る、
いつもお金を入れている引き出しを開けた時、俺は衝撃の事実に目を疑った
お金が、・・・ない
今までの収入源といえばラウスにもらった2000Gに八部隊の収入、そしてラプハの収入のみ、
あの大会の優勝者に送られるという莫大な量の金貨もいろいろあってもらっていない。
まずはどうにかしてお金を稼がないとな・・・
そうして俺は外に出た、
*
一応当てがない訳ではない、八部隊のおっさんたちと話している時に聞いた話だが、
冒険者ではなくとも、モンスターの素材を売ることが出来るらしい
という訳で、国から少し離れた森に来ている森に来ている
今回狙っているのは、クリスタルベアというクマのようなモンスターで、額についている宝石が、
魔石や首飾りなどに使われるらしく、その効果もかなりのものらしく高値で買い取りがされているということだ、
つまり俺が今回狙うのはそのクリスタルベアだ
(クリスタルベアは一般には危険度がかなり高く、位の高い冒険者でもほとんど戦わないので、生息数が低いわりにそこまで乱獲されているわけではありませんので、この近くを探せばすぐに見つかるかと)
それじゃあ探しますか、狩りなんてモン0ンみたいでわくわくするな
少し探すとすぐにクリスタルベアだと分かる巨体のクマを見つけた、額には大きな宝石が埋め込まれている、体長5メートルくらいだろうか、その巨体で森の中をのっしのっしと歩くさまは見ていて本当に怖い
ゆっくり近づくと、一瞬鼻をピクと動かして、クリスタルベアは俺の方を振り向いた、そしてすぐに
右手を振り払うようにして攻撃をしてきた、
鼻もなかなかいいみたいだな
それを後ろに飛んで躱す、学校では剣を主に使うって決めたし、練習しておこうと思いブローソードを取り出す、
その後、巨体に似合わずすごい動きをしてくるクリスタルベアをなんとか斬り伏せることに成功した
ふう、エメラルドになって相当身体能力が上がったとはいえ、剣を持って戦うのはかなりしんどいな
剣を持ったままだと、いつもの動きが出来ない。
クリスタルベアに近づき、額の前に座る、
額にあった宝石の色は赤色に輝いていた
(クリスタルベアの額の宝石は種類があって、その種類によって価値も変わってきますよ)
なるほど、今後からはそれを参考にして狩ろう、
その時、
座っている俺の背後から、グオー!と大きな鳴き声が聞こえる、それは腕を振り上げたもう一体のクリスタルベアだった、
飛んで避けようとしたその時、
生い茂る木のなかから一つの影がとびだしてきて、クリスタルベアを凄まじい速度で切り伏せた
飛び出してきた影は人間で、身長は俺よりも少し高く、白い髪を持つ男だ、そしてその顔は驚くほどに整っている、デュランダルと同じ大きさほどの剣を手に持っている
なんだ、俺が合う同年代の男は全員イケメンだとでも決まっているのだろうか
出来ればやめてほしい限りである
「ふう、大丈夫ですかって・・俺と同い年くらいじゃないか」
そういった男は、クリスタルベアの血で汚れた剣を振って落とすと、腰に差したさやに収めて俺に近づいてくる
「そこのクリスタルベア、君が倒したんだろ?すごいなあ、僕以外に同い年ぐらいでそいつを倒したのを見たのは初めてだよ」
うーん、観察するようにまじまじと見てくる、
「あ、俺はルーシュって言うんだ、ここにいるのは多分君と同じ理由、でも、一応騎士団員だから生態調査ってことにしようかな」
「俺はタツヤだ、助けてくれてありがとう、それに騎士団員って、俺と同い年くらいに見えるけど・・・」
俺も騎士団員だけどそれは別だ
「うん、三年前くらいに王様にスカウトされて騎士団に入ったんだけど、今年から学校に通うことになったから、一旦騎士団はやめるんだけどね」
三年前って、日本でいうと中学生になったばかりくらいじゃないか、そんなに前から騎士団に入っていたのか、それもラウスからのスカウトってことは、なるほど天才か
「今年からって、もしかしてその学校って城下町の外れにある?」
「そうだよ」
ということは俺と同級生じゃないか、
「俺も今年からその学校に入学するんだよ、これからよろしくな」
そういうと、ルーシュはバっと俺のてを握って、
「そうだったの!?うわー、嬉しいなあ!正直今更学校なんて行っても退屈するだけかなあって思ってたけど、君みたいに強い人がいるなら興味がわいてきたよ!」
落ち着け落ち着け、といってなんとかルーシュを突き放す
「そうだ!今から僕と戦わない?初撃一発の勝負、タツヤは剣をを使うみたいだし、俺は剣も魔法も同じぐらいには使えるから、いいかな?俺、最初見た時からずっとタツヤと戦ってみたかったんだ、それじゃあ始めるよ?」
「は、はあ?」
なんて勝手な奴なんだ、まあいいか、この天才の実力も見てみたいし俺の剣の練習にもなるしな
俺とルーシュはお互いに剣のさやを手に持つ、もう一歩の手で懐からコインを出すと
「このコインを上にあげて、落ちたら始めるけど、準備はいい?」
「ああ」
ピンとあがったコインは数回回転して地面に落ちる
それと同時にルーシュは凄まじい速度でさやをふるってくる
さやが俺に当たるギリギリでこっちのさやで防ぐことに成功した、
「やっぱりタツヤはすごい!これを受け止めれたのは騎士団の人でもほとんどいなかったのに!」
おいおい、こいつ騎士団でもしょっちゅう戦い挑んでんのかよ、、とんだ戦闘狂か
「それじゃあいくよ!」
*
しばらく打ち合って、結果は俺の負け。
身体能力的には俺の方が高かったが、ルーシュの剣には、俺の適当にふるった剣とは全く違っていた
的確に最も防ぎにくい場所を攻撃してきて、こっちの攻撃はすべて受け流される
これがあの歳で騎士団に入った天才の実力か
「ふう~!タツヤ、絶対またやろうな!」
「ああいいぞ、でも次は負けないからな」
「俺だって負けないよ」
お互いに握手をして、再びクリスタルベアのとこまで行こうとすると
「あと、俺いままで同年だの友達がいなくて、タツヤ、友達になってくれない?」
どうどうと恥ずかしいことを、・・・どっかのツンデレ貴族にも見習ってほしいものだ
「もちろんいいぞ」
「うん、友達って何するかわかんないけどよろしくねタツヤ!」
そして俺はクリスタルベアから宝石をとってルーシュと別れた、今日、戦闘テストがあることを思い出し聞いてみると、騎士団の仕事が今からあるそうで、それを話すと、テストは免除になったそうだ、
それもそのはず、ルーシュは現在、第一防衛部隊に所属しているとのこと道理で強い訳だ
そして今は、街に帰っている途中である
一応見つかると面倒だから走って帰っている、
うーん、それにしても剣で打ち合うとあそこまで違う攻撃に見えてくるんだな、
今まで剣を使う相手には、デュランダルでの防御と魔法での攻撃で戦ってきたが
実際に剣をもって打ち合うと、あそこまで感覚が違うことにかなり驚いた
このままじゃ何回やっても剣じゃルーシュに勝つのは不可能だろう、魔法を使えば簡単だがいまはそんなの関係ない、ゲームでも剣なんてほとんど使わなかったけど、こんなにワクワクするとは思わなかったなあ、
異世界の学校、俺もそこまで期待していなかったが、面白い奴がいっぱいいそうだ、
ルーシュも能力は一つも使ってなかったし、他のみんなは一体どんな力を持っているのだろう
今では本当に楽しみで仕方がない、
しばらく走って街について、素材交換を行っている場所に行く、
宝石を見せた時は驚かれたが、ここでは名前を匿名に出来るので、名前を教える必要は無かった
宝石を売った結果、なんとその金額は3000G、金貨三十枚だ、
あれ、騎士団にで稼いだお金の何倍かな?いやいや、気のせいだろう
受け取ったお金を袋にいれ、街に出た、
何を買おうかなあ、まず洗濯するための洗剤、そして何着か服も買っておきたいし
食料も、・・っていっても俺料理できないわ
そんなことを考えながら街を歩いていると、おおくの店がならぶ通りに着いたので
取りあえず雑貨やいろいろなものが売っている店に足を運んでみた
「いらっしゃいませ」
という店員の元気な声で出迎えらえる、
少し探すと、洗剤と服を見つけることが出来たので、とくに何も考えず購入、
何を隠そう、向こうの世界ではなんと服なんて買ったことは無かったのだ
この歳でそれは珍しいのだろうか?お金がたまったらすべてゲームを買っていた俺としてはそんなお金もったいないというのが当たり前なのだが、
ほとんど母さんに買ってきてもらっていたしなー
そのため俺はゲームで見たことがあるような服を買うしかなかったのだが、まあ別にいいだろう
そうして帰りに酒屋に入ってご飯を食べ、家に戻った
*
俺は自分の目の前に買っておいたもう一つの剣を置いた、理由は今からルーシュに勝つための秘密の特訓をするためだ、俺はこの世界に来て初めてボコボコにされて悔しかったが、それ以上に楽しかった
おっと、別にドMとかじゃないぞ、今のままではどうやっても勝てない相手なんて、
ゲーマーとして血が騒がない訳がないだろう?
そういう訳で、シスに言われた通りもう一方剣にシスの魂を入れる
(それではマスター、これより、記憶したシオンやルーシュの剣技を真似してマスターに攻撃を仕掛けますマスターはそれを剣で防いでください、剣での戦闘は攻撃よりも防御と回避、攻撃は隙をつくだけでいいのです)
「了解しましたあ!」
こうして俺はシスと、夜に秘密の特訓を毎日行うことを決めた
特訓が終わって疲れ切った体でベッドに転がる、
さーて、明日からが本当に楽しみだ、学校では一体どんなことが起こるのだろう
俺は子供が遠足前にワクワクして眠れなくなるような、そんな感覚を持って、ベッドに伏した。