↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイコパスプリンス  作者: 山空
8/13

第8話「秘密」

 教室で荷物をまとめたあと、僕は校門へ向かった。


「白瀬くん、こっち!」


 校門の近くで朝倉さんが手を振っていた。


 その隣には、見覚えのある女子生徒が立っている。


「ちーす! 白瀬くんだよね?」


「うん、そうだけど」


「花から話聞いてるよ!」


「え、そうなの?」


「ちょっと、玲奈!」


 朝倉さんが慌てたように口を挟んだ。


「えー、別に変なこと言ってないじゃん!」


「そうだけど!」


 二人のやり取りを見て、思わず笑ってしまった。


「じゃ、そろそろ行こっか!」


 朝倉さんの声に、僕たちは歩き始めた。


「はー、お腹すいた。今日めっちゃ動いたー!」


 橘さんが大きく伸びをした。


「玲奈、ずっと応援してたもんね!」


「そうそう! 声出しすぎて喉痛いし」


「途中から声ガラガラだったよね!」


「それ言わないでよ! 自分でもびっくりしたんだから!」


 朝倉さんが「あはは!」と笑った。


「白瀬くんは? 疲れてない?」


「疲れたよ。借り人競走だけなのに」


「それだけって、結構走ってたじゃん!」


「そうかな。朝倉さんの方がずっと走ってたと思うけど」


「花はリレーもあったしねー」


「そうそう! 明日筋肉痛かも!」


 そんな話をしているうちに、駅前のファミレスが見えてきた。


「あ、ここだよ!」


 朝倉さんが店を指さした。


 店内に入ると、店員に案内され、僕たちは四人掛けの席に座った。


「何食べよっかなー!」


 橘さんがさっそくメニューを開いた。


「玲奈、もう決めてなかった?」


「ハンバーグにするつもりだったけど、写真見たら迷ってきた!」


「あはは! 分かる!」


 僕もメニューを開いた。


「あ、これもおいしそう!」


 朝倉さんがメニューの写真を指さした。


「それ、さっき私が迷ってたやつ!」


「え、そうなの?」


「うん。でもやっぱハンバーグかなー」


「結局ハンバーグなんだ」


 僕が言うと、橘さんは顔を上げた。


「だって、こういうときってハンバーグ食べたくならない?」


「いや、分からないけど」


「えー! 白瀬くんは何にするの?」


「僕もハンバーグにしようかな」


「ほら!」


「……何が?」


「あはは! 玲奈、意味分かんない!」


 朝倉さんが笑う。


 僕も思わず笑ってしまった。


 結局、橘さんと僕はハンバーグ、朝倉さんはパスタを注文した。


「ねえ、花。今日のリレーの写真、見た?」


「え、もう送られてきたの?」


「うん! さっきクラスのグループに!」


 橘さんがスマホを取り出した。


「ほら、これ!」


「あはは! 玲奈、すごい顔してる!」


「ちょっと! そこ見ないでよ!」


 朝倉さんが笑いながら画面を覗き込む。


「白瀬くんも見る?」


「うん」


 差し出されたスマホには、バトンを握って必死に走る橘さんが写っていた。


「……すごい真剣だね」


「それ、褒めてる?」


「もちろん」


「なんか怪しいんだけど!」


 橘さんがスマホを引っ込めると、朝倉さんがまた笑った。


 しばらくして、注文した料理が運ばれてきた。


「いただきまーす!」


 橘さんがさっそくハンバーグにナイフを入れる。


「おいしそう! 私もハンバーグにすればよかったかな」


 朝倉さんが僕たちの皿を見ながら言った。


「花、さっきまでパスタ食べたいって言ってたじゃん!」


「そうなんだけど、見てたら食べたくなっちゃった!」


「一口食べる?」


「いいの?」


「いいよー!」


 橘さんが自分の皿を朝倉さんの方へ寄せた。


 二人のやり取りを眺めながら、僕もハンバーグを一口食べた。


 その後も話は途切れず、気づけば僕も二人と一緒になって笑っていた。


 誰かとこんなふうに食事をするのは、久しぶりだった。


 食事を終えてからも、しばらく話し込んでいた。


 窓の外は、いつの間にか暗くなっていた。


「そろそろ帰ろっか!」


 朝倉さんの言葉に、僕たちは席を立った。


 会計を済ませ、店の外に出た。


「あ、私こっちだから、ここで!」


 橘さんが駅とは反対の方向を指さした。


「そっか! じゃあまたね、玲奈!」


「うん! 白瀬くんもまたねー!」


「うん、またね」


 橘さんは軽く手を振ると、歩いていった。


「じゃあ、私たちも行こっか!」


「うん」


 僕たちは並んで駅へ向かった。


 さっきまで三人で話していたせいか、二人になると少し静かに感じた。


「白瀬くん、今日は来てくれてありがとう!」


 朝倉さんが隣から僕を見上げた。


「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」


「ほんと? よかった!」


「橘さんって、面白い人だね」


「あはは! そうでしょ? 玲奈といると、いつもあんな感じなんだ」


「二人とも仲いいよね」


「うん! 高校に入ってから仲良くなったんだけど、すごく気が合うんだ!」


「そっか」


 朝倉さんは嬉しそうに笑った。


 しばらく歩いていると、朝倉さんがふと口を開いた。


「ねえ、白瀬くん」


「ん?」


「今日、楽しかったね!」


「うん。楽しかった」


 朝倉さんは嬉しそうに笑った。


 それから少しだけ、足元に視線を落とした。


「……これからも仲良くしてね!」


 僕は朝倉さんの方を見た。


「もちろん」


「えへへ、よかった!」


 そう言って笑う朝倉さんを見て、僕も自然と笑みがこぼれた。


 少し歩いたところで、僕は前から気になっていたことを思い出した。


「ねえ、朝倉さん」


「ん? どうしたの?」


「前から聞いてみたかったんだけど、どうして僕に話しかけてくれたの?」


 朝倉さんは少し驚いたように僕を見た。


「うーん……」


 何かを思い出したのか、ふっと表情が和らぐ。


「秘密!」


「……秘密?」


「うん! いつか教えてあげる!」


「そっか。じゃあ、楽しみにしてるよ」


「あはは! うん!」


 そんな話をしているうちに、駅が見えてきた。


「あ、もう着いちゃったね!」


「そうだね」


 僕たちは改札を通り、ホームへ向かった。


 ちょうど電車が来たところだった。


「よかった、待たずに乗れそう!」


 朝倉さんに続いて、僕も電車に乗り込んだ。


 車内では、さっきの話の続きをすることもなく、他愛のない話をして過ごした。


 やがて、僕の降りる駅に着いた。


「じゃあ、またね!」


「うん、またね」


 電車を降りて振り返ると、朝倉さんが窓越しに手を振っていた。


 僕も手を振り返した。


 扉が閉まり、電車がゆっくりと走り出した。


 電車が見えなくなるまで見送ってから、僕は階段へ向かった。


 僕も、普通の高校生活を送れる気がした。

活動報告に質問コーナーを作ってみました!


作品のことでも作者への質問でも、何でも大歓迎です!


気になることがあれば、ぜひ気軽に質問してください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。