↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイコパスプリンス  作者: 山空
30/32

第30話「答えのない問」

修学旅行三日目。


昨日の白瀬くんの苦しそうな姿が、まだ頭から離れなかった。


私は、白瀬くんのために何ができるんだろう。


……考えても、答えは出なかった。


今日は、二日目のスキー講習だった。


昨日と同じ場所に集合すると、橋本さんが私たちを迎えてくれた。


「おはようございます! 今日は昨日の復習をしてから、リフトに乗って少し長いコースを滑ってみましょう」


「えー、もうリフト乗るんですか?」


佐伯くんが驚いたように聞いた。


「昨日、皆さんしっかり練習できていましたからね。もちろん、無理のないコースを選びますよ」


「よかったー。俺、まだちょっと怖いんですよね」


「佐伯くん、昨日あんなに転んでたもんね」


玲奈が笑った。


「いや、今日は転ばないから!」


そんなやり取りをしながら、私たちは練習を始めた。


昨日は何度も転んでいたみんなも、今日は少しずつ安定して滑れるようになっていた。


白瀬くんも、最初は慎重に滑っていたけれど、何度か練習するうちに曲がる動作が滑らかになっていた。


「白瀬くん、上手になったね!」


「ありがとう。昨日よりは少し慣れてきたかも」


「うん! すごくいい感じだよ!」


白瀬くんは嬉しそうに笑った。


その後も練習を続け、いよいよリフトに乗ることになった。


二人乗りのリフトに順番に並んでいると、白瀬くんが私に声をかけてきた。


「朝倉さん、一緒に乗らない?」


「……うん!」


突然誘われて少し驚いたけれど、嬉しかった。


私たちは並んでリフトに乗り込んだ。


ゆっくりと地面が遠ざかっていく。


眼下には真っ白な雪が広がっていた。


「綺麗だね、白瀬くん」


「うん。こうして見ると、結構高いね」


「怖い?」


「少しだけ。でも、景色が綺麗だから楽しいよ」


「そっか」


しばらく二人で景色を眺めていた。


……今なら、聞けるかな。


私は隣に座る白瀬くんを見た。


「ねえ、白瀬くん」


「ん?」


「白瀬くんって、恋したことある?」


「……え?」


白瀬くんは少し驚いたように私を見た。


「……うん」


「……そっか」


……まあ、白瀬くんだって恋くらいしたことあるよね。


分かっていたつもりだけど、なんだか嫌だな。


でも、聞かないと。


「その人と、付き合いたかった?」


「……うん」


「……好きになることで、苦しくなるとしても?」


白瀬くんは少し考えてから答えた。


「……それでも好きだから」


胸がきゅっと締めつけられた。


……そんなに好きだったんだ。


どんな人なんだろう。


「自分だけが傷つけばいいって、思ってた?」


「……ううん」


白瀬くんは首を横に振った。


「相手を傷つけるかもしれないことも、怖いよ」


「……うん」


「でも、怖いからって最初から諦めたくないんだ」


……そっか。


白瀬くんは、そんなふうに考えていたんだ。


好きな人と付き合いたい。


その気持ちは、私と同じなんだね。


……じゃあ。


「……今は?」


「え?」


「今は、恋してる?」


『まもなく降り場です。降りる準備をしてください』


アナウンスが流れた。


顔を上げると、もう降り場が目の前まで来ていた。


「……ごめんね。行こっか」


「……うん」


私たちはリフトを降りて、先に待っていたみんなと合流した。


その後は橋本さんの指導を受けながら、何度かコースを滑った。


白瀬くんもだいぶ慣れてきたようで、最後にはほとんど転ばずに滑りきれるようになっていた。


「皆さん、二日間お疲れさまでした! 短い時間でしたが、ずいぶん上達しましたね」


講習の終わりに、橋本さんが笑顔で言った。


「ありがとうございました!」


私たちは揃ってお礼を伝え、ホテルへ戻った。


*


夕食を終えて部屋に戻ると、玲奈と紗奈がベッドに座って話していた。


私も近くに腰を下ろした。


「そういえばさ、二人ともどう?」


玲奈が私たちを見た。


「何が?」


紗奈が聞き返す。


「恋愛の方。紗奈は律くんとどうなの?」


「あー、律? いつも通り。ほんとガード硬いんだから」


「でも、嫌がられてはないでしょ?」


「嫌がってるじゃん」


「うっそー。私たちにはそうは見えないけどね。ね、花?」


「えっ? う、うん」


「え、周りから見たらそうなんだ」


紗奈は少し驚いたように言った。


「てか、花は? さっきからぼーっとしてるけど」


「……え?」


「だから、白瀬くんとはどうなの?」


玲奈も私の方を向いた。


私は少し迷ってから、口を開いた。


「……私、白瀬くんと付き合って、幸せにできるのかな?」


「なんで?」


玲奈が不思議そうに聞いた。


「白瀬くんが辛いとき、多分、私はそばにいることしかできないから」


「そばにいるだけでいいじゃない」


紗奈が答えた。


「でも……そばにいることが原因なのに、そばにいることしかできないから」


「……どういうこと? そばにいるのが原因って」


「……ごめん。うまく説明できないんだけど」


「……まあ、何か事情があるんだろうけどさ」


紗奈は少し考えてから続けた。


「花って、付き合うことを重く捉えすぎじゃない? 責任感じすぎだよ」


「……そうかな」


「無責任になれとは言わないけど、もっと楽になりなさいよ」


「……そんなことしていいの?」


「当たり前でしょ」


紗奈は迷わず答えた。


「でも、白瀬くんはどう思うのかな……」


「そんなの誰にも分からないでしょ。私だって律がどう思ってるか分からないし」


紗奈は腕を組んだ。


「律が私のことをどう思ってたって、まだ諦めるつもりはないよ」


「花も、たまには自己中になりなよ」


玲奈が笑いながら言った。


「誰が自己中よ!」


紗奈がすぐに言い返した。


「え、紗奈のこととは言ってないけど?」


「絶対思ってたでしょ!」


二人のやり取りに、思わず笑ってしまった。


「で、花。どうするの?」


玲奈が改めて聞いた。


……私がどうしたいか。


白瀬くんが苦しんでいるとき、私は何もできないかもしれない。


そばにいることで、余計に苦しめてしまうことだってある。


それでも、今日の白瀬くんは言っていた。


怖いからって、最初から諦めたくないって。


……私も。


「……白瀬くんと、付き合いたい」


「うん。それでいいじゃん!」


玲奈が笑った。


「てか、もう白瀬くんを幸せにできるかなとか考えてるの?」


「え?」


「思った。まずは好きになってもらわなきゃでしょ」


紗奈も頷いた。


「……うん。そうだよね」


「……あれ? もしかして、ちょっとは手応えあったんだ?」


玲奈が私の顔を覗き込んだ。


「う、うん……」


「えっ、そうなの?」


紗奈も興味津々といった様子で身を乗り出した。


「私のこと、友達とは少し違うと思う。少なくとも、女の子として接してくれてるとは思うんだけど……」


「へえー!」


「でも、好きかどうかは分からないよ?」


「じゃあ、もう一押しって感じなんだ」


「そうだといいな」

読んでいただき、ありがとうございます。


今回は花の視点から、恋をすることへの不安や葛藤を描きました。


互いに想いを抱きながらも、まだ相手の気持ちを知らない二人。


リフトの上で聞けなかった問いの答えを、花が知る日は来るのでしょうか。


少しずつ動き始めた二人の恋。これからの展開も楽しみにしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。