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サイコパスプリンス  作者: 山空
3/13

第3話「無意識」

できれば、この係だけは避けたかった。


「救護係、誰かやってくれる人いない?」


 委員長が会議室を見渡した。


「あ、俺やります」


 男子生徒の一人が手を挙げた。


「ありがとう! あと一人、誰かいない?」


「じゃあ、俺もやります」


 別の男子生徒も手を挙げた。


「ありがとう! じゃあ、救護係はこの二人で決まりね」


 僕はほっと息を吐き、安心した。


「白瀬くん、救護係嫌だったの?」


「……まあ、ちょっとね」


「そっか。じゃあ、決まってよかったね!」


 残っている係の中では、用具係が一番無難そうだった。


「じゃあ次、用具係をやってくれる人!」


 僕はゆっくりと手を挙げた。


「じゃあ、白瀬くんと朝倉さん、用具係よろしくね!」


「……え?」


 驚いて隣を見ると、朝倉も手を挙げていた。


「白瀬くん、よろしくね!」


 朝倉は笑顔でこちらを向いた。


「……うん、よろしく」


 その後も担当決めは続き、会議が終わる頃には外も薄暗くなっていた。


「白瀬くん、じゃあまた明日ね!」


「うん、また明日」


 朝倉と別れて家に帰り、夕食と風呂を済ませた僕は、自分の部屋に戻った。


 ベッドに横になると、今日の朝倉とのやり取りを思い出した。


 実行委員になってから、彼女と話す機会が増えている。


 これからも同じ係として、一緒に過ごす時間が増えるのだろう。


 朝倉は話しやすいし、悪い人ではない。


 でも、もしこのまま仲良くなってしまったら。


 僕はそれ以上考えるのをやめ、寝返りを打って壁の方を向いた。


 そうして目を閉じると、いつの間にか眠っていた。


 翌朝、目が覚めて時計を見ると、まだ六時前だった。


 もう一度眠ろうとしたが、なかなか寝つけない。


 仕方なくベッドから起き上がり、いつもより早く学校へ行くことにした。


 制服に着替えて階段を下りると、母が朝食の準備をしていた。


「おはよう。今日は早いね」


「昨日、早く寝ちゃったから」


「そうなの? じゃあ、今日はちゃんと朝ごはん食べていきなさいね」


「うん、今日は時間あるしね」


 母と朝食を済ませ、いつもより早く家を出た。


 電車は普段より空いていて、学校に着いた頃には、まだ教室にほとんど人がいなかった。


 教室に入ると、朝倉が自分の席で本を読んでいた。


 声をかけるべきか、少し迷った。


「……おはよう」


「あ、白瀬くん。おはよう!」


 軽く挨拶を交わし、僕は窓際にある自分の席に座った。


 鞄を置き、窓の外を眺める。


 校庭では、運動部の生徒たちが朝練をしていた。


 サッカー部らしい男子生徒がボールを蹴り、それを追いかけて別の生徒が走っていく。


 少し離れたところでは、陸上部の生徒たちがトラックを走っていた。


 僕は頬杖をつき、ぼんやりとその様子を眺めていた。


 走っていた生徒の一人が、足をもつれさせた。


 僕は思わず、その生徒を目で追った。


 けれど、生徒はすぐに体勢を立て直し、何事もなかったように走り続けた。


「白瀬くん」


「……ん?」


 声のする方を向くと、いつの間にか朝倉が僕の前の席に座っていた。


「今日は遅刻しなかったね!」


「……うん」


「いつもこの時間に来てるの?」


「んー、まあね!」


 朝倉は笑って答えた。


「朝って静かだから、結構好きなんだよね」


「そうなんだ」


「うん! じゃあ、今日も一日頑張ろうね!」


 朝倉は笑顔でそう言うと、自分の席へ戻っていった。


 それからしばらくして、いつもどおり一時間目の授業が始まった。


 授業中、隣の席から小さな声が聞こえた。


「痛っ」

 隣を見ると、男子生徒がプリントを持ったまま、人差し指を押さえていた。

 

どうやら紙で指を切ったらしい。

 

その指先に、小さな血の粒が浮かんでいた。


 僕は思わず、その指先に見入ってしまった。

 

綺麗だ。

 

もう少し見ていたかったが、男子生徒はすぐにティッシュで血を拭き取った。

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