第27話「旅の始まり」
修学旅行当日。
空港に着くと、すでに佐伯くんたちの姿があった。
「おっ、透! おはよう!」
僕に気づいた悠真が、大きく手を振った。
「おはよう」
「白瀬くん、おはよう!」
朝倉さんも笑顔で声をかけてくれた。
「……おはよう」
そこには成瀬くんと玲央、それに橘さんと藤宮さんもいた。
「全員揃ったね!」
藤宮さんがそう言ったところで、集合時間を知らせる先生の声が聞こえてきた。
僕たちは他の生徒たちと合流し、搭乗手続きを済ませた。
飛行機に乗るのは久しぶりだった。
窓の外を眺めているうちに、機体がゆっくりと動き始める。
やがて大きな音とともに加速し、地面が遠ざかっていった。
こうして、四泊五日の修学旅行が始まった。
⸻
新千歳空港に到着し、外に出ると冷たい空気が頬に触れた。
「さっむ!」
悠真が思わず声を上げる。
「北海道に来たって感じするな!」
玲央は楽しそうに笑っていた。
僕たちはバスに乗り込み、宿泊先のホテルへ向かった。
隣の席には悠真が座っていた。
「見ろよ、透! 雪めっちゃ積もってる!」
窓の外には、白く染まった景色が広がっていた。
「本当だね」
「明日楽しみだな!」
「うん」
しばらくすると、バスはホテルに到着した。
昼食を済ませたあと、スキー実習についての説明が始まった。
明日からは班ごとに分かれ、インストラクターの指導を受けるらしい。
説明が終わると、今度はスキー用具の確認とサイズ合わせを行った。
慣れないブーツを履いてみると、思っていた以上に足が動かしにくかった。
「これで滑るのか……」
思わず呟くと、隣にいた悠真が笑った。
「大丈夫だって! 俺も初めてだし!」
「それ、安心できる理由になってないよ」
成瀬くんがそう返すと、悠真は「確かに!」と笑った。
その後は各自の部屋に荷物を運び、夕食の時間まで過ごした。
夕食を終え、入浴を済ませる頃には、外はすっかり暗くなっていた。
⸻
僕たちの部屋は四人部屋だった。
同室なのは、悠真、成瀬くん、玲央、そして僕。
布団に寝転がっていると、悠真が突然起き上がった。
「なあ、せっかくだし恋バナしようぜ!」
「急だな」
玲央が笑う。
「修学旅行の夜といえば恋バナだろ!」
「まあ、いいんじゃない?」
成瀬くんが答えると、悠真は嬉しそうに身を乗り出した。
「じゃあ、誰からいく?」
「律は紗奈だろ」
玲央が即答した。
「そんなわけないよ。子供すぎて無理だよ」
「でも紗奈にだけ口調違うよな」
悠真が指摘する。
「紗奈が生意気だからね」
「特別ってことか」
玲央が笑うと、成瀬くんは小さくため息をついた。
「何を言っても無駄みたいだね」
「じゃあ玲央は?」
悠真が話題を変えた。
「俺? 今はいないな。バスケで忙しいし」
「えー、もったいねえ!」
「何がだよ」
「玲央ならモテるだろ!」
「まあな」
玲央が当然のように答えると、悠真は声を上げて笑った。
「自分で言うなよ!」
「お前はどうなんだよ」
「俺?」
悠真は少し考え込んだ。
「うーん。好きな子って言われても、よく分かんねえんだよな」
「どういうこと?」
僕が尋ねる。
「いや、俺って誰とでも仲よくなりたいしさ。友達として好きなのと、恋愛として好きなのって、何が違うんだろうなって」
「なるほどね」
成瀬くんが頷いた。
「じゃあ、透は?」
突然話を振られ、僕は言葉に詰まった。
「……僕?」
「そうそう。好きな人いないの?」
三人の視線が僕に集まる。
少し迷ったあと、僕は口を開いた。
「……いるよ」
「朝倉さん?」
悠真がすぐに尋ねた。
「……うん」
「当たり!」
「……なんで分かったの?」
「んー、なんとなく! 二人、仲いいしさ!」
「それで、透は朝倉とどうなりたいんだ?」
玲央が尋ねた。
「……どうって?」
「付き合いたいのか、それとも友達のままでいいのかってこと」
僕はすぐに答えられなかった。
「……朝倉さんとは、体育祭の実行委員でたまたま一緒になって、それから話すようになったんだ。朝倉さんは誰にでも優しいし、僕だけが特別ってわけじゃないと思う」
「いや、朝倉がどう思ってるかじゃなくてさ」
玲央が僕の言葉を遮った。
「透がどうしたいかって聞いてるんだよ」
「……」
「今は毎日学校で会えるけど、卒業したらそうはいかないだろ?」
「好きなら付き合いたいって思うもんじゃねえの?」
玲央が続ける。
「それは違うよ」
成瀬くんが静かに口を開いた。
「好きな人には幸せになってもらいたいでしょ?」
「だから、俺が幸せにすればいいんだろ?」
「相手が君を好きとは限らないじゃないか」
「だから、俺のことを好きにさせてから付き合うんだよ。そうすれば、その子も幸せだろ?」
「……すごい自信だね」
「筋は通ってる……」
悠真が真剣な顔で呟いた。
「いや、納得するところじゃないよ」
成瀬くんが呆れたように笑う。
そんなやり取りを聞きながら、僕は玲央の言葉を考えていた。
卒業したら、朝倉さんと毎日会えなくなる。
そんなこと、今まで考えたこともなかった。
だからこそ、分からないという言葉で終わらせずに、ちゃんと自分の中で答えを出さないといけない。
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一方、女子の部屋でも、三人は布団を並べて話していた。
「ねえ、せっかくだし恋バナしない?」
紗奈が楽しそうに言った。
「いいね!」
花が笑顔で答える。
「そういう花はどうなの? 白瀬くんとは」
玲奈が尋ねた。
「えっ、私?」
「そうそう。最近どう?」
花は少し考えてから答えた。
「私、結構頑張ってるつもりなんだけどなあ」
「へえ、花が?」
玲奈が意外そうな顔をした。
「もう、何がなんでも振り向かせようって思ってる!」
「おお、言うねえ!」
紗奈が嬉しそうに笑った。
「なんか、二人とも恋愛頑張ってるよね」
玲奈が笑いながら言った。
「紗奈は成瀬くんにバレバレじゃん!」
「まあね。あいつ、ほんっと振り向いてくれないんだよね」
「いつも冷たいもんね」
玲奈が頷く。
「そうなの! もうちょっと優しくしてくれてもよくない?」
「でも、紗奈も楽しそうだよね!」
「……まあ、話してて楽しいのは楽しいけど」
紗奈が少し照れたように答えると、花と玲奈は顔を見合わせて笑った。
「ちょっと、何笑ってんの!」
「別にー?」
玲奈がとぼける。
「もう!」
紗奈も笑いながら、二人を見た。
「でも、これではっきりしたね!」
玲奈が笑顔で言った。
「何が?」
花が首をかしげる。
「修学旅行中は、私が二人の恋を応援するってこと!」
「……いいの?」
紗奈が尋ねた。
「もちろん!」
「ありがとう、玲奈!」
花が嬉しそうに言った。
「よし! 私は修学旅行中に絶対、律と付き合ってやる!」
紗奈が宣言する。
「じゃあ私は、白瀬くんに好きになってもらう!」
花も負けじと言った。
三人は顔を見合わせ、声を上げて笑い合った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
いよいよ修学旅行編が始まりました!
今回は少し雰囲気を変えて、それぞれの恋愛模様を描いてみました。
次回からはスキー実習が始まります。
引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!




