第13話「恋の予感」
夏休みのある日、玲奈が私の家に遊びに来ていた。
「ねえ花! 水族館どうだった?」
「どうだったって?」
「楽しかったの?」
「……うん」
「……玲奈って、好きな人できたことある?」
「あるけど……え、もしかして白瀬くん?」
「……分かんない。でもね、水族館で白瀬くんを見たとき、いつもと髪型が違ってて、なんかかっこいいって思っちゃったの」
「へえ〜!」
「それでね、私の写真を撮ってくれたときは、なんだか可愛いなって思っちゃって……」
「ふふっ、他には?」
「魚を見てても、気づいたら白瀬くんの顔ばっかり気になっちゃって……」
玲奈は楽しそうに私の話を聞いていた。
「あと、人混みで手を引いてくれたときは、すごく男らしく見えて……胸がうるさくなっちゃったの」
こんな気持ちになるのは初めてだった。
だから、どうしたらいいのか分からなかった。
「……ねえ玲奈、好きになるって、こういうことなのかな?」
「ふふっ、花がそんなこと言うなんてね」
「……玲奈?」
「それは花が自分で確かめないとね!」
「……確かめるって?」
「もう一回デートするの! 次はもっと恋人っぽいところで!」
「もう一回……」
「そうそう!」
「……でも、どこがいいかな」
「そりゃまあ、遊園地っしょ!」
「遊園地かぁ……」
白瀬くんと遊園地に行くところを想像すると、なんだか緊張してきた。
「でも……また誘っても大丈夫かな?」
「水族館、楽しかったんでしょ? だったら大丈夫だって! それに、花、可愛いから!」
「もう、玲奈ったら……」
玲奈に背中を押され、私はスマホを手に取った。
『白瀬くん、来週空いてる?』
少しして、返信が届いた。
『空いてるよ』
私は少し迷ってから、次のメッセージを送った。
『よかったら、一緒に遊園地行かない?』
送信してから、何度も画面を確認する。
さっきまではすぐに返ってきたのに、今度はなかなか返信が来ない。
……どうしよう。迷惑だったかな。
「花、そんなに見つめても返信は早くならないよ?」
玲奈が笑いながら言った。
「だ、だって……」
そのとき、スマホが震えた。
慌てて画面を開く。
『うん、いいよ』
「……よかった」
思わず声が漏れた。
「よかったじゃん、花!」
玲奈は私よりも嬉しそうに笑った。
「じゃあ、次は服決めないとね!」
「えっ、服?」
「せっかくのデートなんだから、可愛くしていかなきゃ!」
「そ、そうかな……」
「そうだよ! ほら、クローゼット見せて!」
私はクローゼットを開け、何着か服を取り出した。
「これとかどうかな?」
「うーん、可愛いけど……もうちょっと特別感ほしくない?」
玲奈は並べた服を一着ずつ眺め始めた。
「じゃあ、次はこれ着てみて!」
玲奈に言われるがまま、私は何度も服を着替えた。
「うんうん、可愛い! あっ、こっちも着てみて!」
「……玲奈、絶対遊んでるでしょ」
「えへへ、バレた?」
「もう、ちゃんと選んでよ!」
「分かってるって! じゃあ、これにしよ!」
玲奈が選んだ服に着替えて、鏡の前に立った。
「……どうかな?」
「うん! 可愛い! 白瀬くんもきっと喜ぶよ!」
そして、遊園地に行く日の朝がやってきた。
鏡の前で服を確認していると、インターホンが鳴った。
「花ー! おはよう!」
玄関を開けると、玲奈が笑顔で立っていた。
「玲奈? どうしたの?」
「これ、花に似合うと思って買ってきたの!」
玲奈が差し出したのは、小さな香水の瓶だった。
「わあ、ありがとう! いい匂い!」
「でしょ? 花にぴったりだと思って!」
玲奈は嬉しそうに笑った。
「ねえ花、髪型はもう決めた?」
「うーん、まだ迷ってて……」
「じゃあ、私に任せて!」
玲奈は楽しそうに私の手を引いて、部屋へ向かった。
「こんな朝早くからありがとうね、玲奈」
「いいのいいの! 私がやりたくて来たんだから!」
玲奈は鼻歌を歌いながら、私の髪を整えていく。
「……よし、できた!」
「ほんと? 見せて!」
鏡を覗くと、いつもとは少し違う自分が映っていた。
「わあ……可愛い!」
「でしょ? 白瀬くん、びっくりするんじゃない?」
「も、もう! 玲奈ってば!」
「じゃあ、そろそろ行かなきゃ!」
「うん! 楽しんできてね!」
私たちは一緒に家を出て、玄関先で別れた。
待ち合わせ場所が近づくにつれて、少しずつ緊張してきた。
……白瀬くん、今日の私を見てどう思うかな。
待ち合わせ場所に着くと、少し離れたところに白瀬くんの姿が見えた。
私は一度深呼吸してから、声をかけた。
「白瀬くん!」
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