第11話「それぞれの思い」
テストが終わった日の放課後。
私は玲奈と二人で、教室に残っていた。
「ねえ、玲奈。ちょっと相談してもいい?」
「ん? どうしたの?」
「白瀬くんのことなんだけど……」
「白瀬くん? 何かあった?」
「ううん。ただ、白瀬くんって何か悩んでるんじゃないかなって思って」
「なんでそう思うの?」
「話してるとき、たまにすごく考え込んだ顔をするの。何度か見たから、気のせいじゃないと思うんだよね」
「そっか……」
「それでね、実は前に白瀬くんに助けられたことがあって……」
私は、家のことで悩んでいたときに白瀬くんの作文を読んだことや、それをきっかけに両親と話せたことを玲奈に伝えた。
「へえ、そんなことがあったんだ」
「うん。だから、今度は私が力になれたらなって。でも、何をしたらいいのか分からなくて」
玲奈は少し考えてから、口を開いた。
「うーん。でもさ、白瀬くんが何に悩んでるかは分からないんでしょ?」
「うん……」
「だったら、今は無理に聞かなくてもいいんじゃない?」
「そっか……」
「それよりさ、もっと仲良くなってみたら?」
「もっと?」
「うん。もうすぐ夏休みだし、二人で遊びに行くとか!」
「えっ、二人で!?」
「うん。いいじゃん!」
「いや、でも……」
私は少し考え込んだ。
今までも白瀬くんとは一緒に帰ったり、放課後に勉強したりしてきた。
でも、夏休みにわざわざ約束して二人で会うとなると、少し話が違う気がする。
「……でも、男の子と二人で遊ぶって、デートみたいじゃない?」
「まあ、そうかもね」
「えー、なんか変な感じ!」
「花がそんなこと気にするなんて珍しいね」
「だって、今までは何かしら理由があったじゃん?」
「まあ、難しく考えなくていいんじゃない? 普通に遊べばいいんだよ」
「……それもそうだね!」
「でしょ?」
「じゃあ、誘ってみようかな!」
翌日の昼休み。
私は自分の席でお弁当を片づけると、白瀬くんのところへ向かった。
「白瀬くん!」
「朝倉さん、どうしたの?」
「ねえ、もうすぐ夏休みじゃん?」
「うん、そうだね」
「夏休みって、何か予定ある?」
「今のところ、特にはないかな」
「ほんと? じゃあさ、よかったら一緒に遊ばない?」
白瀬くんは少し驚いた顔をした。
「僕と?」
「うん!」
「……うん、いいよ。どこに行く?」
「それはまだ決めてない!」
「決めてないんだ」
白瀬くんは小さく笑った。
「これから一緒に考えようよ!」
「分かった。楽しみにしてる」
「ほんと? やった!」
思っていたよりあっさり約束が決まった。
どこへ行こうかな。
私はさっそく、遊びに行く場所を考え始めた。
⸻
帰宅後、僕は朝倉さんとのトーク画面を開いた。
夏休みに、朝倉さんと二人で遊ぶことになった。
誘われたときは驚いたけれど、正直、嬉しかった。
高校に入ってから、休日に誰かと遊ぶ約束をするのは初めてだ。
まだ日程も行き先も決まっていない。
どこに行くのがいいんだろう。
そんなことを考えていると、朝倉さんからメッセージが届いた。
『白瀬くん! 夏休み、どこ行きたい?』
『うーん、朝倉さんは何か候補ある?』
『映画か、水族館か、遊園地とか!』
どれも楽しそうだ。
少し考えてから、返信した。
『水族館とかどうかな?』
『いいね! 私も行きたい!』
『じゃあ、水族館にしようか』
『決まり! 楽しみだね!』
『うん、楽しみ』
僕はスマホを机に置いた。
朝倉さんと二人で水族館。
改めて考えると、なんだかデートみたいだ。
……いや、考えすぎか。
ふと、以前朝倉さんに聞いたことを思い出した。
どうして、最初に僕に話しかけてくれたのか。
あのとき、朝倉さんは「秘密!」と笑っていた。
結局、あれはどういう意味だったんだろう。
少し気になったけれど、考えたところで答えは出ない。




