表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
30/41

第30話 呪いのエルフ、コメントと戯れる

 地下へと続く階段はそれほど長くなく、一歩一歩時間を掛けて慎重に進んでいる内に地下へと辿り着けた。


「……これで明るくなったかな。みんな見える?」


 手のひらの上に白い光の玉を創り出すと、周囲が一気に明るくなる。広がっていた闇が拭われて、代わりに無機質な瓦礫の山が浮かぶ。そこにかつてあっただろう活気は当然なく、ボロボロの外壁と今にも崩れそうな天井が不安にさせる。


《見えるよ~》

《明るさ調整助かる》

《そこ左に行けばサンシャインの真下につけるはず》

《道ある?》


「あ、こっちだね。奥まで続いてるみたい」


 コメントたちの言われる通りに周囲を見渡すと、暗闇が続く道がある。とりあえず、言われるがままに私は先の見えない通路を進むことにした。


「ねえ、サンシャインってどういうところなの?」


 ふと、気になったことを尋ねる。皆が知っているということは余程有名な場所なんだろう。特に床も崩れそうじゃないし、コメントたちと喋っても不意に落下することはないはずだ。たぶん。


《商業施設?》

《ファッション雑貨とか衣類とか、そういうの売ってる》

《超高層ビルとホテルとかテーマパークとかイベント会場とか、色々ある》

《それ全部を総称して、サンシャインシティ、って呼んでるっぽい》


「そうなんだ……、ほとんとよくわからないけど」


 イベントとかやってるみたいだし、人が多く集まるような場所らしいことはなんとなくわかった。きっと昔はたくさんの人たちで賑わっていたんだろうなと、ぼんやりと考える。


《まあ、でももうほとんど残ってなさそうだったけどな》


「え? どういうこと? 遠くから見たら、ちゃんと建物は残ってたよ?」


 コメントたちの言葉に首を傾げる。遠目にしか見ていないけど、ちゃんと塔として高く天を衝いていたように見えた。


《多分残ってるのは水族館とかあったビルだけだ》

《他は全部崩壊してるっぽいな》

《そのビルの上から、樹が生えてたね》


「じゃあ本当はもっと大きい建物だったんだ……」


 こっちの世界の技術に感心していると、やがて幾つかの分岐にぶつかった。どちらを見ても同じ闇が続いていて、正直迷う自信しかない。


「これ、どっちだろう……」


《まっすぐ行って右やね》

《どっかに上に行くための階段があるはず》

《さすがに階段はもう崩れてそう》


「さすが詳しいね……、みんながいなかったら絶対に辿り着けてないよ」


《そこ左》


「あ、うん」


 この辺りはちゃんと床もボロボロになっていて、気を抜くと落下する危険性がある。慎重に足を滑らせないよう移動を続けて、ようやく上へと続く階段を見つけた。


《こんな階段あったんだ》

《非常用の階段っぽい》

《丈夫に作られてるから全然崩れてないね》


「この先に……」


 いよいよエリアマスターがいる場所に行ける。不安は特になかったけど、妙な緊張感が私の中に芽生えていた。

 嫌な予感、とでも言えばいいのかな。心の中に現れたそれに得体の知れない感情を覚えたけど、でもどうすることもできない。だからそれを振り払うように、私は階段を昇ることにする。


《ギルハちゃんのいる世界って、どんなとこなの?》


「え? えと、普通の世界だよ?」


《いやいや、ギルハちゃん何も知らなすぎだし》

《絶対俺たちとは違う世界に生きてる》

《そもそもエルフだし》


「そ、そうなのかな?」


 でも、確かにコメントたちがいる世界と私が住んでいる世界は明確に違う。カイネ王も、二つの世界が混じり合った結果が、今見ているこの未来の世界の姿だって言ってたし。


「う~ん……、住んでる世界についてって言われても……。結構普通だと思うんだよね。あ、コメントのみんなのことを聞いたら、違いとかわかるかも!」


《え!? 急に俺らのターン?》

《俺たちの自己紹介パートきた》


「どんな世界なの?」


《いや~急に言われてもな》

《俺らの世界って、どんな世界?》

《人がたくさんいて、車とか走ってて、科学が発達してる、とか?》


「科学? 魔術みたいなのかな?」


 よくわかっていない私に、コメントたちはああでもないこうでもないと説明をしてくれる。正直文字だけだとよくわからなかったけど、でも彼らが楽しそうに説明をしてくれているその様子がおかしくて、楽しかった。


《全然違う文化の人に説明するのって難しいんだな……》

《もう無理ぽ……》

《心折れた……》


「ご、ごめんね!? 私、あんまり外の世界に詳しくなくて……。ニドゥカがいないと、何もできないし……」


《いや、俺らが悪い》

《ギルハちゃんはよくやってる》

《今のギルハちゃんがあるのは、そのニドゥカって人のおかげなんだ》


「……うん」


 そう。彼女がいなければ、私はあのまま里に繋がれたままだろう。外の世界に出ることもできずに、希望すら見出すこともできなかった。


「私は、ニドゥカに恩返しがしたいの。鎖から解放してくれた、救ってくれたあの人に、できることならなんだってするつもり」


《ん?》

《いまなんでもって》


「うん、するよ。なんだって」


 そうすることしか、私にはできない。だからこの未来救済だって、お願いされたからやってるんじゃない。

 私の意志で、やっていることだ。


《覚悟バチ決まってて草》

《普通にカッコイイ》


「え? えへへ、そうかなあ」


《いつものギルハに戻った》

《返して》


 そんなコメントたちに思わず笑いが溢れた。

 私の思いも、コメントたちは正面から受け入れてくれている。だから足取りは重くないし、これから何が待ち受けていたって、受け止める覚悟ができていた。

 気がつけば最上階。ここまで、怖いぐらいに何事もなく辿り着けていた。

 大丈夫。不安はもうない。私は私のため、それからニドゥカのために。

 何があっても受け止めるつもりだ。

 階段を昇る足に自然と力が加わって。

 私は最後の段差を昇りきった。

お読みいただきありがとうございました!


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ