↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
70/323

「母の日」計画始動

思い出す、王宮での暮らし

「母の日」に自ら夕食を振舞う。

瑛子にゆっくりと食事を楽しんでもらう、ついでに他の家族もだ。


そう計画をしたテレーザ。

食事のメニューも既に決めていた、


「美の国、王宮風、フルコース」


美の国の王宮で普段食べていた食事。

夕食はほぼフルコースの料理だった。


そんなテレーザの美の国の王宮での食事。

何かのイベントでもない限り、いつも一人きりで摂っていた。


クリスタルパレスの奥、王とその家族の暮らすエリア。

その食堂にただ一人。

広いテーブルにポツンと座り、着き従う従者と侍女たちに見つめられながら。


小さい頃は、養育係も兼ねていた第一侍女のレイアから、食事の度に容赦ない叱責が飛んでいた。


「姫、お口にたくさん詰め込むのは品がありません」


「姫、姿勢を正してお座りください、椅子の背もたれに寄りかかってはなりません」


「姫、どの食材も公平にお召し上がりください。」


たまには苦手な料理が出ることもある。

そんな時、知らずに顔に出るようで、


「嫌そうなお顔はなさらないように。食材の提供者が調理した者たちの事をお考えください」

とレイアが咄嗟に耳打ちをした。


そして、一人前に食事のマナーが身に付くと、やっと王や王妃と同席することが許された。

もちろん、ごくたまに、だが。


父である国王と母である王妃、そして3人の姉、そしてテレーザと弟が集う食卓。

はたから見れば、王一家の団欒だ。


王室専用の記者とカメラマンが、「楽しそうに」談笑する食事の場に同席する。

冒頭、数分間だけ。

その時だけは、テレーザに優しく話しかける、王妃、そして姉たち。


この頃、テレーザが王一家から疎んじられている、そんな噂が国民の間に広まっており、

憶測が憶測を呼び、

テレーザはすっかり、「ついでの王女」という名が定着していたのだ。


「王と王妃は子供たちのえこひいきなどしてはいない」

これを証明するために、記者たちが呼ばれていたのだ。


しかし、記者たちが退席すると、王も王妃も、姉たちも、いつもの姿に戻る。

テレーザはいてもいなくても関係ない、それが日常だった。


「ねえ、テレーザお姉さま、今日も森に行ったんでしょ?」

と話しかけてくるのは、弟のジャン・ルドルフ王子。

この王子だけはテレーザを姉として慕っていた。


「ルドルフちゃん、こちらへいらっしゃい」

そんな様子を見ると、母エリアルド王妃がすぐに口を出した。


記者の手前、姉弟の順で席に座っていたのだが、王子を自分の隣に呼び寄せた。

表向きには、

「まだ小さいので、お隣で見ていてあげなくては」

という親心、だとは言うが、本心は、

「テレーザと関わらせたくない」

というものだった。


家族で食卓を囲んでいながら、ひとりポツンとしているテレーザ。

周囲はそれを何とも思わない。


テレーザもそんな状況には慣れっこだ。

そういう時には、大きな窓の外を見る。

遠くに見える、ベルデの森からは、たくさんの生き物たちの息吹が聞こえる。

中には魔獣の邪悪な気配も混ざるが。


窓脇に並べられた花々は美しく咲いているが、あと数日で枯れはてるその運命を嘆いている。

そんなとき、テレーザは心で話しかける、


「また、土に返って新しく花を咲かせてね、待っているわ」

と。


窓辺には小鳥がやってくることもある。

テレーザたちの食事をのぞき見しているのだ。


「あんた、またひとりぼっちなのね」

「じゃ、わたしたちと話そうよ」

つがいの小鳥がそうさえずる。


テレーザも小鳥たちと心で話す。


「ねえ、自由に空を飛べていいね、私も飛んでみたいな」

小鳥たちに、空から見る景色の話を聞いている間にテレーザの表情が明るく輝いてくる。


そんなテレーザを見て、姉たちは


「あの子ったら一人で笑っているわ、ほんとに変わった子よね、関わりたくない」

そうささやき合っていた。



「そんなこともあったなあ」

と都留田家の台所でテレーザは思った。

美の国での出来事、決して楽しい思い出ではない食事の風景。

なのに、「母の日」のイベントとして、その再現をしようとしているテレーザ。


いつも、自分の食事は後回しにしている瑛子。

食べている途中でも、孝太郎が帰宅すれば中断して孝太郎を世話をする。


食事だけではない、ここでの生活においてすべてがそうだ。

瑛子はいつも自分の事を後回しにしている。

なににおいても、孝太郎や子供たちを優先させるのだ。

そんな姿を見て、


「せめてお母様みたいに、優雅にゆっくりとお食事をしてほしい」

とテレーザは思うようになっていた。


母、エリアルド王妃のことは嫌いだ。

この前の葵との会話ではっきりした。

それでも、あの優雅さ、気品、それは認める。


「瑛子さんにもそんな風に優雅に振舞うことが出来るはず」

とテレーザ。


そんな姿を見せれば孝太郎の瑛子に対する態度も変わるのではないか、

テレーザは淡い希望をいただいていた。

応援していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。