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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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休み時間と初めての給食

学校での一日、前半戦。

一時間目が終わり、10分ほどの休み時間。

生徒たちは、席を立ち教室を出る者、そのまま次の授業の準備をする者、

友達同士集まってお喋りをする者など、様々だ。


休み時間、王宮での日々のスケジュールでもそう呼ばれていた時間があった。

諸外国からのお客を出迎え、そして次に王宮訪問の子供たちと面会をする、その間に「休み時間」があった。


しかし、実際には休める訳でも、遊べるわけでもない。

その間に、着替えたり、髪を結い直したり、まったく自由にはならない時間だった。


1時間目の終わりのチャイムを聞いても、何を意味するのかわからないテレーザ。

周囲の様子を見てようやく理解する。

ただ、どうしてよいのかわからず、ただ席に座ったままだ。

前方の駆を目で追うが、見当たらない。


「ねえ、テレーザ」

その時隣の席のたまきが話しかけて来た。

周囲には、テレーザの近くに寄りたくてうずうずしている様子の女生徒が何人もいる。


たまきとテレーザが話を始めるのを見ると、女生徒たちも近寄って来た。

その中には先ほど「デザイナーになりたい」と夢を語った女生徒もいた。


テレーザの周りに集まった生徒たちは、みなテレーザの事を聞きたがった。

「どんな国のどんな街から来たの?」

「どんな学校へ行っていたの?」

「お国の人はみんなそんな髪の色なの?」


口々に言う女生徒たち。

しかし、たまきはテレーザがあまり自身の事を話したがらないことに気付いていた。

登校する時の自転車での会話でだ。


「ねえ、根掘り葉掘り聞いたら悪いわよ。

旅行者は素性を明らかにしないのよ、ミステリアスな存在なんだら」

とたまき。


「私は、大きな森の中の小さな家に住んでいたの」

とテレーザが言う。

頭にはベルデの森が浮かんでいた、小さな家は魔法使いダイナ夫婦の小屋だ。

美の国から来た、これは伏せておいた。

旅行者が言いたくないならどこの国から来たかを、しつこく問われることはない。

これは暗黙の了解だ。


「髪の色はね、そうね、この色の人が多いわ。あとはきれいなブロンドかな」

そう言うテレーザの髪をうっとりと眺める女生徒がいた。

その子はごわごわとした黒髪だ。


「そうなんだ、お国の人たち、みんなきれいに髪の毛なのね、いいな」

そう言いながら。


そんな話をしている間に休み時間が終わった。

2時間目の始まりだ。


テレーザはコピーされた教科書を貸してもらい、授業を受ける。

ファンタジーワールド(この素晴らし世界)での教育内容は統一されており、すべての国々で同等の教育が受けられる。

テレーザもこの授業内容を十分に理解することができた。


あっという間に4時間目が終わり、給食の時間になった。

倭の国の中学では給食が出る。


テレーザが都留田家の家族以外と食事をするのはこの国に来てから初めてだ。

もちろん、学校で給食を食べるのも。


今日の昼食については、瑛子があらかじめ給食だと教えてくれていた。

給食というのはテレーザも知っていた。

しかし、彼女の理解では宮殿で従者や侍女たちの食事、これが給食と呼ばれているものだった。


給食の時間、生徒たちは机の向きを変えて友達同士一緒に食べられるようにしていた。

テレーザはたまきと休み時間に話をした女生徒たちと一緒だ。


駆はなんとなくテレーザの様子を気にはかけているのだが、寄り添ってくるようなことはしない。

周囲の女子の反応、男子からのひやかし、これを避けたいのだ。

それを察しているたまきがテレーザの世話を焼く。


給食係が食缶を運んできた。

そして黒板の前に並ぶおかずや、ご飯、デザートなど。


「さ、行こう」

そうたまきに言われて席を立つでテレーザ。


たまきのやる通り、トレイにお皿を乗せ、食缶の前に立つ。

すると、給食係が次々と食材をよそってくれる。


その様子に目を丸くするテレーザ。

こんなことは初めてだ。

自分から食事をもらいに行くなんて。


食事を歩きながら受け取る。

しかも、一つの皿に何種類ものおかずが盛られる。


「これが給食ね」

とテレーザ。


かつて、美の国で食べていた食事とはずいぶんと違う。

王宮の広い食堂、長いテーブル。

そこに、一人で座り、給仕が料理を皿に盛るのを待つ。

数度の「毒見」を終えてテレーザの前に並ぶ料理は、いつも冷めていた。


「王宮の食堂の給食、すごく美味しいんですよ。王女が食べることはないでしょうけどね」

ふとそんな言葉を思い出した。

そして笑うその顔。


エマだ。

エマは美の国、王宮で定常されていた侍女のための給食の事をよく話してくれた。


そこで、またエマとの思い出から考えを逸らそうとするテレーザ。

これ以上、考えると泣いてしまいそうだったから。


「どうかした?」

とたまきが声をかけてきた。

テレーザの様子がおかしいことに気付いていた。


「あの」

と声を出そうとしたが話ができない。

何か言おうとすると涙がこぼれそうだ。


「今日はどうしたんだろう」

いつもなら、エマの事をどれほど思っても、悲しくなっても涙をこらえることが出来た。

人前で喜怒哀楽を現さない、小さなころからそう教え込まれてきた。


「大丈夫」

そうたまきに言うテレーザ。


「あなた、お嬢さまなんでしょ?こんな給食でびっくりしたとか?」

とたまきが言う、


そして、

「それとも、故郷を思い出したとか?もうホームシック?」

と笑うたまき。


「お腹がすきすぎて、一瞬クラッとしちゃったのよ、もう食べていいんでしょ?」

そう言いながら、トレイに乗った給食を机に運ぶテレーザ。

席に着くと、瑛子が持たせてくれた「お箸セット」を取り出し、食べようとしている。


「ほかの事考えないと」

内心、テレーザはエマの事から気を逸らそうとやっきになっていた。


「ちょっと待ってよ、まだいただきます、してないんだから」

とたまきに静止されるテレーザ。

周囲の女子たちがくすくすと笑っている。


「おい、当番、早くしろよ、旅行者ガールが腹ペコのようだ」

と男子の声がした。


すると、当番と言われている生徒が二人、教壇の前に立ち、


「それでは、今日の給食に感謝して、いただきます」

と大きな声で言った。


そして、クラス全員が、

「いただきます」

と声を上げると、みな給食食べ始める。


その様子を見つめるテレーザ。

もちろん、こんな経験は初めてだ。


そして皆よしワンテンポ遅れて自分も箸を持った。


「ねえ、みんなに毒見でもさせてるの?

大丈夫だからあんたも食べなよ」

と向かい合わせの机の女生徒が言った。


「そうだ、ここではお毒見はないんだっけ」

とテレーザ。


「そうね」

と言うとテレーザは給食を食べ始める。

その言い方はあまりにも自然だった。


「やっぱりあんたって庶民じゃないよね、ねえ、私と友達になってよ。

私はあかね、よろしくね」

とその女生徒が手を差し出した。


「友達」

テレーザにとって、縁のない存在、しかし、そう言われて何故かとても暖かい気持ちになっていた。


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