はじめての「学校」で
テレーザの学校生活、どうなる?
自転車を置き、校内に入るたまきとテレーザ。
そこで何人かの女子に囲まれた。
みな、異口同音に都留田駆とはどういう関係なのか、と矢継ぎ早に聞いてくる。
そして、少しばかりその顔つきが厳しい、そして視線が刺さる。
「あ、この子はね、都留田んちに滞在中の旅行者よ。テレーザ、っていうんだって。
都留田が、みんなに仲良くなってもらいたい、って言ってたよ」
そういうたまき、
すると周囲の女子たちが、少し顔を赤らめて、
「そ、そうなの。都留田くんのお願いなら、もちろんよ」
とテレーザに笑顔を向ける。
「私はまず、職員室にこの子を連れて行くから、また後でね」
そう言うと、たまきはテレーザを引っ張り、その場を離れた。
「あ、あの、たまきさん。駆さんって」
とテレーザがそこまで言うと、
「あいつさ、私とは幼稚園の頃からの幼馴染なんだけど、中学に入って急になんかイキっちゃってて、
女子なんかとは気安く口も利かない、とかでいけ好かない態度なんだけどさ、
なんかそれがいいのか、あいつにぞっこんな女子が多くてね」
とたまきが早口で答えた。
しかしテレーザにはこの話の内容がぼとんど理解できない。
要は、駆は女子に人気がある、それだけが分かった。
「そういえばさ、あなたってセンターシティとかから来たの?」
とたまき。
センターシティと言うのは、各国の中心部、首都圏のことだ。
「え、何故そう思うの?」
とテレーザ。
「だって、なまりがないもの。きれいな言葉をはなすのね」
とたまきが言う。
そういえば、都留田家の人々も、テレーザと同様、綺麗な言葉を話す。
なので気付かなかったが、他の人々は少し違和感のある喋り方だ。
方言、というやつだ。
美の国でも、地方には方言があった。
「ファンタジーワールドの共通語もこのあたりでは、かなりなまってて田舎臭いじゃない、だからあなたみたいにきれいに話す人、うらやましくて」
とたまき。
ファンタジーワールドの国々ではすべて同じ言語が共通語だ。
しかし、国や地方によっては方言があり、いわゆるきれいな言葉を話すのは5大王国とそれに続く15の国の中心部とだとされている。
特に、5大王国の中枢で使われているのが、世界でいちばん美しい話し方ということになる。
「駆さんもきれいな言葉を話しますね」
とテレーザが言うと、
「そりゃ、駆の家は代々伝わる倭剣術の家元だもの。それに駆のパパは政府のお偉いさんだし。
あいつ、なにげにお育ちがいいんだよ」
と笑うたまき。
「お、いたいた」
そこに登校したばかりの駆が合流した。
「もう、かけちゃん、女子が大騒ぎよ。」
とたまき。
「なんでだよ、俺はうちの旅行者を連れて来ただけだ」
とそっけなく言う駆。
「さ、ここが職員室。話はついているはずだから、ま、挨拶だけでもしておけ」
とテレーザに言う駆。
「なに、その偉そうな言い方。親から連絡入ってるんだよね?
あそこにるのが、児玉先生、私たちのクラスの担任だよ」
とたまき。
その指さす先には、中年の男性がいた。
たまきに促されて児玉の前に行くテレーザ。
「やあ、君がテレーザだね。ようこそ倭の国、息吹へ。
今日は一日、みんなと学んだり遊んだりするといい」
と笑顔で言う児玉。
少し安心したテレーザが、
「今日は楽しみにしておりました。よろしくお願いいたします。」
と答える。
そしてお辞儀をするその姿が、とても優雅だ。
瑛子からの連絡で、都留田家に滞在する旅行者が登校することを伝えられたが、
出身地はその素性は何も聞いていない。
しかし児玉はテレーザを一目見ただけで、一般庶民の娘ではないそう思った。
「先生、テレーザに靴を貸してあげてよ、予備の上履きと外履き、あるでしょ?
こんな靴じゃ、痛くて歩けないもん」
たまきに言われて、テレーザの靴を見る児玉。
「これは」
見覚えのある靴の形だ。
しかし何も言わず、テレーザのために靴を用意する児玉。
そして、
「サイズはこれくらいかな?これなら走っても大丈夫だ」
そう言って上履きと外履きを出してきた。
その靴を履いてみるテレーザ。
「ちょうどいいです。これ、お借りしてもいいのでしょうか」
その言葉に頷く児玉。
テレーザが脱いだ、その靴、
それは5大王国や15の国々など有力な国の上流階級の子女が主に履かれている型式の靴だ。
そして、靴の内側に、なにかの紋章が刺繍されているのが見えた。
「あの紋章は、貴族の令嬢か?それとも。どちらにせよ、とんでもない旅行者様だ」
と児玉が心で言った。
靴を履き替え、教室へ向かうテレーザ、駆、そしてたまき。
入ると、その場にいた皆が一斉にテレーザの方を見た。
「さ、授業だぞ」
と児玉。
ざわめく教室が静かになった。
「今日は旅行者のテレーザがクラスに参加だ。
みんな、仲良くしてやってくれ」
と児玉。
テレーザは一番後ろの席に座っている。
隣にはたまきがいる。
「じゃ、一時間目、宿題やってきたか?
みんなに発表してもらうぞ」
と児玉が言うと、みなノートやらレポートやらを取り出した、
黒板に
「将来の夢」
と大きく書く児玉。
「そうだ、みんなの将来の夢について考えてくるようにってことだったな。
将来、なりたい職業、やりたいこと、かなえたい夢、どんなことだろうか?
さあ、聞かせてもらおう」
と皆に言う児玉。
「将来の夢?なにそれ」
テレーザは密かにそう思った。
自分にはそんなことを考えることなど、許されたこはなかった。
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