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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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家族4人の「団結」

テレーザの記憶が。

テレーザを巡り、都留田一家がギクシャクとしたその翌朝。

いつも通り、夫の孝太郎は瑛子の作る朝食を食べ、

「みそ汁が薄い」

と文句を言い、


出がけに弁当を渡すタイミングが遅れたことで、

「段取りの悪い奴だ」

と嫌味を言って出勤していった。


別に、昨夜の事があったからではなく、これがいつもの日常だ。

孝太郎は日ごろから、瑛子に理不尽な言動をいう。


夕食で、焼き魚を出せば、

「ジュージューと音がしていない」

と皿を突き返す。

焼きたてを食べられるタイミングで声をかけたのに、なかなか食卓に現れなかったのは孝太郎だったのに。


瑛子が少しでも疲れた素振りを見せれば、

「パートごときで何故そんなに疲れるんだ。楽な仕事なんだろう?」

と小ばかにしたように言う。


瑛子が少しでも何か批判的なことを言えばすぐに、

「だったらお前が稼いで来い、誰のおかげで生活ができると思っている」

と頭ごなしに言い放つ。


そんな孝太郎だが、瑛子はそれでもいつも笑顔で接している。

言い返すこともほとんどない。


瑛子のそんな姿が葵は嫌いだった。

いつもいつも、父の言いなりな母。

でも母に進言することはしなかった、どうしたらよいのかわからなかったからだ。


絶賛反抗期の駆も父への反抗心が一番強い。

父とはほぼ口もきかない、顔をみようともしない。

用があるときは母を介す。


長男、尊ともなれば、表立って対立をするようなことはしない、しかし父の事は完全に否定している。

かつて自分が望んだ理系学部への進学を頭ごなしに批判され、父の望む経済を学ぶように仕向けられた。

しかし、なんとも興味が持てず今では家の自室にこもる日々だ。


それが、

テレーザがこの家に来てから、少しずつ変わり始めていた。


少なくとも孝太郎以外の家族での会話が増え、自室から出てリビングに集まることが多くなった。

テレーザを囲んで、たわいもない話をするそれがとても楽しい時間になっている。


尊はテレーザが少しでも快適に過ごせるようにいろいろと気を使った。

未だに戻らないテレーザの記憶、それを一番心配しているのも尊だ。


葵も、だらしない生活を少しずつ改めようとしていた。

「この部屋、テレーザに見せたら思いっきり引かれちゃった」

そう言いながら、部屋のかたずけをしていた。


駆はテレーザにとても優しい。

誰に対しても、敵対心丸出しのトゲトゲした態度をとるのがその頃の駆だったのだが、

テレーザには穏やかに話をする、まるで安心させるかのように。

テレーザの方が年上だが、なんだかいろいろと世話を焼く。

今までは考えられないことだ。


「テレーザのお陰で家族が一つになれそうなのに、なぜあの人はあの子を追い出そうとするのだろう」

瑛子は孝太郎への不信感を募らせる。


外交局に勤めている立場として、自宅に王女が居候しているというのが問題になるのはわかる。

しかし、テレーザがここに居るのには深い理由があるはずだ。

それを確かめもしないで、厄介払いでもするような孝太郎の考えに納得が出来なかった。


「で、どうするの?」

と葵が言う。

孝太郎が出かけた後、やっと口をきく葵。


「今日の夕方、ノジマさんの病院に連れて行くわ。

これ以上記憶のこと、放置できないから」

と瑛子。


「おはようございます」

そこにテレーザの声がした。

いつもより少し遅く道場から起きて来たのだ。

見るからに眠たそうだ。


「どうしたの?」

と瑛子が声をかける。


「なんか変な夢を見てしまって」

とあくびをしながら言うテレーザ。


「そう、じゃあ朝ごはん食べたらもう一度寝るといいわ」

と瑛子。


「それから、今日の夕方、ちょっと出かけましょう。この前稽古にきたノジマさん、覚えているでしょう?あの人はお医者様なんだけど、あなたの診察をしてもらおうと思っているの」

と。


「病院ですか」

とテレーザ。


「記憶、いつまでも戻らないのはおかしいの。それに身体にもよくないわ」

と瑛子が言うと、


「そうですか。連れて行っていただいていいのですか?」

とテレーザ、申し訳なさそうだ。


「かまわないわよ、あなたの身になにかあったら大変だもの」

と瑛子はそう言い、

パートから帰ったら、病院へということに決まった。


瑛子がパートに出かけ、葵も駆も登校した。

道場ではテレーザがひとりで掃除をしている。


この頃ではすっかり手際もよくなり、最初のころと比べると半分くらいの時間で終わるようになっていた。


「きれいになったわ」

そう言いながら磨き上げた道場をみつめるテレーザ。

すると、ほどよく動いたせいか睡魔が訪れた。

しばらく部屋に戻り眠るテレーザ。


どれくらい時間が経ったのだろう。

もうお昼も過ぎていた。


道場で大きな物音がした。

乱暴に扉を開く音だ。


飛び起きるテレーザ。

しかしすぐに外に飛び出すことはせず、だまって様子を伺った。


道場に数人の男が入り込んでいた。

靴も脱がず、泥だらけの足跡が付いているのが見えた。


「おい、鳳凰館を復活させる気なのか、それは許さん」

そう荒い言葉で言っている。


男たちがテレーザの部屋に向かって行く。

近づく足音に、身をひそめるテレーザ。

男たちは手に竹刀を持っている、その竹刀で壁や床と叩き威嚇をするような音がする。


その時、

「おい、何をしている」

と男たちに立ちはだかる人影が見えた、尊だ。

尊がテレーザの部屋へ向かうのを阻止するかのように仁王立ちに立っていた。


「これは幻の跡継ぎの坊やではないか」

と男が言う。


男たちと尊が押し問答をしていると、テレーザの部屋のドアを叩く音がした。

「テレーザ、開けて」

と瑛子の声だ。


ドアを開けると瑛子が思わずテレーザを抱きしめた。

そして

「さ、家の方に」


道場では相変わらず男たちと尊が言い争いをしている。

興奮した男たちは竹刀で道場内を破壊していた。


その時、

「おまえら、止めないか」

と孝太郎の声がした。


どういうわけか早く帰って来た孝太郎。

道場の異変に気付いて慌てて駆け付けたのだ。

その手には、倭剣術の剣が握られている。


部屋から出て来た瑛子とテレーザを見ると、

「おい、お前はこの子を病院へ、もう猶予がない」

と。


その言葉にうなずいた瑛子がテレーザの腕をつかんで走る。

道場を駆け抜け、家の駐車場に置いてある軽自動車まで。


手をつかまれながら、

「わたし、こうやって森に連れていかれたんだ」

とテレーザは思った。


あれは、お姉さまの手だった。

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