表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

305/306

今後の事

「これからまだ、子供たちに金がかかるというのに、面目ない」

家に帰ると、孝太郎は瑛子にこう言った。


自分の異動のこと、役職がなくなったこと、すべてを話した。

これは名目上の左遷だと。


「あら、私がその分補填するわ。今までの時給生活とは違うから」

と瑛子。


今回の人事異動が、自分たちが美の国へと出向いたせいだ、それを分かっている瑛子。

孝太郎の事を責めるはずがない。


「早めにリタイアするのもいいかもな。そして道場を再開するのなんかどうだ?」

と孝太郎が言う。

瑛子の反応に少しばかり安心したようだ。

都留田家はもともと倭剣術の家元の家系。

倭の国の政府の方針もあり、剣術は廃れていき孝太郎も後継者となることはなかったのだが。


「また目を付けられられるわよ」

と瑛子が笑う。

美の国への渡航、普通の旅行ではない渡航。

しかも、都留田一家が「あのクーデター」に関わったとなるとかなりの問題だ。


孝太郎が閲覧した極秘資料には、反乱軍を撃退していたのは剣術を使う異国人だったとある。

王一家からの聴取など不可能のため、反乱兵たちに倒された門番の衛兵から聞いた話だ。

彼は瀕死の重傷を負いながら証言したのだそうだ。


「あの剣式は倭剣術だった」

と。


それに加え、王直属の軍隊が到着したとき、反乱兵たちに一人で立ち向かっていたテレーザ王女。

その王女が使っていたのも倭剣術だ。

王宮の資料によると、王女が剣術を学んだという記録はない。


これはクーデターの後処理をする、諮問委員会でも問題となったが、何はともあれあの場を無事切り抜け、王一家を守り抜いた、ということで深い詮索はされなかった。


もちろん国王直々による

「極秘に」というお達しがあったことは明確だ。


「まあ、趣味程度ならいいだろう」

と孝太郎が言う。

本格的な再開は不可能だ。

今、かつての門下生たちが細々と稽古を続けている、それにでも加わる程度が良い。


「じゃ、私がますます頑張って仕事しないとね」

と瑛子。


「自分の決めた道を進めばいいわ」

と付け加えた。


そう言いながら、「自分の決めた道」を進むことが出来ないでいるテレーザを思った。

あの子は、どんな気持ちでいるのだろうか。


テレーザのいない日々、淡々と過ぎてゆく。

異動させられたとはいえ、孝太郎はそれなりに忙しく仕事に明け暮れる日々、

瑛子も、やっと会社員生活になれてきたところだ。


尊は大学生を存分に楽しんでおり、勉学も友人との遊びも目いっぱいだ。

あんなに部屋に引きこもっていたのに、今で家にいる方が珍しい。


葵はそろそろ進路を決める時期。

教師となり国外へ行きたい、そんな夢もあったが今では何がしたいのかわからない。

とりあえず、自分の未来を探すために進学する、それだけしか言えることがない。


駆はもうすぐ一つ上の学校へと進級する。

かなり優秀な生徒が集まるレベルの高い学校への入学が決まった。

幼馴染のたまきとは別の道を行くことになったが。


テレーザがいなくなってから、季節もいくつか変わって行った。

美の国から戻った直後は、頻繁に顔を見せていたオルト爺も最近はやってこない。

寝込んでいたオルト婆がやっと回復し、快気祝いをしたのはいつだっただろうか。


カミヤマ夫妻ともすっかり疎遠になっている。

孝太郎とは古い友人同士だか、もともと住む世界が違う人種だ。


孝太郎の耳に、ファンタジーワールド(この素晴らしい世界)での情報がまるで入ってこなくなった。

お客様サービスセンターにいればそれも当然。

倭の国での観光客の対応がほとんどだからだ。


だんだんと、都留田の家にテレーザのいた気配が消えて行く。

道場の片隅のテレーザの部屋、そこだけはまだそのままだが、食卓に置いていたテレーザ食器、

洗面所の歯ブラシ、そして葵と一緒に揃えたスキンケア道具、それから玄関に残されていた靴。


いつの間に片付けられていた。

瑛子が箱に入れてしまい込んだのだ。


「また戻ってきたら出してあげればいいもの。

放置してほこりまみれにするのは嫌だから」

と瑛子。


本当にあの子はここにいたのだろうか。

時々、そう思うくらいテレーザの事が遠い存在になりつつあった。


そんなある日の事、都留田家に訪問者が現れた。

外交局、局長と椿と元上司である葛西部長だ。


「いきなりすまないね」

と椿局長が言う。


ちょうど休日で家にいた孝太郎。

あわててリビングに二人を通した。


「お気遣いなく」

とお茶を出す瑛子に椿が言う。


「休みにいきなり、申し訳ない。重大な話がありお邪魔させてもらったよ」

と葛西部長。


お茶を運んだお盆をもったまま、瑛子も孝太郎の隣に座った。

改まって、二人で椿を葛西を見つめていた。


「これを」

と椿が一通の封筒を取り出した。

大ぶりの封筒には金の縁取りがあり、裏には刻印が押されている。


「美の国の印」

と孝太郎がつぶやいた。


「美の国から正式に申し入れがあった。来週のフィオナ・クリスティーネ女王の即位式典に、

君たちを招待したい、とのことだ」

と椿。

その封筒は美の国からの正式な招待状だった。


「また美の国へ行けるのね」

と思わず瑛子が口に出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ