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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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かつての日常と今の日々

テレーザのいない日々。

以前に日常にもどっただけだ。


少しだけ違うとすれば、孝太郎は以前よりも家の事をやり子供たちとも関わっている、瑛子はパートのおばちゃんから正社員に、そして尊は引きこもりから学生になった。


「パパ、すごい進歩よね」

と葵が言う。

朝食を自分で用意し、使った食器を洗っているところを目の当たりにしたからだ。

そんな葵の言葉に、孝太郎は少しばかり自慢げに笑って見せた。


「テレーザをがっかりさせられないからな」

と。

かつてテレーザは口癖のように、「今だけじゃダメよ」と言っていたのだ。

瑛子のマダムコンテストの出場が決まり、朝の修行を始めたころ家事の分担を決めたころだ。


「テレーザ、本当は家族が欲しかったんじゃないかな。自分を認めて愛してくれる人たちが。美の国の本当の家族が自分を受け入れてくれたんだったら、私たちはもう必要ないのよね」

と葵が寂しそうに言う。


「かもしれない、でもその方が幸せだ。本当の家族に愛されている方が」

と孝太郎。


いまだ公表はされていないとはいえ、フィオナ・クリスティーネは女王に即位しその両腕となるのが、

ユリアナとテレーザだと言う。

これでもう二度と長期にわたり国を離れることはない。


「でも、あの二番目のお姫様はどうするのかしら」

といつの間にか側にいた瑛子が言う。


美の国、王室では第一王女フィオナ・クリスティーネ王女を次期女王に、第二王女と第三王女がその両腕として決まっていた。

幼い頃から、そう養育されていたに違いない。


「一度でも反旗を翻したのだから仕方ないのだろう。あの魔法使いたちの反乱は公にはなっていないが、そんな姫を要職に就けるわけにはいかないんだろうな」

と孝太郎。


「じゃあ、この先カタリナはどうなるのかしら」

と葵が心配そうに言う。

カタリナが自分の身をなげうって、あの反乱兵から姉と妹を守ろうとしていた姿を忘れられないのだ。


「まあ、何処かへ嫁ぐのが無難なんだろうな」

そう言う孝太郎に、


「テレーザにしても、カタリナにしても、好きでもない人と結婚だなんて」

と葵。


「でも、あのホイ君はテレーザの事が好きみたいだけど」

と瑛子が言う。


「両腕就任で、婚約も一旦解消になるようだがな」

と孝太郎。


「またテレーザを振りまわすのね。なんだと思ってるんだろう。ホイも可哀そうよ」

と葵は腹立たし気に言う。


そして、

「一国の王女だから仕方ないのかしら」

とポツリ言う葵。


「そうだな、自分の意思ではどうにもできない事も多いだろうな、ある意味自由のない生活だ。お前、王女じゃなくてよかったな」

と孝太郎。


「テレーザはまさにそんな運命に翻弄されてるっていうのに」

と葵は不満げに孝太郎に言うが、その時には既に孝太郎は出勤のため家を出て行っていた。


「さ、私も会社に行かないと。葵、尊と駆、おこしてから行ってね」

そう言い残すと瑛子も家を出た。


「まったく、兄さんに駆、起きなさいよ」

葵は軽くため息をつくと、そう言いながら足音を立てながら2階へと向かった。



「異動ですか?」

と孝太郎。


その日、職場に着くや否や上司である葛西部長に別室に呼ばれた孝太郎。

そこで、


「お客様サービスセンターへの異動してもらいたい」

と告げられた。


孝太郎のような役所勤めの場合、一定期間ごとの部門異動は珍しいことではない。

しかし、今はその時期ではない。

こんな時に異動がある、「何かをやらかした」者に出される決定だ。


「公にはしないがな、きみの休暇中の行動が問題となっていてな」

と部長の葛西は言いにくそうに話す。


美の国へ行ったこと、外交局に勤めていながら届け出も出していない。

外交局の管理職が国外へ行く場合、事前に申請が必要だ。


「問題、ですか」

と孝太郎は口を濁す。


「おまえ、何をしに行ったんだ、5大王国だぞ」

と葛西。


「バレている」

その言葉に孝太郎は思った。

カミヤマの助力で、極秘で出向いたつもりだったが隠し切れなかったようだ。


「家にいた旅行者の故郷で」

と孝太郎が言う。


「あの子のことか、後見人も解除しているな。何か起きたのか?

美の国は今情勢が不安定だ。倭の国としては関りを持つわけにはいかないんだ」

と言う葛西。


この葛西も都留田家にいたあのテレーザが美の国王女と言う認識はないようだ。

せめてもの救いか。


「わかりました。異動は承知です。いつから動けばいいでしょうか」

と孝太郎が言う。


「今日中に、それからサービスセンターでは役職は付かない。」

と言い残すと葛西はそのまま去って行った。


役職がなくなる。

それは孝太郎のキャリアがここで止まるということだ。

収入も減るだろう。


しかし、孝太郎は管理職だったからこそ使えた、データセンターへの出入りが出来なくなる、

その方が重大問題だった。


「これから、情報を探るにはどうすればいい」

とそのことばかりが頭をよぎる。


今までのデスクを片付け、異動先へと向かう孝太郎。

最後に挨拶をする機会も与えられなかった。

この訳アリ異動に、誰も何も言わない。

どう声をかけてよいのかわからないのだ。


荷物を抱え、長い廊下を進む孝太郎、そこに葛西部長が追いかけてきた。

すると、そっと耳元で、

「異動で済んだだけありがたいと思え」

とつぶやいた。


葛西の眼は真剣そのものだった。

そして、その言葉は自分だけに告げられたものではない、家族全員に伝えられたものだ、

と孝太郎は直感していた。

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