公表された事、入手した情報
新情報は得られるのか
「おやほうございます」
いつもより、少しばかり早く職場に着いた孝太郎。
「休みはどちらかに行かれたんですか?」
と周囲から声をかけられる。
曖昧に返事をし、早々とデスクに座るとやるべき業務の確認をする。
休暇明け、今日は忙しくなるだろう。
その前に。
と、そっとデータセンターへと向かう孝太郎。
ここではファンタジーワールドの最新情報を閲覧することが出来る。
IDカードを使って個室ブースに入る孝太郎。
孝太郎のような管理職のみがこのスペースを使うことが出来る。
ドアを閉め、目の前のモニターを起動する。
「そういうことか」
と孝太郎。
その顔には安堵の色がある。
葵と駆も学校に登校した。
そして尊も、「魔法学」を学ぶために復学した大学へと向かった。
瑛子は、出勤だ。
パートから社員へとなった瑛子。
みなそれぞれ、いつもの日常に戻されていた。
その日の昼、それぞれが昼休みを過ごしていた頃、ニュースが流れた。
「美の国のクーデター、鎮圧される」
と。
「美の国で起きたクーデター、王宮内を占拠していた革命軍は王直属の政府軍に制圧され、
首謀者は確保された。
王一家は全員無事とのこと」
このニュースが最新の画像と共に配信された。
王一家が王宮へと入る姿が映し出されている。
「ねえ、この子」
と駆に声をかけてきたのは、駆の同級生たまきだ。
「ねえ、テレーザよね?」
と更に詰め寄るたまき。
駆は思わず、人気のない場祖までたまきを連れ出して、改めてタブレットを見る。
美の国のクーデターその後のニュース画像だ。
軍隊の兵士が直立不動で並ぶ前を、堂々と歩く国王と王妃、
その後ろを4人の王女と王子が続いている。
そのうちの一人、王子に行き添うように歩く王女。
その横顔がはっきりと写った。
テレーザが初めての学校生活を送った時、たまきが一番近くで世話を焼いた。
それから、母の日も、マダムコンテストの花の調達も。
テレーザとは友達になった、つもりだった。
「ああ」
と駆が曖昧に頷く。
たまきに嘘は付けない、が真実を伝えることもできない。
気付かなければよかったのに。
「なんで、あの子が」
とたまき。
しかし、駆は何も答えない。
「言いたくないんだね、これでわかったわ。あの子は美の国の王女なのね。
普通の子じゃないとは思っていたけど。5大王国のお姫様だったなんて。
もう、気軽に話しかけたりできないね」
とたまきは駆の気持ちを察したように言った。
「それは、俺たちだって同じなんだよ」
と駆。
自分だぅて、もうテレーザと会うことも出来ないだろう。
「でも、クーデターが起きて、無事だっただけでよかった」
とたまきが言った。
「ほかの子たちはまだ気が付いていないみたい。ニュースは見てたけどね」
と続ける。
「寂しくなるわね」
とつぶやくように言うとたまきはそのまま戻って行った。
その日の、授業が終わり帰り際。
担任の児玉が駆に声をかけた。
「都留田、お前の家の旅行者はどうしてる?
また登校してもいいぞ」
と。
「反応を見ている」
と駆は感じた。
「そうですか、伝えておきます」
と顔色も変えずに答える駆。
そのまま児玉を見ることもせず、学校を後にした。
「今日に限って残業なんだって、パパったら」
と帰宅するなり葵が話しかけてきた。
「着替えくらいさせてよ」
と愛想無く言うと、部屋へと向かう駆。
しばらくすると、尊と葵がいる居間へと降りてく来た。
三人で今日知り得た情報を確認し合う。
しかしニュースで流れたこと以外、何もなかった。
「さあ、夕飯にしましょう」
と瑛子が台所から声をかけた。
食卓に、瑛子と尊と、葵と駆。
4人が座る。
テレーザが来る前はいつもこうだった。
仕事で遅く帰宅する孝太郎はほぼ夕食の席にはおらず、いつもこの4人。
しかも瑛子は給仕に忙しくあまり座ってはいない。
手伝うこともなく、もくもくと食事をする3人の子供たち。
「すっかり戻通りだな」
と尊が言う。
「なによ、嫌味なの?」
と葵が渋々と席を立ち、瑛子の手伝いを始めた。
テレーザは。
いつも楽しそうに調理する瑛子を見ていた。そして、率先して皿を並べ料理をは運ぶ。
後片付けも、いそいそとこまめに動いた。
テレーザのいない食卓。
会話も弾ます、沈黙だけが流れる。
「パパ、遅いね」
とポツリ葵が言う。
「ただいま」
そこに玄関が開く音がし、孝太郎の声が響いた。
「いやいや、休暇明けは大変だ、仕事が溜まって溜まって」
と言いながら、上着を脱いだだけで食卓へと座る孝太郎。
「で、そうでしたか?」
と瑛子が身を乗り出すように言う。
他の三人もせかすように孝太郎を見つめている。
「まあ、お茶くらい飲ませてくれよ」
と孝太郎、それから。
「極秘の情報だ、保存や印刷は出来なかったので覚えてきた」
そう言いながら、外交局、データセンターで入手した最新情報を話始めた。
「美の国のクーデターは公表された通り、政府軍によって鎮圧された。
でもな、あの後しばらくは軍が来なかったようだ。あの状況を防いだのはテレーザだ。
倭剣術で、あの場を守ったんだ」
と孝太郎が語る。
「それから、後はニュースの通りで、王直属の軍隊が突入し人民解放軍を制圧したようだ。
首謀者はじめ全員が監禁されたそうだ、これから裁かれるだろう。
そして、近いうちに美の国は国王が退位し、第一王女が女王として即位する。
この騒ぎで、けじめをつけるということらしい」
「え、フィオナが女王になるのね、素敵だわ」
と葵が歓声を上げた。
「そして、女王を支える両腕に、第三王女、ユリアナ・マーガレットと第四王女、テレーザが決まったそうだ」
と孝太郎。
「テレーザが両腕、もう国から出られないってこと?」
孝太郎のこの言葉にその場の全員が驚きを隠せずにいた。
これで、テレーザと会うことが本当に叶わなくなった。
そう直感していた。
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