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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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北の国のエマ

エマの故郷のお話

「さあ、行こう」

テレーザ王女がエマの手を引き駆け出した。


クリスタルパレスの奥に広がる森、そこは整備が行き届いており遊歩道も完備されている。

樹木の剪定もきちんとされており、森と言うよりも大きな公園のようだ。


北の国の片田舎で育ったエマは、拍子抜けをしていた、森へ行くと言われていたのに、

ここは森じゃない。


「あなたは、どこから来たの?」

とテレーザがエマに聞く。

気付けば、おつきの者の姿がない、エマだけがテレーザ王女に従いここにいる。


「あの、私だけで」

とテレーザ王女の質問には答えず、他の従者がいないことを気にするエマ。


「大丈夫よ、ここは城の敷地内だもの。危ない事は起こらない、だからみんなはここまでついてこないのよ」

とテレーザ王女が答える。


「で、あなたの事を教えてよ」

と再びテレーザ王女がエマに聞いた。


ファンタジーワールド(この素晴らし世界)には美の国を含めた5大国を頂点に、

それに次の立ち位置である、15王国、控えの国々(次を狙う国)そしてその他の国々で成り立っている。


5大王国次ぐ15の国控えの国々(次を狙う国)、これは時により入れ替わる。

その他の国々にその座を奪われることがある。


エマの故郷である北の国、ここは15王国控えの国々(次を狙う国)にも入ったことのない、

辺境の小国だ。


その小国のさらにはずれの小さな村でエマは生まれ育った。

家は農家でわずかな農作物と家畜を育てて生計を立てていた。


北の国は一年のほとんどが「冬」だ。

雪はさほど多くないが、そんな北の地で栽培できる農作物は限られており、厳しい気候のなかでの農作業は過酷を極めていた。


エマも小さい頃から両親の手伝いとして農作業や家畜の世話をしていた。

寒さに強い家畜の冬羊を連れて水場に移動させる、外は極寒だ。

水が凍っていることもある。そんな時は木づちをつかって氷をたたき割った。


エマの力ではなかなか割れない氷、

冬羊が水を求めて、ギャーギャーと騒ぎ出す。

あまりに騒がれると親から怒られる、それまでに氷を割らないと。


そして、農作物を育てるのも、凍り付いた土地を耕すのが一苦労だ。

エマの家には便利な農耕機械などはないから、すべてが手作業だ。

両親と兄、姉、エマ、そして弟が一家総出で耕した。


それでもエマの一家はなんとか日々を暮らせるほどの賃金しか得ることができずにいた。

食事も質素だ。

お菓子なんか食べたことがない。


そんな厳しい生活ではあったが、エマにとってはこれが普通、日常だった。

この生活から逃げたしたいとも思わず、このまま大きくなって大人になって、

村の誰かと結婚するものだと思っていた。


そんな時、姉が友達からもらってきたという、雑誌を持ってきた。

5大王国の王族の特集記事が載っている。


美の国の王女様の特集もあった。

見たこともないようなきらびやかなドレスに身を包んだ美しい王女。

王女が乗馬をする姿、王女たちが笑いながらお茶を飲んでいる様子、

そしてクリスタルパレスの王女の部屋、まるでおとぎの国のようだ。


どれもエマにとっては全く夢の世界だ、現実離れしすぎていて、あこがれることすら恐れ多いと思った。

その特集ページの片隅に、

「来年度の5大王国侍従、侍女募集要項」

という記事があった。


顔写真、履歴書、志望動機を送ること、そう書いてあった。

エマはこっそりと送り先を控えた。


そして、村で一番裕福な友達の家で写真を撮ってもらった。

この先、1年間、学校の宿題をエマが代わりにやる、という条件で。

それから、履歴書を書いた。

もちろん履歴書が何たるものかも知らないエマ、学校の図書室で調べながら仕上げた。

志望動機も考えに考えて、図書室で書いた。

書類が完成すると、今までもらったお小遣いをためていたお金で、送るための送料を払った。


それから数か月が経ち、王室の侍女に応募したことも忘れていたころ、

突然、村長がエマの家を訪ねて来た。


「すごいじゃないか、エマ、美の国の侍女として採用だ。

この村始まって以来の快挙だ。しっかりとお仕えするように」

と村長。


エマが侍女に応募していたことも知らなかった両親はかなり驚いたが、

同時に大喜びだ。

「我が家から、王宮に上がる者が出た」

と。

そして、せめてもの支度を整えてくれた。

美の国で引け目を感じないようにと、新しい洋服、靴を。

それはテレーザ王女の侍女として今着ているドレスに比べたら、見劣りがするほど質素な服だ。

それでも、両親が無理をして用意してくれたものだ。


それはエマが14歳になってすぐのことだった。

あれから、まだそんなに経っていないというのに、すごく昔の事のようだ。

北の国の小さな村が懐かしい、両親は、兄弟はどうしているのだろう。


自分の事を語っていたエマの表情が曇ったのをテレーザは見逃さなかった。

森の中の川の傍に置かれたベンチに座るテレーザとエマ。


エマはふと自分の手を見た。

ついこの前まで、いつもしもやけとあかぎれで真っ赤になっていた手。

まだ、あちこち傷がある。


その手をテレーザが握る。

そしてエマの手を優しく撫でるテレーザ。

すると、エマのあかぎれだらけの手が、みるみる白く美しく変わった。


その手ににそっとキスをするテレーザ。

それからエマを見て優しくほほ笑んだ。


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