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 アルバイトの飲み会に、晴奈は出席することにした。仕分けの作業で親しくなった従業員もいるので、前回よりは緊張感が少ない。それに、野村と会するのは最後だろうと予測しての参加である。もし礼の品を用意するなら、ここで情報収集をしておくべきだろう。

 会場の居酒屋は、職場の近くにある庶民的で和風な店だった。時間の十分前に店の前へつくと、見覚えのある顔が数人、入り口の前で集まっていた。晴奈に気付くと、手招きしてきたので、連れ立って店内へ入る。中はカウンターと二人席がいくつかあり、晴奈の予想以上ににぎわっている。そのわきを抜け、二階に上がると、広めの座敷があった。中はすでに半分以上、職場の人でうまっていた。

 先にきていた大和が、晴奈に気づき手を振ってきた。彼の隣には同年代らしい女性がいる。晴奈は会ったことがないが、別の時間帯に来ているアルバイトの子らしい。

 晴奈はどこに座ればよいかわからず、あたりを見回した。大和たち仕分け組の近くに座れば楽だが、自分の主は内勤である。しかし支店長や営業のそばに座るのは勇気がいる。

 そこへ、また何人か入ってきた。その中に、ベテラン事務員の女性と、野村もいた。二人とも入り口付近に立っている晴奈に気付き、着席をうながしてくる。流れに乗り、晴奈は大和と女性事務員の間の席に座る。野村は支店長の隣だ。晴奈からは三・四人はさんで対角線上の場所。近くはないが、会話は拾える位置である。具合のよさそうな席を確保でき、晴奈はほっとした。

 幹事である男性社員の音頭で乾杯し、会が始まった。

 テーブルには、それぞれの分の小鉢が二皿あらかじめ用意されており、後は順に大皿でサラダやからあげ、煮物などが運ばれてくる。

 その段階に来て、晴奈はおなかが締め付けられるような気分になった。

 周りがビールを注ぎ合ったり、大皿料理を取ったりする中、晴奈はどうすればよいかわからず心中おろおろする。年少の自分は、ビールを注いで回るべきなのか。他の人の分も大皿料理を取ってあげるべきなのか。けれどとなりの女性事務員は、飲みながら目の前の社員と話をしており、今はタイミングが悪い気がする。反対隣を見れば、大和はさりげない調子で料理をすすめたり、酌をしたりしている。彼らの様子を、晴奈は外国人を見るかのように眺めた。大和が視線に気付き、晴奈を振り返った。目が合うと、笑顔を見せる。

「三井さーん! 何飲んでんですかー」

 晴奈が甘いカクテルの名前を答えると、オシャレですねーなどと答えてくれる。そのまま、これもうまいですよと言いながら、野菜のグラタンをすすめてくる。流れで晴奈の取り皿にグラタンを取り分けてくれた。

「あ、それおいしそうだね。何?」

 となりの女性事務員が話にきりがついたらしく、聞いてきた。

「あっ、あのグラタン…か? ドリア? みたいな…」

 そっかーと言いながら料理を取り始める。晴奈は慌てて手を出した。

「あっ私盛ります!」

「え? ああ、いいよいいよ気を遣わなくて! じゃ、小林さんに何か取ってあげて。この人、飲んでばっかで食べないからさー」

 彼女は、先程まで話していた男性社員を指差す。四十代後半らしき彼は、赤みがかった顔で陽気に笑っている。確かに飲み中心らしく、彼用の小鉢は手をつけられていない。晴奈は彼の取り皿を受け取り、どれを食べるかを尋ね、料理を盛った。緊張して皿が不安定になったが、こぼさず渡すことができた。

「おーありがとー。やっぱいいよねえ若い女の子は! 大学生だっけ?」

 晴奈は返事をしながら笑みがこぼれた。みずほの読みは間違ってはいないらしい。

 大学での生活について質問に答えたりしているうちに、自然と場に入っていけるようになった。周りと何気ない会話をし、料理を食べ、時々飲んだ。今まで話したことがなかった人とも言葉を交わすことができた。

 来て良かったかな、と晴奈は思う。得意ではないお酒も今日は悪くないと感じた。

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