6
前回の手伝い以降、たびたび仕分けの仕事を手伝うようになった。それをきっかけに、外仕事の従業員ともぽつぽつ話すようになったのは晴奈にとっては大きな変化だった。
「野村君、四月から異動になるらしいなあ」
その話を聞いたのは、仕分け作業の合間に雑談している時だった。
ペットボトルを口にしながら、年配の従業員が言った。大和と共に小休止をしていた晴奈の耳にも入る。問うように大和を振り返ると、彼も知らなかったらしく、驚いたような表情をしている。
「え、野村さんどっか行くんですか!? どこに?」
大和が言うと、先程の作業員は、さあなあ、と言葉をにごした。そのまま仕事の続きに戻っていく。晴奈たちも再び作業を開始した。
「……ほんとだったら、さびしいなあ」
大和が独り言のようにぽつりとつぶやいた。
しばらくのち、繁忙期お疲れさま会と称する飲み会が開かれることになった。今回も晴奈に誘いが来て、予定がまだわからないからと一旦返事を保留にしてある。今回の飲み会は、野村の送別会でもあるのだろうと予想がついた。
正式に発表されたわけではないが、野村の異動はほぼ間違いないようだ。以前に比べ事務所に来る回数が多くなり、他の職員に仕事を教えている場面も見かけた。
異動となれば、もう会うこともないだろう。大和のようにさびしいとまでは思わないが、妙な気分になる。
当初ほど野村に対する苦手意識はなくなっていた。なんどかきさくに話しかけられ、仕分けの仕事を教わるうちに、晴奈の印象は変わっていた。今は感謝の気持ちもある。何らかの形で礼を言ってもいいかもしれないと思った。
久しぶりにみずほと大学で落ち合った。お互いになんだかんだと忙しかったため、なかなか会う機会がなかった。会った早々、みずほの就活話が繰り広げられる。大変だ大変だと言っているが、忙しいというのはみずほにとってはやりがいでもあるようだ。晴奈は彼女のパワーに圧倒される。
話に区切りがつくと、そのタイミングを見計らって、晴奈は切り出した。最近始まった、アルバイト先での新しい作業のこと、野村の異動のこと、礼を言いたいと思っていること。
「えーそうなの!? 知らない間に新たな展開。いいじゃんいいじゃん!」
何が楽しいのか、みずほのテンションは上がり調子だ。多少戸惑うが、興味がないよりいいので、乗っておく。
「じゃ、何かあげる!? チョコ? バレンタイン?」
すでにバレンタインは過ぎていることを、みずほは忘れているらしい。けれど食べ物というのは悪くない気がする。後に残るものより後腐れがない。とはいうものの、好みもわからないし、そもそもさほど親しくもない晴奈からもらっても迷惑ではないだろうか。
「別に迷惑でもないと思うけどねえ。よっぽど変な高価なものとかでない限り。ピチピチの女子大生からもらえばうれしいんじゃない?」
おじさんのようなみずほの思考に笑ってしまう。確かに同じ仕分け作業をしている年配の職員なら、晴奈が少しおすそ分けしたお菓子を妙に喜んでくれた。若い野村には縁のない感覚だろう。
結局どっちつかずのまま別の話題に移り、この件は晴奈の宿題になった。




