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 初の残業での仕事は、事務所以外の倉庫での作業だった。

 事務所に隣接したそこでは、主に中年の男性が作業をしていた。彼らは大きな荷物を次々に運び出している。その中に、野村の姿もあった。繁忙期のため、通常は行わない作業も手伝っているようだ。上のみ作業着に替えている。普段はスーツ姿のため、今はだいぶ印象が違う。

 晴奈が倉庫におそるおそる入っていくと、野村と大和が彼女に気付いた。大和が手を挙げて合図をしてくる。

「三井さん、こっちこっち!」

 呼ばれてそちらに向かうと、野村も大和と晴奈の方へ来た。

「慣れない仕事で申し訳ないけど、大和君と一緒に、こっちの荷物の仕分けを手伝ってもらえる?」

 野村が手で示した場所には、十センチから十五センチほどの小型の荷物と、A4サイズほどの冊子小包が積まれていた。数は五十個はあるようだ。

 主に大和の指示に従って、晴奈は荷物をコードごとに仕分けしてラックに入れていく。大抵は軽いものだが、時々見た目は小さくてもずっしり重い荷物もあり、油断がならない。コードを間違えないよう気をつけながら作業をする。荷物が処理できた頃には、じんわりと汗をかいていた。

「よっし、終わりー! 三井さん細いのに結構力あるねー。コードも良く見てるし」

 大和が腕を伸ばしながらそう言った。思いがけずほめられ、晴奈は驚く。

「いやでも、重そうなのは大和君がやってくれてたから…」

 照れもあって少々素っ気なくそう返した。

 仕分け終わった荷物は大和が倉庫の別の場所へ運んでいく。あの荷物を仕分けしたのだと思うと、心地よい達成感があった。

「お疲れ。ありがとう」

 背後から声をかけられ、晴奈はびくりと肩を震わせた。これはいつぞやと同じパターンである。振り向くと、予想通りの人物がいた。

「反応がすげえ…」

 すでに笑っている野村が言った。晴奈はそれを、困るとも呆れるとも形容しがたい表情で眺めた。

 笑い含みで野村は、こっちの仕事はどう、と聞いてきた。

 晴奈はあさっての方を向きながら、しばし考える。初めての作業にしては、良くできた気がする。体を動かすので、無心で集中できるのは自分にとっては良かったように思う。そういう内容のことを、ぽつりぽつりと野村に伝えた。

「じゃ、時々は手伝ってもらってもいいかな。他の事務員さんも、たまにやってたりするから」

 その申し出は悪くないと思った。やっている間は、電話を気にしなくて良いのも大きい。

 晴奈が頷くと、じゃあ支店長にも言っとくから、と野村が言った。

「さて、今日は終わり。帰っていいよ。残業届、出していって」

 野村はそう言い残し、倉庫の奥へ去っていった。

 彼の背中を見送りながら、先程までの沈んだ気持ちを忘れていた自分に気付く。今は笑うことができる。次回の仕事が少し楽しみに思えてくる晴奈だった。

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