第25話 王室特使の介入
武装解除された五百の兵士たちが、ノイラート郷の広場に整列させられていた。
彼らに配られたのは、縄ではなく、皮肉にもレティシアの指示で炊き出された、湯気の立つ温かいカブのスープと清潔な水だった。
「う……うまい……」
喉を潤し、飢えを満たした兵士たちは、自分たちを皆殺しにするどころか手厚く手当てする「死人の村」の住人たちに、ただただ恐縮し、頭を下げていた。
その時、谷の入り口の跳ね橋を、白旗を掲げた新たな一隊が渡ってきた。
私兵部隊ではない。
王室の直属の紋章である「双頭の鷲」の白銀旗を掲げた、近衛騎兵の中隊だった。
先頭に立つのは、紺碧の豪奢な礼装に身を包んだ、まだ二十代半ばの精悍な青年——第三王子配下の筆頭監察官、ユリアン伯爵だった。
「……何という光景だ」
ユリアン伯爵は馬を降り、広場を見渡して息を呑んだ。
武装解除された五百の軍勢と、彼らにスープを配る住人たち。そして、中央の石段の上で、堂々と書類を抱えて立つレティシア。
「貴方が、レティシア・ファレル監察官ですね」
ユリアン伯爵が歩み寄り、胸に手を当てて一礼した。
「王室最高監査院より特命を受け、貴族院兵站補給委員会の違法軍事行動の制止、ならびに貴方の保護のために参上いたしました」
捕縛されていたバルカス将軍が、ユリアン伯爵の姿を見るなり叫んだ。
「伯爵閣下! 助けてください! この谷の反逆者どもが、我々を罠に嵌め——」
「黙りなさい、バルカス」
レティシアの冷徹な声が、将軍の言葉を遮った。
レティシアはユリアン伯爵に向き直り、手にしていた分厚い牛革の台帳を一冊、差し出した。
「ユリアン特使。お待ちしておりました。——これより、主計局長バルツァー男爵、ならびにベルンハルト侯爵による、十件に及ぶ国家反逆罪および背任行為の最終監査報告を申し上げます」




