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 昼下がりのうららかな日差しの中、僕は一歩一歩、お墓へと続く坂を上っていた。


 ぽつぽつと道端の桜が花を付けている。田舎の桜はソメイヨシノと違って地味だが品があって嫌いではなかった。


 僕は今日、高校を卒業した。


 結論は変わらなかった。しなくてはならないことを繰り返し、生きるために生きる。そんな毎日に、僕はほとほとうんざりしていた。


 だから、惰性で見ていたテレビを消すように。疲れたマグロが泳ぐのをやめるように。仲間外れにされた少年が一人で先に家に帰るように。僕は生きることをやめることにした。


 生きる希望も目的も理由も動機も、僕には決定的に足りていなかったのだと思う。


 僕とこの世界を繋ぐものはもう何もありはしなくて、どうせ繰り返しの毎日ならショートカットしても構わないだろう。


 これ以上生き恥をさらさぬうちに。これ以上償うことのできない罪を重ねずに済むように、僕は死ぬことにした。


 でも、トータルで見れば、そんなにひどい人生でもなかったと思う。幸せだった時間があったから、いまが不幸だと思えて。


 この胸に空いた穴は、そこに何かがあったという証明で。出会えたからこそ、別れがあって。


 たしかに僕は救われなかったし、悲しみに終わりはないけれど、それでも、生まれてきてよかったって、そう言える人生だった。


 きっと姉さんも、許してくれるだろう。こんな僕なりに、今日まで頑張って生きてきたんだから、「もういいよ」って言ってくれるはずだ。


 卒業式のあと、僕はまっすぐに姉さんのお墓へと向かった。安らかに生涯を終えることができる場所は、あそこしか考えられなかった。


 卒業証書をお供えして、形だけ手を合わせる。墓石にもたれかかるようにして座り、ポケットから錠剤を取り出した。


 睡眠薬がたらふく僕の胃袋に落ちていく。


 すぐに世界がぐるんと一回転するような感覚が僕を襲った。


 どこまでも安らかな静寂だけが、僕を優しく包み込んでいった。





                           終わり



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