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幻門戦記  作者: 畑山
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第七話、商店誘致と秋の夜


 俺は結局、能力値アップの巻物を使って、魅力を1上げることにした。もちろん、22が23に上がったところで何がどうなるということはないだろう。魅力は地位や領地などが増えると、勝手に上がっていくものだし、戦闘では殆ど役に立たないので、それほど重要なステータスではない。一方の知力は、魅力に比べて上げにくい。経験やアイテム、装備品で上げることはできるが、その手段は限られている。戦闘においても、かなり重要なステータスで、計略の成功率や計略を防ぐ率に影響するため、序盤から終盤まで、ないと困るステータスだ。同じ1でも、価値が違う。

 それがわかったうえで、魅力を上げた。

 なんだか冷たいのだ。別に嫌われているわけではない。なにか嫌われるようなこともしていない、むしろ気を使って生きているぐらいだ。それなのに、どこにいっても、視線が冷たいような気がする。

 もちろん、気のせいかもしれない。そう信じたい。でも、魅力22だしな、と、ふと頭によぎってしまう。

 もっと魅力が高ければ、愛されキャラとはいかなくとも、温かい目で、見てもらえるんじゃないかと思うと、我慢できず、魅力を上げてしまったのだ。


 悪所からの収入はそれなりの額になり、使える資金が増えた。

 俺は、道沿いに商店街を作ることにした。

 幻門戦記の内政には、物流という概念があり、物の流れが悪いところに、商業施設を作っても、それが効率よく機能しない。

 道沿いの土地をすべて、商業施設で埋め尽くし、それ以外を道から離れた場所に置くのが、幻門戦記における内政の基本だ。悪所には、道が悪くてもみんな勝手に行く。

「農地はよろしいのでしょうか」

 じいが心配げな表情で言った。米の備蓄が減ってきていることを心配しているのだろう。もうすぐ秋だが、収穫はそれほど見込めない。

「ああ、米は買えばいい」

 相場にもよるが、序盤は米は育てるより買ったほうが効率がいい。中盤以降になると、戦で米が沢山必要になるので、そちらを重視したほうがいいが、今は、カネだ。序盤効率よく内政を進めるためには、とにかくカネが必要だ。

 商店を作ると言っても、ゲームのように簡単にはいかない。

 金を払って人を雇い、道沿いにある草だらけの空き地を、更地にして、店を出したがっている商人を呼び込む。張り紙を出し、見知った商人に話を聞き、誰かいないか探したが、道の近くとはいえ、人のいない田舎道だ。なかなか手を上げてくれる人はいなかった。

 そこで、道と反対側に、兵舎を作ることにした。

 兵舎があると、兵の募兵人数が増える、そういう施設である。兵舎を建設することによって、そこに住む兵を客として見込める。そういって、商人に話を持っていったところ、店を出してもいいという人間が何人か集まった。希望者一人一人の話を聞き、条件をまとめ、大工を雇い、商店を作っていく。なかなか進まない。だが、悪い気はしなかった。

 一ヶ月ほどすると、兵舎が完成した。商人の募集と商店の建設を進めながら、募兵も行うことにした。

 番所が再建され、民忠もある程度回復してる。秋の収穫時期になると募兵できないので、その前に一度、おこなっておきたかった。

 各村に兵の募集を命ずる。

 32人集まった。募兵人数は、その地域の人口と募兵した武将の魅力、兵舎の有無が影響するが、正確な計算式は知らない。3000人規模の集落なので、32人は妥当な人数である。元いた兵の数が100人なので、132人になる。

 募兵する兵は、秋の刈りいれ時期などは、一時的に休暇を認める場合もあるが、基本的に常備兵である。


 秋が過ぎ、夕暮れが早くなっていった。電気のない、この世界では、夜はひどくつまらなかった。

 行灯があるが、明かりがあったところで見るものもない。

「悪所に行きたがる理由がわかるな」

 寝床で寝転びながらつぶやいた。

 悪所には何度か言ったことがある。酒と女にギャンブル、夜の退屈な時間を忘れさせてくれるものが揃っていた。

 暗い、田舎なのに、そこだけが明るい。道も悪く、近くの沼地の所為か湿度も高く、昼間は、山の陰に隠れて日もろくに当たらない。さして豪勢な建物ではない。長屋をいくつか繋いでいるだけで、飲み屋、女郎部屋、賭場、奥へ行くほどカネが搾り取られていく。すぐ近くに金貸しまで完備している。

 だが、いいところだ。

 元香具師の元締めだった男、伝助という小太りの男で、いくと、かならず歓待してくれる。

 寺の和尚の紹介で、行き場のないものを預かって仕事を与えている男がいると聞いたので、悪所の運営を任せてみた。出会った頃はもっと痩せて目つきが悪かったが、いまでは肉がついて良い着物を着ている。 

 若様のおかげでわしら幸せです。と、嘘か本当かわからぬが、そう言ってくれる。

 悪い気はしない。

「また行きたいものだが」

 若が出入りするところではございません。と、じいに怒られるのだ。

 

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