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幻門戦記  作者: 畑山
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第五話、ダンジョンへ行こう


 半年ほど経つと、寺の再建と番所の再建が行われ、悪所ができた。悪所の管理は、香具師の元締めだった男に任せた。

 ゲームの感覚を知る俺からしたら、ずいぶん遅いが、これは、おそらく、俺の知力が低いことが原因であろう。あとは家臣がじいと下男の喜助しかいないこともある。知力の高い家臣がいれば、もっと分業してたくさんの作業が早くできるのだが、今のところその伝手はない。試しに、じいに聞いてみたところ。

「今のところ、見どころのある人物はおりません」

 と返ってきた。

 これは、人物の探索を行おうとした際、家臣が止める時に言う言葉だ。まぁ、どのみち魅力が22では、探索したところで、まず誰も引っかかってこないだろう。

 当面は、じいと喜助と三人でやるしかない。

 半年の間、情勢にそれほどの変化はなかった。

 相変わらず、風見家は分家との内乱に明け暮れている。大串家はその内乱に首を突っ込み、何度か戦を仕掛けているが、風見家の武将、多野甚兵衛が支城を使って大串家の軍勢を退けている。

 北の十文字家は、今のところ動きはないが、募兵を進めているようで、本庄家を攻めようとしているのか、別のところを攻めようとしているのか、よくわからなかった。叔父の本庄筑山のことを、それとなく探ってはいるが、探る手段も乏しく、今のところ、十文字家と内通をしているのかさっぱりわからなかった。

 戦はいたるところで起こっているようだが、あいにく、本庄家次男の耳にはなかなか入ってこなかった。せいぜい近隣の情報だけだ。幻門戦記のシステムが使えれば、マップを開き、情勢を見れば、敵の国力から同盟関係まで、知りたいことがすべてわかるのに、そう思ってしまう。

 というわけで、ダンジョンに行くことにした。

 和風なのに、ダンジョン、という言い方はどうだろうと思わなくはないが、システムとかメニューとかも外来語を使っているし、そもそもマウスとかドラッグとかゲームの説明の際に使っているから、わかりやすいからいいだろうという制作側の考え方なのかもしれない。

 寺と番所の再建に、悪所の建設にと手元の資金を使い果たしてしまった。いずれ悪所からの収入が入ってくるが、それまでは、なにもできない。

 そこで、ダンジョンである。

 各国に一つダンジョンがあるという設定で、一階から九十九回まで存在する。一部に例外があるが、どの国のダンジョンも同じような作りで、いわゆるローグライク系のダンジョンになっており、入るたびに内部の構造が変わる。途中で死んでも謎の力で地上に戻され、五階ごとに脱出ポイントがあり、脱出ポイントから地上に出た場合、それまで得たカネと一部のアイテムなどは手元に残るが、途中で死んで地上に戻された場合、手に入れたアイテムやカネなどは得られない。

 なぜこんな物があるのかというと、昔読んだ開発者インタビューによると、武将プレイでは、やることがない状況に陥りやすいので、ダンジョンを作った。と書かれていた。

 今の俺の状況である。

 ダンジョンに入ることができるのは、三名のみだ。俺と、じいこと新田惣右衛門と下男の喜助で入ろうとしたが。

「いや、とんでもない。あっしは、武芸なんてからきしできませんで、とんだ足手まといになりますよ。勘弁してください」

 と断られた。

 俺も武芸はからきしだめだぞ。と説得しようとしたが。

「家のもので、使える人間を見つけて連れていきましょう」

 と、じいが言った。

「そうか、じゃあ、誰か一人誘ってみるか」

 別に九十九階を目指そうというわけでもないのだ。ダンジョンというのは、やることがない序盤はいいが、やることが増えていく中盤以降は別にいく必要性はない。報酬が美味しいのは、せいぜい二十階程度、それ以降は、他のことをやったほうが効率が良い。ダンジョンに深く潜ることを目的とするなら別だが、そこまでやり込むことはないのだ。低階層なら、下男の喜助でも、武力11の俺でも全く問題ない。


 ということで、あと一人、誰かを誘うかというと。

「ダンジョンですか。別に、いいですよ」

 本庄佐門は、俺が誘うと、渋々という感じでついてきた。本庄佐門は、俺のいとこで、叔父の本庄筑山の息子である。確か、同い年ぐらいだったと思う。本庄佐門を誘ったのは、ダンジョンのついでに、本庄筑山の動向を知りたかったからだ。


 ダンジョンには馬で来た。

 人里離れた山中にある。下男の喜助に馬を預け、俺達三人はダンジョンの中に入った。

 ダンジョンの中に持っていける武器は決まっている。刀、槍、弓、杖、この四つのうちのひとつだけだ。俺は弓を選び、じいは槍、いとこの本庄佐門は刀を選んだ。

 何故か明るいダンジョンの道を真っすぐ進んだ。壁面や床、天井の岩肌は均一で、一応現実的に見えるが、岩の板を貼り付けたようにも見えた。

 ダンジョン内では、特技や戦術など幻門戦記の戦略シミュレーションゲームの要素が活用されている。 

 ダンジョンにもぐれる三人という数も、軍の指揮官と副将二人と同じである。ただ特技や戦術に関しては、若干仕様が違っている。

 例えば、俺の特技である讒言は、悪口を言って敵の忠誠心を落としたりする特技なのだが、ダンジョン内では、敵に与える状態異常がでる確率が上がる。信頼は、味方全体の会心の一撃が出やすくなり、雲隠れは、敵が俺を攻撃する確率が減る。

 ダンジョン内でも外でも俺の特技は割と地味だが、他の武将との組み合わせ次第によっては化ける。例えば、乱射や乱斬りなど、手数が多くなる特技をもつ武将を入れれば、讒言で敵に状態異常を与える確率を増やし、信頼で会心を出すという、かなり強力な攻撃手段になる。

 特技の組み合わせによって、普段あまり役に立たない武将が、ダンジョン内では急に強くなるケースが有る。

 じいに特技について聞いてみたが。

「わしは、槍が一番得意ですな、あと馬も、弓もそこそこ、法術の方はからっきしだめですな」

 と答えた。

 兵科の話ではなく、特技の話だと聞いたが、どうも伝わらなかった。

 メニューを開けない、この世界では、情報から武将の能力を見ることはできない。この世界の人間は特技についての認識がないのかもしれない。



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