第三話、現状確認
翌日、屋敷の中は静かだった。
多くのものが昨日の酒の所為で、また寝ているのだろう。
丸文はいつものように起きて、朝餉を食った。
玄米と、漬け物と味噌汁だった。
玄米は、ぱさついていて固いがよく噛んで食べれば、甘みが出てきた。漬け物は塩味が強かった。味噌汁に関しては普通にうまかった。
普段なら、食事の後、じいが来て、鍛錬やら学問などやらされるが、酒を飲み過ぎてまだ寝ているのだろう。
俺は寝転がり、今の状況に関して考えることにした。
本庄家の領地、三笠は、元は山間部の貧しい領地だった。父である本庄伊平の努力によって、それなりに豊かな領地になった。
本庄伊平は、武力は低く、知力は六十前後と、あまりぱっとしない、といっても俺よりはずっと高いが、農政関係の特技がそろっており、貧しい領地を開墾し、豊かな領地に変えた。
豊かになった本庄家の領地を周辺国が黙って見ているはずもなく、北の十文字家、南の大串家に狙われる羽目になった。国境で何度か小競り合いになっているが、長男の本庄太一郎の槍働きもあり、退けることができた。その後、本庄家は、西の大国、風見家と婚姻関係を結び何とか身を守っている。
「問題はその後だ」
その頼りの風見家に内紛が起こり、内乱状態になっている。風見家の分家が謀反を起こしたのだ。その裏にいるのが、南の大串家だ。大串家は、分家の風見長治郎に近づき、謀反を促した。風見家当主、風見宮宿は、皇族の血筋で、身分を傘にきたいけ好かない奴らしく、評判は良くない。その評判の良くない男の元に、側室として丸文の姉が入っている。茶会で分家を馬鹿にしたこともあったりで、宮宿は、謀反を起こされた。そのため、風見家は、左端に位置する分家勢力と、その他ほとんどを占める本家勢力に分かれている。
風見宮宿は風見家滅亡後もしぶとく生き残り、シナリオの最後まで生き延びていた。確か、魅力が低いが知力と統率力が高い人物だったはずだ。
大串家は、風見家の内乱に首を突っ込み領地を広げ、北の十文字家は、内乱と大串家の切り取りで、風見家は援軍を送れないだろうと、本庄家を攻め、叔父の本庄筑山の裏切りもあり、本庄家は、滅亡した。第二章のシナリオだと風見家は領地を減らし、大串家は領地を増やし、本庄家は滅亡し十文字家の領土になっている。
つまり、このままゲームの歴史通りなら、本庄家は滅ぶことになる。
とはいえ、歴史シミュレーションゲームは、シナリオ通りにまず動かない。家のイベントであれば、それなりの条件が揃えば起こりやすいが、国をまたがったシナリオとなると、プレイヤーが意図的にやらない限りなかなか起きにくい。
風見家と分家の争いがおこっていて、大串家がそこに便乗して、風見家の領土をおびやかしていることは間違いないが、まだ十文字家が本庄家に攻めてくる事態になっていない。
十文字家が攻めてくるのが、いつ頃だったのかというと。
「さすがに覚えていない」
いくら、はまっていたゲームといっても、架空の歴史シミュレーションゲームだし、話の流れは覚えていてもテストに出るわけでもないわけだし年号までは覚えていない。確かシナリオ1は1500年前後という設定だった記憶があるが、シミュレーションゲームをやる際に、年号なんて気にしながらやったことはない。そもそも、歴史シュミレーションゲームでは、幻門戦記における歴史的な史実が起こるとは限らないのだ。十文字家が他の国に攻められる可能性もあるし、本庄家が募兵で兵を増やせば、攻めるのをやめる可能性もある。
「情報が欲しいな、あっ」
跳ね起きた。
メニュー画面で見られるんじゃないか。年号から国力、味方の能力値も、メニュー画面を見ればわかる。
「どうやって出すんだ」
辺りを見渡しメニューボタンを探したが、どこにもなかった。通常なら画面の上の方にボタンがあって、メニューから情報へ移行できるのだが、肝心のメニューボタンがない。普通の人間の視覚だ。
手を空中に泳がせるように動かしながらボタンを探したが何もなかった。
「そもそも、カーソルがないな」
メニューを操作するには、マウスカーソルでボタンを押すか、キーボードのエスケープボタンを押さなければいけない。それがない。メニュー画面がなければ、様々な行動や情報をボタン一つで行うことができない。
「マウスカーソルがなかったら、戦闘するときの指揮とかどうするんだろう。声とか、旗で部隊を指揮するのかなぁ」
メニューもマウスカーソルもなければ、戦争時俯瞰して部隊を指揮するということもできないということだ。
「これじゃあ、プレイヤーのメリットがほとんどない」
俺は頭を抱えた。




