第二話、本庄家
「顔を上げよ。丸文」
指先、板敷きの床が見えた。顔を上げると、父、本庄伊平が笑みを浮かべていた。確か四十二才だったはずだ。日焼けのあとか、頬のあたりが少し赤い。
「父上」
記憶が浮き上がってきた。本庄家の次男、本庄丸文、十三歳、元服の儀式の最中である。
「良い面構えじゃ」
「はっ」
本庄家か。俺は内心の動揺を隠した。本庄家といえば、弱小城主だ。隣にあったらプレイヤーが人材と土地目的で真っ先に攻めるような領地だ。
本庄家がまだあるということは、シナリオ1か。
そういえば、シナリオの選択も、所属する家の選択もなかった。通常、城主の子からプレイする場合、所属する家を選ぶ、それがなかった。
「これで本庄家は、ますます盤石ですな」
じいが涙を浮かべながら笑った。
いや、本庄家はシナリオ2では消えています。
「ちょいとばかり鍛え方がたりんがな」
兄の本庄太一郎が言った。確か、武力が70前後ある武将だ。
「それは、まぁ」
丸文は頭をかいた。いかんせん武力11だ。どうあがいたところで武力70前後ある兄、太一郎には勝てない。
「なに、これから強くなればいいことだ」
叔父の本庄築山が言った。細身の男だ。
「はい、精進します」
本庄筑山か。確か、あれこいつ、裏切るんじゃなかったっけ。
「うん? どうした」
本庄筑山は首をかしげた。
「いえ、なにも」
しまった。ついつい見つめてしまった。
それから別室で、宴会が開かれた。
家臣と親戚、十数人が集まって酒と食事を楽しんだ。母や奉公人が料理と酒を運んでくる。皆楽しそうに酒を飲み、歌をうたい、踊っている。
ゲームでは、本庄家の武将は、本庄伊平と本庄太一郎、本庄筑山の三人しか表示されていなかったが、よくよく考えてみると、三人だけで領地を運営することは不可能だ。
酒は少しだけ飲んだ。「あまり呑むなよ」と父上に言われたので勧められても断った。濁り酒だった。アルコール分は少なく、舌触りは悪かった。
だが、味があるのだ。




