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3-3-1 挽回の策略

帝国と闇の勢力との戦いは、長期化するにつれ、次第に均衡を失い始めていた。帝国軍の犠牲者は日ごとに増え、前線へ送られる兵士たちの多くは帰還することなく戦場に消えていく。

それでも闇の眷属は尽きることなく現れ、まるで地の底から湧き上がるかのように戦列へ加わり続けた。討ち果たしてもなお数は減らず、押し寄せる波に圧されるように、帝国軍の戦線はわずかずつ後退を余儀なくされていた。


その日の戦いもまた、帝国軍にとって苛烈なものとなった。最前線では数百名の兵士が闇の眷属の猛攻を受け止めていたが、時間の経過とともに戦況は次第に傾き、もはや持ちこたえることすら難しくなっていく。


全身に血を浴びた魔法剣士部隊の隊長、カール・ユグドラシルもまた、戦場の混沌の中で倒れていた。彼のヴァルクはすでに全壊し、それでもなお自ら剣を振るい続け、最後まで仲間の退路を守ろうとしていた。だが最期には数体の巨大な獣に囲まれ、もはや逃れる術を失う。

カールはついに力尽き、帝国の大地にその身を沈めた。


「カールが……戦死しただと?」


特殊部隊を指揮するナディア・ヴァルシオンは、司令部でその報告を受け、わずかに表情を曇らせた。

カールは彼女の隊とは別の部隊に属していたが、いくつかの任務で行動を共にしたことがあり、互いの顔を知る間柄ではあった。特別に親しいわけでも、深く語り合ったわけでもない。


それでも、名を知る戦友が戦場で命を落としたという事実は、胸の奥に鈍く重いものを残した。戦況の悪化は理解していたはずだったが、彼の死を聞いた瞬間、それは抽象的な報告ではなく、逃れようのない現実として彼女の前に突きつけられた。


総司令官ヴォルフガング・アイゼンバルトもまた、厳しい面持ちで前線からの報告を聞いていた。鋼の意志を持つ男であり、普段は感情を表に出すことなどほとんどない。だが、いま司令部に集められた報告の重さは、彼の沈黙の奥にさえ深い影を落としていた。


「総司令、戦線は限界に近づいています。このままでは……」


部下が言いかけた言葉を、ヴォルフガングは静かに制した。


「このままでは戦線が崩壊する。犠牲は日を追うごとに増えている。これ以上、無駄な死を積み重ねるわけにはいかん」


そう言い残すと、彼は立ち上がった。その表情には、押し殺した苛立ちがわずかに滲んでいる。

皇帝ルキウスに、この戦況を直接伝えなければならない。皇帝が判断を改めぬ限り、戦線維持はもはや限界に近づいていた。


広大な宮殿の奥、玉座の間では、帝国皇帝ルキウス・ヴァルトラが静かに前方を見据えていた。威風を備えた姿勢のまま玉座に座り、帝国の命運を背負う者としての威厳を保っている。

しかし、その瞳には、いま伝えられようとしている戦況への動揺はほとんど見られなかった。


「皇帝陛下。前線からの報告です。戦況は極めて厳しく、犠牲者も日に日に増えております。このままでは、戦線の維持は困難になるでしょう」


ヴォルフガングは一礼し、簡潔に状況を告げた。皇帝に忠義を尽くす軍人として、事実を包み隠さず伝えることこそが彼の責務である。


「犠牲が増え続けていると? それならば、兵を補充すればよいではないか」


ルキウスは淡々と答えた。その声音には温度がなく、戦場で命を落としていく兵士たちの姿を想像する気配もない。

彼にとって兵とは、帝国を動かすための戦力であり、消耗することを前提とした資源に過ぎなかった。


ヴォルフガングの表情がわずかに曇る。

兵士はただの駒ではない。彼らは命を賭して戦い、帝国を支えている。戦力が尽きれば、やがて守るべき帝国そのものが崩れることは明白だった。


そのとき、玉座の間の片隅から、一人の男がゆっくりと歩み出た。

帝国の魔法最高顧問、ロキスヴェイン。長年にわたりルキウスに仕えてきた男である。冷たい目元と、どこか神秘を帯びた微笑を浮かべながら、彼は皇帝の前で静かに一礼した。


「陛下、実は……私には一つ、腹案がございます」


その声には、抑えた調子の奥に底知れぬ自信が滲んでいた。

ロキスヴェインはヴォルフガングへ一瞥を送り、再び皇帝へ向き直る。


「単に兵士を補充するのではなく──彼らを、より強力な戦力へと変える方法です。これが実現すれば、戦況を覆すことも不可能ではありますまい」


その言葉に、ルキウスの瞳がわずかに光を帯びた

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