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3-1-16 次の冒険

「──その後、ヴァイ、レイラ、カリナを漂流しているところから救い出して、そのままフェンリスとの戦いに直行したってわけ」


ミーナはそう締めくくると、小さく息を吐き、どこか誇らしげに微笑んだ。


部屋に集まっていた全員が、彼女の波乱に満ちた回想に静かに耳を傾けていたが、沈黙を最初に破ったのはヴァイだった。


「ねえ、ちょっと待って」


腕を組み、じとりとした視線を向ける。


「私たちの活躍、ほとんど出てこなかった気がするんだけど?」


その不満に、レイラとカリナもすかさず頷いた。


「そうだよね。私たち、あれだけ大変だったのに」


「嵐の中で必死に耐えて、流されてからもずっと助けを待ってたんだよ?」


三人の抗議はもっともだが、どこか軽口めいた調子も混じっている。

ミーナは一瞬だけ、三人の顔を順に見やった。怪我の跡も、疲れの名残も、ちゃんと覚えている。


それでも彼女は肩をすくめ、悪びれもせずに笑った。


「悪かったわね。でもあのときは私も精一杯だったのよ。アルカンティスと会って、それどころじゃなかったんだから」


言葉とは裏腹に、その声音はどこか柔らかい。


三人は顔を見合わせる。


まだ言い足りない気持ちはある。

けれど、ミーナがわざと軽く言い切ったことも、わかっていた。


本当に何も思っていないなら、あんなふうには笑わない。


ヴァイが肩を竦めると、レイラとカリナもそれに倣い、抗議はそこで終わった。


そのやり取りを静かに聞いていたサーラが、ふと思い出したように口を開く。


「ドラゴンでも、動けなくなることがあるのね」


「そうよ」


ミーナは背負った剣の柄を軽く指先で弾きながら続ける。


「巨大な体のままマグマに閉じ込められたとき、エネルギーが内部で滞ってしまったらしいの。力はあるのに、流れが詰まって動けなくなるって感じ」


サーラは小さく首を傾げる。


「どういうこと?」


「私も詳しくはわかってないんだけど……」


ミーナは腕を組み、アルカンティスの説明を思い出すように言葉を探す。


「大量の魔力を同じ系統で一気に重ね合わせると、余剰エネルギーが逃げ場をなくして、かえって動きが鈍るんだって。強すぎる力が、逆に足枷になるみたいな話よ」


「なるほど……」


サーラの瞳がわずかに光る。


「一時メモリーがリークしてる状態ってことかな?」


聞き慣れない単語に、ミーナは瞬きを繰り返す。


「メモリー?何それ?」


サーラは楽しげに微笑み、身振りを交えながら説明する。


「論理魔法の基礎理論なんだけど、大量の処理を同時に走らせると、余計な一時保存魔力が漏れ出して効率が落ちることがあるの。それと似てるのかもしれない」


ミーナは完全には理解していない様子ながらも、「まぁ、そんな感じかもね」と曖昧に頷いた。


サーラはそのまま顎に手を当て、視線を宙にさまよわせる。


「もしその原理が応用できたら……」


「え、何を考えてるの?」


興味を抑えきれない様子でシェリーが身を乗り出すと、サーラはいたずらっぽく目を細めた。


「秘密。でも、ちょっと面白いことができそうな気がするの」


その表情は、新しい理論や仕組みを思いついたとき特有の、抑えきれない高揚を隠しきれていなかった。


場の空気が少しずつ未来へ向かい始めたのを感じ取り、ミーナは手を打つようにして声を上げる。


「それじゃ、伝説の竜探しの計画を立てましょう。まずはお互いの得意分野を活かして、役割を整理する必要があるわね」


その言葉に、全員の表情が引き締まる。


冗談交じりの回想は終わり、視線は自然と同じ方向へと向けられた。

これから先に待つものが何であれ、彼女たちはすでに一歩を踏み出している。


もっとも、具体的な段取りとなれば、誰が音頭を取るかは自ずと決まってくる。

その空気を、サーラはすでに感じ取っていた。


そのとき、窓の外の空をアルカンティスの赤い影が横切った──まるで「さあ、次の冒険だ」と告げる合図のように。

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