3-1-13 無人島探索
ミーナは、誰もいない静寂に包まれた無人島の中心を目指し、ひとり進んでいた。
波音すら遠く、森は深く息を潜めている。
ここには長い年月、人の手が入った痕跡など一切なかった。
木々は繁茂し、蔓は複雑に絡み合い、足元には幾層にも積もった落ち葉が沈黙のように敷き詰められている。
踏みしめるたび、乾いた音が小さく響いた。
もしこの島に本当に何かが隠されているのだとしたら──
自分が最初の発見者になる。
その思いが、胸の奥にわずかな熱を灯す。
やがて、島の中心に聳え立つ巨大な火山が姿を現した。
黒々とした山体は空を裂くようにそびえ、その周囲の空気だけが、どこか揺らいでいる。
熱を帯びた風が頬をかすめる。
岩肌には赤熱した割れ目が走り、地下でうごめく溶岩の気配が伝わってくる。
大地そのものが、低く呼吸しているかのようだった。
「これは……確かに火山島だわ」
ミーナは剣を握りしめ、自分の決断が誤りではなかったことを確かめるように呟く。
だが、立っているだけで汗が滲むこの熱気の中、歓迎されているとは思えなかった。
火山の麓を慎重に探っていると、木々の奥に不自然な影が見えた。
近づくと、それは洞窟だった。
自然に穿たれたにしては、入口が異様に大きい。
まるで巨人か、それ以上の何かが出入りするために口を開けたかのように。
内部は外とは別世界のようにひんやりとしている。
壁面には爪痕めいた痕跡がかすかに残り、天井は高く、音がゆっくりと反響する。
足音が一つ鳴るたび、静寂が押し返してくる。
やがて、洞窟の中心へ辿り着いた。
ミーナは息を止める。
岩場の上に、ひとつの影。
「……あれが……伝説のドラゴン?」
そこには、まどろむように身を横たえた竜がいた。
赤黒い鱗は鈍い光を反射し、滑らかでありながら、刃を思わせる硬質さを帯びている。
確かに、竜だ。
「やっと……見つけたんだ」
胸の鼓動が高鳴る。
追い求めてきた伝説が、いま目の前にある。
だが──
その姿は、伝承で語られる圧倒的な巨体とは違っていた。
せいぜい人が四人乗れるほどの大きさ。
思わず、ミーナは首を傾げる。
「……あなたが、伝説の竜ですか?」
問いかけた瞬間。
竜の片目が、ゆっくりと開いた。
黄金の瞳が、闇の奥からこちらを射抜く。
ギロリ、と。
その視線が絡みついた瞬間、冷たい汗が背を伝った。小型とはいえ、深い威圧感がある。
心臓が強く打つ。
指先がわずかに震える。
「ま、待って……!」
低い唸り声が洞窟を震わせる。
それは単なる威嚇ではない。
悠久の時を生きてきた存在の誇りと、侵入者を値踏みする冷たい理性が宿っている。
(まずい……下手に刺激しないほうがいい)
足が、わずかに強張る。
だが、ここで退くわけにはいかない。
仲間を巻き込み、命を賭けて辿り着いた場所だ。いま背を向ければ、すべてが無意味になる。
ミーナは恐怖を飲み込み、まっすぐに竜を見据える。
「お願い……話を聞いて」
声は震えていない。
「あなたに会うために、私はここまで来たの」
竜は答えない。
ただ、じっと見つめる。
沈黙が、重く降りる。
鼓動を整えながら、ミーナは次の言葉を探した。
(何とかしなきゃ……このままじゃ)
張り詰めた空気の中で、彼女は伝説の竜との対話へ踏み出す一歩を模索していた。
ブクマでサーラたちの応援をお願いします!




