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1681:みんなで王都に移動しよう。

 男子禁制会議が終わった次の日の朝。


 ご飯を済ませたあと、超大型竜の方の背に乗ってアストライアー侯爵領からアルバトロス王国王都まで向かおうと、領都の壁の外に皆さまが集まっている。アストライアー侯爵領の教会での宣誓式と夜会に参加していた方ほとんどは、そのまま王都に移動することになっていた

 不参加なのはグイーさまとテラさまとアストライアー侯爵領内の面々と爵位の低い方たちになるだろう。グイーさまはお酒をたくさん抱えて昨日の夜に神さまの島へと戻っているし、テラさまも一緒に戻って二人の時間を楽しむそうである。王都で執り行われるジークと私の式の様子は神さまの島から眺めているとのことである。シェクトさまとヴォイドさまとプライムさまも一緒に戻るのかと思いきや、屋敷で一泊していた。


 「シェクトさま、昨日はあまりお構いできず申し訳ありませんでした」


 『ナイは忙しい。我のことより己のことを優先。興味が湧いて残っているだけ。今日もよろしく』


 私はシェクトさまの前で膝を突けば、ぽよんと七色に光るスライムボディーが揺れた。昨日はあまりお構いできなかったので申し訳ない限りである。ただ王都で挙げる式でも予定が詰まっていて、シェクトさまと話す機会は限られるだろう。

 ヴォイドさまとプライムさまもせっかく参加して頂いているというのに喋る機会があまりなかった。今日は昨日のようなことにならないように気を付けよう。とはいえ忙しいのは事実故に私は保険を掛けておく。


 「はい。今日もあまりお構いできませんが、よろしくお願いします」


 『ん』


 私はシェクトさまの返事を聞いて、地面から立ち上がりヴォイドさまとプライムさまを見上げる。


 「ヴォイドさまとプライムさまもよろしくお願いします。暇かもしれませんが」


 「母上の晴れ舞台です。我らは式の光景を目に焼き付けて星に戻ることとしましょう」


 「ええ。お母さまの美しいお姿が見れるのですから。暇なことなどありません」

 

 私の言葉に二柱さまは小さく微笑んでいる。同じ顔をしているというのに、雰囲気が似ても似つかないのは何故だろう。背が高いからか、凄く落ち着いている雰囲気がヒシヒシと醸し出されているのだ。

 私にも二柱さまの落ち着きを少し分けて欲しい。そうすればトラブルに巻き込まれる機会が少なくなるのではないだろうか。そんなことを考えていると、ヴォイドさまとプライムさまが苦笑いを浮かべている。


 「母上は母上で私は私です」


 「お母さまは私たちにはない魅力をたくさん持っておられます。それを大事になさってください」


 私の考えを読み取ったのか、それとも顔に出ていたのかヴォイドさまとプライムさまが落ち着いた声色で答えてくれる。たしかに持っている雰囲気が違うのだから、外見は似ていても中身は別モノなのだろう。

 人間と神さまだから、似ているようでいて全く別のものだろう。私はシェクトさまたちの下を離れて、お世話になるディアンさまとベリルさまと赤竜さまと青竜さまと緑竜さまに挨拶をすれば出発の準備が整うのだった。私は集まっている皆さまの前に立ち、隣にはジーク、後ろにはリン、更に後ろには五頭の超大型竜の方がいる中で声を上げる。


 「では、皆さま。それぞれ竜のお方の背に乗ってください。十分にお気をつけて」


 私が声を上げれば、集まった皆さまが超大型竜の方の下を目指して歩いている。凄く嬉しそうな表情をした方と微妙な表情で向かう方たちに分かれていた。空を飛ぶ機会はほとんどないだろうから、慣れていない方にとっては苦行となるかもしれない。

 とはいえ馬車で一週間ちょい掛かる道程を数時間で移動できるのだから飛竜便さまさまである。ロゼさんの転移を使うことも考えていたけれど、集まっている人たちを転移させることが可能と分かれば大問題になりそうだから止めておいた。皆さまの様子を伺いながら、なんとかなりそうかなと私は息を吐く。すると後ろに控えているリンが小さく笑っている。どうしたのかと私が見上げれば、彼女は目を細めた。


 「ナイが真っ先に落ちそう」


 「リン?」


 いや、うん。飛んでいる最中に落ちることはないはずだ。落ちると危ないからと毎回、竜の方の背の上の真ん中に配置されるのだから。失礼だなと私が彼女の名前を即口にするれば更に目を細める。


 「大丈夫。必ず助けるから」


 有難い言葉だけれど落ちてしまう前提なのはどうしてだろう。そんなにキョロキョロしているかなと私が肩を落とせば、地面を移動してきたシェクトさまが私の前で止まった。


 『落ちたらどうなる?』


 「人間だと高い空から落ちれば、木っ端微塵になってしまいますね」


 ぽよんと揺れるシェクトさまの下に屈んだ私は空から落ちれば人間はどうなるかを伝える。まあ、お察しの通りぺしゃっとなって死ぬのがオチだろう。そういえば飛行系の魔術は存在していないのだろうか。

 王都に久しぶりに向かうし、副団長さまと猫背さんも宣誓式には参加なされているから、顔を会わせる機会があれば聞いてみよう。でも空を飛ぶという発想や術式が現状はない状況で副団長さまと猫背さんに伝えれば執念で空を飛ぶ術式を開発しそうだ。でも空を飛ぶには身体能力も必要だろうから酷いことにはならないはず。そんなことを考えていれば、ヴォイドさまとプライムさまが珍妙な表情を浮かべている。


 「母上が粉微塵に……」


 「力を使い再生させれば可能ですが……お母さまのそのような姿は見たくありません」


 空から落ちれば粉微塵になってしまうだろうが、私が落ちる予定はない。落ちたとしても助けてくれる方がいるだろうと、今は私の肩の上に乗っているクロに視線を向けた。


 『落ちちゃ駄目だよ。ナイの身体を支えて飛ぶのは大変だから』


 クロが渋い顔をして答えてくれる。苦言を呈しているものの、落ちれば助けてくれるようだ。有難いと私は片眉を上げながら、足元にいるシェクトさまに視線を向ける。


 「シェクトさまが落ちるようなことはないと思いますが、仮に落ちるとどうなりますか?」


 『なにもならない。平気』


 興味本位で聞いてみたけれど、やはりシェクトさまは高い位置から落ちてしまっても全く問題ないようだ。ロゼさんだとどうなるかという疑問も同時に湧いてくるけれど、ロゼさんなら落ちたとしても転移で戻ってこられる。


 「シェクトさまのお身体が散り散りになることはないんですね。神さまは凄いなあ」


 はへーと私が感心していると、シェクトさまの七色に光る身体が白一色になる。するとヴォイドさまとプライムさまが小さく首を傾げた。


 「父上が照れておられます」


 「お父さまが珍しい」


 そう二柱さまが口にしているものの私は照れるようなことは言っていない。何故シェクトさまは白一色で光っているのだろうと首を傾げていれば、ほとんどの方は竜の背に乗って待機している。他の方を待たせてはいけないと私はシェクトさまたちに声を掛ける。


 「最後になりましたね。乗りましょうか」


 声を掛けたあと私は側にいるジークとリンと一緒にディアンさまの背の上に乗らせていただく。失礼しますと声を掛ければ『遠慮はいらない』と言葉が返ってくる。隣にいるベリルさまにも聞こえていたようで『相変わらず律儀ですね』と苦笑いを浮かべていた。

 よく私とディアンさまの声が届いたなと感心していると『案外耳も良いのですよ』とベリルさまが答えてくれる。では内緒話を側でしない方が良いですねと冗談吹かせば、仲間外れにしないでくださいとベリルさまが困り顔になっている。シェクトさまとヴォイドさまとプライムさまもすすすとディアンさまの背に乗って私の近くに腰掛けた。地上に残っている方がいないか確認をすれば、竜の姿のディアンさまが顔をぐっと持ち上げた。

 

 『では、行こうか。皆、しっかりとなにかに捕まっていてくれ』


 そう告げたディアンさまとベリルさまと赤竜さんと青竜さんと緑竜さんたちの翼がばさりと開く。そして魔力の流れを感じ取れば、巨大な竜の体躯がゆっくりと浮上していた。

 ばさりと大きな翼が動けば、高度はみるみるうちに上がっていく。しばらく待っていると侯爵領領都の全景が見えるようになっていた。すると屋敷の方からジャドさんと雌グリフォンさん四頭にイルとイヴと四頭の仔たちとエルとジョセとルカとジアとノールの姿が見えて、こちらを目指して飛んでくる。


 天馬さまの森からも天馬さまたち二十数頭と仔たちが飛んできていた。おばあは飛べないため先に一緒にきており、ベリルさまの背の上できゃっきゃとはしゃいでいる。迷惑を掛けることはないだろうし、迷惑を掛けるようならベリルさまが注意してくれる予定だ。それにベリルさまの背の上にはアリアさまとロザリンデさまがいるから、クロエおばあの遊び相手になってくれるはず。

 

 ディアンさまとベリルさまを先頭にして、後ろには赤竜さんと青竜さんと緑竜さんの三頭が横に並んで飛び、その後ろにはエルとジョセ一家の五頭が飛んで、更にその後ろには天馬さま方が三十頭近く。

 後ろを守るようにジャドさんとイルとイブが並んで飛び、そこから少し後ろに卵から孵った仔たち四頭が飛んでいる。最後方に雌グリフォンさん四頭が飛んでいて、地上から見た光景はどんなものになっているのだろう。そしてどこからともなく中型の竜のお方や小型の竜の方たちが飛んできて、私たちが飛んでいる外周を囲っていた。


 今日は空の上ではなく、地上で見てみたかったなあと目を細めていると近くに座っているシェクトさまがぷるんと揺れている。どうしたのだろうと私が視線を向ければ、シェクトさまのスライムボディーがまた揺れた。


 『不思議な感じ』


 「何故ですか?」


 『空の上は初めて』


 シェクトさまはシェクトさまの星では地上で過ごすことが多く、空の上には向かったことがないそうである。飛ぼうと思えば飛べるし、空中で留まりたいなら留まれるとのこと。

 他力で飛んでいることが不思議な感じがして、こういうのも悪くはないと感じたそうである。しかしシェクトさまが空を飛ぶ姿を全く想像できない。なんならヴォイドさまとプライムさまの背中に羽を生やして飛んでいる姿の方が思い描きやすいというか。シェクトさまから羽が生えればエンゼルスライムとでも名付けられるのだろうか……まあ、変なことを考えるのは止めようと私が前を向くと、ディアンさまの背に乗っている面子が声を上げる。


 「代表殿たちは斯様に速く飛べるのか!」


 「風が心地よい!」


 フソウのナガノブさまとヤーバン王国のアリーさまが声を上げてはしゃいでいる。その隣でボルドー男爵さまが微笑ましそうに見守っていた。なんだかお三方はいつの間にか意気投合しているなあと私は片眉を上げた。そして同乗していたアルティアさまがハンカチを握りしめている。


 「我が娘に悔し涙を何度流したことか……ようやく……ようやく巨大竜のお方の背に乗れましたわっ!!」


 「……そのようなことで、娘と張り合わなくても」


 セシリアさまがアルティアさまの姿を見て深い溜息を吐いていた。短い時間だけれどお喋りタイムになるかなあと私は肩を竦め、王都までの道程を楽しむのだった。

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― 新着の感想 ―
男子禁制会議が終わった次の日の朝(フキまった)密貿易 革命会議 反男子勢力をぶち上げ…… ウーノ様 アリー様 皇女方 大聖女様もすんごい面子だし(^_^)v(=^..^=)ミャー 領主教会の宣誓式と夜…
2026/08/19 20:08 あかマント
更新お疲れ様です。 領地での式が終わり、一夜明けて五頭の巨大竜の方々の背に乗って王都へと大移動 (^^♪ リンちゃん相変わらずの真顔の冗談w でもまあ仮にナイちゃんが落ちたとしても、助けに向かうメン…
陸路だと数日間必要なところを巨大竜5機編隊で数時間のフライト……正に旅客機と自動車道走破の違いで文明開化ですねw(^^;) セレスティアさまは自分が散々乗せてもらったのを棚に上げて大編隊での歴史的機…
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