↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1673/1703

1673:改めて。

 アストライアー侯爵の婚姻式当日。


 ――ひえ……。


 という声が喉から出そうになった。アストライアー侯爵の婚姻式が彼女の領地で執り行われるため、私は聖王国の教皇としてアルバトロス王国のアストライアー侯爵領にある教会へと赴いている。

 西大陸のみならず、東と北大陸からも各国の王と代表者が集まっていた。明日はアルバトロス王国王都で披露式を行う予定となり、馬車では五日掛かる道程を飛竜便で一時間程度に短縮し、主要な面子は移動するそうな。


 各国間の移動は転移陣を使用するというのに、まさか飛竜便を使うことになろうとは。しかもアストライアー侯爵が創星神さまの使者を務めた際に騎乗していた巨大な赤と青と緑の竜の方の背に乗って移動するとか。


 そんな贅沢なことがあって良いのだろうかと目を細めていれば、聖王国で大聖女を務めるウルスラが緊張した眼差しで私を見上げている。私たちはアストライアー侯爵の婚姻を見届けるべく、教会の二階にある賓客席に腰掛けていた。階下の正面には祭壇が見えており、もう少し経てば両人が登場するだろう。信徒席には多くの来賓者が席に就いて、いまかいまかと始まりを待っている。


 「どうしたかね、大聖女ウルスラ」


 「えっと……あの……今、私たちが置かれている状況は良いのでしょうか」


 私の声を聞いたウルスラは緊張した眼差しから困惑の表情に変わった。真面目な彼女のことだ。二階にある貴賓席にいらっしゃる創星神さまと創星神さまの奥方さまに、他の星の創星神さま――スライムっぽい――にその創星神さまの下位神さまがいらっしゃる。

 その上に北と東の女神さまもいらっしゃる。西と南の女神さまは信徒席で見届けるそうでこの場にはいない。西と南の女神さままでいらっしゃれば、私は卒倒していたに違いない。


 「良いもなにも……アストライアー侯爵の計らいだ。耐えるしかない」


 「……侯爵閣下は私たちのことを考えてくださった末の決定だったのですね」


 私の答えにウルスラが困惑しつつも、聖王国の未来のためと分かり次第に表情がしっかりとしたものに変わる。一緒に控えている聖王国の者たちは顔を青く染めていた。


 それはそうだ。創星神さまと創星神さまの奥方さまの圧は優しいものだが、他の星の創星神さまと二柱の下位神さまから発せられる圧は凄く迫力があるというか。並の者では即気絶していたのではないだろうか。

 私は一応、それなりの魔力量持ちであるし、ウルスラも聖痕持ちとして魔力量はかなり多い者となる。あと聖女アリサも多いため、ウルスラの横に控えている彼女は割と涼しい顔をしている。あとで聞いた話になるが、南の島で会っている方たちで、圧は感じるものの怖さはないそうである。どうしてそんな胆力を持っているのかと言いたくなるが、今は黙って耐えるしかない。

 

 私とウルスラの一段上がった場所にある椅子に腰かけた神さま方も婚姻式が始まることを楽しみにしているのだから。

 

 「まさかナイが婚姻するとはなあ!」


 「そうね。でもまあ、ジークフリードはずっとナイのことが好きだったから、結ばれて良かったじゃないの」


 創星神さまと創星神さまの奥方さまがカラカラと笑いながら声を上げている。後ろに振り向きたくとも、失礼にあたるかもしれないと顔を動かせない。ウルスラも皆も同様で、顔を動かさないまま耳を傾けているようである。


 『ナイ。次代を生み出すために?』


 不思議な声色を持っているのは他の星の創星神さまである。アストライアー侯爵曰く、創星神さまの中でも古株であり、他の神たちから一目置かれているとか。そんな方がどうしてこの場にいるのだと叫びたくなるが、アストライアー侯爵のことだからいつの間にか出会って仲良くなっていたのだろう。本当に荒唐無稽な縁を繋ぐものだと顔が引き攣りそうになる。

 

 他の星の創星神さまの疑問に答えたのは創星神さまの奥方と創星神さまである。


 「そそ。人間は長く生きられないでしょ。だから己の血を残すために新たな命を育むのよ」


 「それは植物でも同じであろうな。受粉して花を咲かせ、実から種を作る」


 ふふと笑っているであろう二柱さまに他の星の創星神さまが不思議そうな雰囲気を醸し出している。


 『ナイの命も短い?』


 「そりゃあ、儂らと比べればとんでもなく短いものだな」


 「そうね。でも彼女は次代を残すわ。寂しい気持ちはあるけれど、私たちは連綿と続く命を見守っていかなきゃいけないのよ」


 「儚く美しいものだろう?」


 『よく分からない……ただ、ナイがいないのは寂しいと。グイーとテ―がいないのも寂しい』


 他の星の創星神さまが我が星の創星神であるグイーさまと創星神さまの奥方さまの名を呼んでいるようだが、私には聞き取れなかった。ウルスラはどうだったのか後で聞いてみよう。今は聞ける状態ではないと、私は耳を後ろに傾けたまま黙って階下を見つめる。


 「お? お前さん、また新たな感情が芽生えたのではないか!」


 「凄い成長ぶりねえ。頑なに何兆年も変わろうとしなかったのに」


 はははと笑う創星神さまと創星神さまの奥方さまは他の星の創星神さまのお身体を叩いているようである。ぼよんという不可思議な音が耳に届くのだが不快感はなかった。待ち時間の間に後ろに腰掛けている創星神さま方の話をウルスラと一緒に聞いていれば、ウルスラの逆隣りに座すアルバトロス王が顔を引き攣らせて私を見た。


 「教皇がいてくれて良かった」


 「私もアルバトロス王が隣にいてくれてよかった」


 本当にアルバトロス王も二階の貴賓席にいてくれて良かった。私だけでは耐えられなかったと視線を元へ戻せば、アルバトロス王と私の言葉にウルスラが苦笑いを浮かべている。彼女の気持ちは大聖女フィーネが一緒にいてくれればというところだろうか。フィーネは階下にある信徒席の一番前に腰掛けている。隣にはベナンター子爵が腰を下ろしており、なにやら彼女と話し込んでいる。どんな会話をしているのか気になるものの、今は私のうしろのことである。


 「母上はまだでしょうか?」


 「ええ。早くお姿を見たいのですが」


 アストライアー侯爵にとても似ている他の星の創星神さまの下位神さまが声を上げた。北と東の女神さまのお声を耳にしたことがあるため、聞き分けることができた。

 二柱の下位神さまはアストライアー侯爵に瓜二つである。違うところは背の高さであろう。男神さまは黒髪黒目、女神さまは白髪銀目という容姿であった。どうしてアストライアー侯爵にとても似ているのであろうか。この謎をアルバトロス王は知っているのだろうか。このことについても後で聞いてみなければと私は頭の中に書き留めておく。


 『ヴ―イ―、プ――ム、慌てない。そのうち会える』


 下位神さまの名も妨害が施されているのか私の耳には届かなかった。他の星の創星神さまや下位神さまの名を知っても恐れ多いだけである。そもそも創星神さまの名を知っているだけで十分であろう。うんうんと己を納得させるために頷いていると階下に動きがあった。

 

 「あら、神父がお出ましになられましたわ」


 「そろそろ始まりましょう」


 北と東の女神さまの声に目を顰めると、祭壇横にある扉からアストライアー侯爵領教会所属の神父とカルヴァイン枢機卿が出てくるのだった。


 ◇


 もう直ぐアストライアー侯爵領の教会でジークと私の婚姻式が執り行われる。


 少し前、グイーさまとテラさまとナターリエさまとエーリカさまがやってきて、しばらくするとシェクトさまとヴォイドさまとプライムさまもやってきた。今はアストライアー侯爵領にある教会の二階貴賓席で待機して貰っていた。


 グイーさまとテラさまとナターリエさまとエーリカさまからはそれぞれお祝いの言葉を頂き、シェクトさまとヴォイドさまとプライムさまには花束を頂いている。

 グイーさまの星に影響しない品種だそうで、シェクトさまの星で咲いている花だということ。シェクトさまの因果が強いのか、七色に光っているのはご愛敬だろう。時間と共に枯れてしまうそうだが、果たしていつまで保つだろうか。


 ジークと私は祭壇横の扉の前で神父さまとカルヴァイン枢機卿さまが来賓者の方に説法をしている姿を見ているところだ。話が終われば私たちが入場してカルヴァイン枢機卿さまが祝詞を挙げてくれる予定となっている。

 クロとヴァナルと雪さんと夜さんと華さんと毛玉ちゃんたちはヴァルトルーデさまとジルケさまと一緒に信徒席で見守ってくれるそうである。ユーリは私のベールを持つ役を担い、彼女の後ろにはアンファンが控えている。リンも護衛として一緒に入場するから、まあ……少し普通の段取りとは違うかもしれない。問題ないという許可は出ているため、文句があれば苦情は教会へ出して欲しいところである。


 「もう直ぐだね、ジーク」


 「ああ」


 私は隣にいるジークを見上げた。白の燕尾服に赤い髪を整髪剤で撫で付けた姿はいつもの雰囲気と違っていた。イケメンが更にイケメンになっているから羨ましい限りだ。

 私は……どうだろう。着慣れないドレスを纏って浮いているような気もする。飾り立ててくれた侍女の方たちは『お綺麗です』『似合っておられますよ』と口にしてくれていたが、リップサービスのような気がしてならない。リンも似合っていると褒めてくれたけれど、身内贔屓が入っているから当てにならない気もする。まあ、婚姻式中の我慢だと私は再度ジークに声を掛けた。


 「緊張してる?」


 「どうだろうな。しているかもしれない」


 片眉を上げたジークは緊張しているようである。貧民街で過ごしていた頃が緊張のピークで、普段は泰然としている彼だから少し驚きである。


 「そっか。ジークでも緊張することあるんだね」


 「当然だ。ナイは?」


 私が小さく笑えばジークは肩を竦めた。


 「緊張するより、今の格好で人前に出ないといけないことが恥ずかしい」


 聖女の衣装より派手だし、真っ白である。ベールも被っているため前は見え難い。


 「似合ってるから、大丈夫だ」


 今度は片眉を上げて笑うジークに私は燕尾服の裾を軽く引っ張った。


 「あ、そうだ。ジーク、少し……いや、大分屈んで欲しいなあ」


 「ん」


 私の声にジークはなにも疑わないまま、口に出した通りに随分と膝を折って視線を合わせてくれる。私は燕尾服の裾を持ったままジークの耳元へと顔を近付けた。


 ――好きです。


 多分、私の声は周りの人に聞こえなかったはずである。ジークは私の声にばっと顔を上げて目を見開いていた。


 「!」


 完全に不意打ちだったようで、ジークはなんとも言えない表情になっている。私は私できちんと気持ちを伝えようと覚悟を決めていたから落ち着いていられた。


 「ずっと言えなかったから。伝えるなら今が一番良いかなって」


 風邪を引いて告白まがいのことはしていたけれど、ジークに好きだと正面切って伝えられていなかった。覚悟を決めていたけれど、顔をだんだんと赤くしているジークを見ているとこちらまで気恥しくなってくる。するとジークの両腕がすっと伸びてきて私の腰に回る。


 「お、折れる!」


 ジークは遠慮しているだろうけれど、割と力が入っていた。


 「すまん」


 私の抗議の声にはっとしたジークは腕を放して謝ってくれれば、入場の時間だと係の人がにやけながら告げるのだった。

【お知らせ】コミカライズ版 魔力量歴代最強な~第十話がコミックシーモアさまで配信開始しております! 他サイトさまでは第九話の配信となります。ご興味あればよろしくお願いしますー!┏○))ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

魔力量歴代最強な転生聖女さま

魔力量歴代最強な転生聖女さま
コミカライズ版
2026.04.10~各電子書籍サイト 第一話~第五話
配信開始!


▼コミックシーモア(一話分先行)作品ページ▼
▼ニコニコ漫画はこちら▼
▼集英社公式ページはこちら▼


画像クリックで集英社公式ページへ移動します

▼電子書籍

【Amazon Kindle】

▼紙書籍 購入はこちら

【Amazon】
【honto】
【楽天ブックス】
【紀伊国屋書店】
【7net】
【e-hon】

▼店舗特典

【書泉・芳林堂書店限定SSペーパー】
【書泉限定 有償特典アクリルコースター】



lc7h32o7kcojeg3slvws3t59ko8_15jb_jk_rs_hgf4.jpg

控えめ令嬢が婚約白紙を受けた次の日に
新たな婚約を結んだ話2
2025/10/14 発売


画像クリックで公式ページへ


【YouTubeショートPVはこちら】

▼購入リンク
【Amazon】
【楽天ブックス】
【紀伊国屋書店】
【7net】
【e-hon】
【駿河屋 限定ブロマイド】
【ゲーマーズ 特典ブロマイド】
【メロンブックス イラストカード】
― 新着の感想 ―
今言うことかな?誓いの口付けの時のが良さそうな気もするけど宣誓と被るから今で良いのかな。 教皇猊下はその下位神の事は多分聞かないほうがいいだろうな、神を産み出した人間がいると知ってしまうと教義とかに将…
教会内にてアルバトロス王国国王陛下と聖王国教皇猊下が耳ダンボで創星神様方の会話を チョッチ聴き取り難い部分は後で王妃様 ウルスラ様に聴いてみると ヴィー様 シェクト様の話題がナニやらミョ~ナ事に転がっ…
2026/08/12 00:24 あかマント
多分この世界で最も高貴な来賓を迎えた結婚式ですよねw >果たしていつまで保つだろうか そういう思考してるとナイの魔力がシェクトさまの星で咲いている花を、こっちに定着できるよう品種改良しそうな気もしま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。