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1601/1646

1601:今度こそ日常に。

 ヴォイドさまとプライムさまは地上に降り、シェクトさまの星の行く末を一緒に見届けるそうである。本来は一柱さまの誕生の予定であったが私の魔力を石に込めた際に分裂したため、同一存在といって良いそうだ。

 だから、ヴォイドさまとプライムさまは常に一緒に行動を取るとのこと。シェクトさまは神域で今まで通り過ごしながら、ヴォイドさまとプライムさまを見守るとか。もしかすると一兆年近く変化のなかったシェクトさまの星に変化が現れるかもしれないとも聞いている。シェクトさまの星がどんな場所かは分からないけれど、いつか知的生命体が誕生すれば良いなと願うばかりだ。時期がくればまたアストライアー侯爵邸に顔を見せにくると言い残していたけれど……果たしてどうなるか。


 シェクトさまとヴォイドさまとプライムさまが戻って直ぐのアストライアー侯爵領領主邸の東屋で、私たちは陽が沈む姿を見届けていた。


 「嵐が過ぎ去ったような気分かな」

  

 私がふうと息を吐けば、肩の上のクロが尻尾で背中をテシテシと叩く。


 『だねえ。七色の創星神さまの下位神さまは、本当にナイにそっくりだった』


 本当に私に似ており、ヴォイドさまが黒髪黒目で男性の見た目、プライムさまが白髪銀目の女性の見た目であった。二柱さまとも背が高く、スタイル抜群の神さまだ。

 顔面偏差値は私より格段にヴォイドさまとプライムさまが上である。私が成長すれば二柱さまのように、もっと顔の彫りが深くなるのだろうか。そうなれば良いのだが、プライムさまはばんきゅぼんではなく、すらりとした海外のモデルさんのような体型だった。もしかして成長したとしても私の胸には成長の余地はないのかもと不安になる。とはいえ背が伸びれば御の字だろう。妙なことを考えていると、ヴァルトルーデさまとジルケさまもはあと軽く息を吐く。


 「私たちより力が強い」


 「まあ、あの創星神が下位神を創造したんだ。そりゃ強いさ」


 どうやらヴォイドさまとプライムさまはヴァルトルーデさまとジルケさまより神力が強いようである。ジルケさまは競うわけではないからと、あまり気にしていないようだ。

 逆にヴァルトルーデさまはむっとした表情でなにか考え込んでいる。なにを考えているのか私はさっぱり分からないけれど、神さま的に競争心が湧いてしまったのだろうか。ヴァルトルーデさまが考え込み過ぎているようなら気に掛けなければと、末妹さまに私が視線を向けると『放っておけ』と言いたげに首を左右に振る。それならばと私はそっくり兄妹の方を見た。


 「妙なことになってごめんね、ジーク、リン」


 まさか私が神さまから『母上』と呼ばれる羽目になろうとは。経緯を考えればおかしくはないのかもしれないが、流石に未婚で子供を生んでもいないのに母と呼ばれるのは如何なものだろう。

 まあ、ユーリも私のことを今は『ナイねえ』と呼んでいるが、将来、私を『義母さん』と称するかもしれないが、今回の件とユーリについては別の話である。周囲の方が勘違いしないようにきちんと説明をしなければならないだろうと、私はジークとリンの言葉を待った。


 「神さま方が行ったことだからな。俺たちが口を挟めるはずがない」


 「だね。ナイに凄く似ていた。でも、似ているだけでナイじゃない」


 やはりジークとリンは状況を飲み込むことに対して凄く早いというか。既にヴォイドさまとプライムさまの存在を咀嚼しており、私とそっくりだったことは特に気にしていないようだ。

 似ているけれど、私は私と言ってくれたことに私はほっとしてしまう。シェクトさまは事前に私に似せることを教えてくれていたけれど、対面することになるとは全く思っていなかったため、少々心の準備ができていなかった。そっくり兄妹の言葉にありがとうと私がお礼を伝えると、考え込んでいたヴァルトルーデさまがリンの方を見ている。


 「ジークリンデが良いこと言った」


 「ナイはナイ。あの神さまはあの神さま。似ているだけで全然違う」


 ヴァルトルーデさまがリンに向かってへらりと笑い、リンはリンでドヤ顔を浮かべながら胸を張る。なにをしているんだと言いたくなるものの、ヴァルトルーデさまはすっきりとした表情になっている。私はジルケさまの方を見れば、末妹さまは肩を竦めて片眉を上げていた。とりあえず陽が暮れるから屋敷に戻って、執務室の皆さまに報告をしに行こうと私たちは戻って行くのだった。


 ――翌日。朝食後。


 シェクトさまとヴォイドさまとプライムさまがアストライアー侯爵領領主邸に訪ねてきたことを報告すると、アルバトロス王国上層部はドン引きしていた。ドン引きされても事実なので私は反応に困るのだが、また創星神さまが屋敷に訪れると露とも思っていなかったようである。

 創星神さままで入り浸るようにならないよね、という迂遠的な問い合わせに私は『多分』としか返事ができない。一応、連絡用の石を使ってしばしばシェクトさまとヴォイドさまとプライムさまと話す約束を果たしてはいるけれど。


 グイーさまはジークと私の婚姻式に顔を出す気満々らしい。フィーネさまとエーリヒさまが婚姻すれば、そちらも派手に登場するとか。ソフィーアさまとセレスティアさまの婚姻時にはグイーさまの名代として、ナターリエさまとエーリカさまを派遣すると仰っていた。なんだか凄いことになっているが止められないし、神さまが祝ってくれるなら有難いことだろう。一応、離婚しても怒らないでくださいねと伝えているから、最悪の場合は避けられるだろう。


 家宰さまの報告を受けながら、領地の今後について私たちはいつもの面子で話し合っていた。


 「禁忌の森の名称のままだと物騒だから新しい名前を考えて欲しいと、造成と開拓に司る者たちからご当主さまに提案が出さされていますねえ」


 家宰さまが片眉を上げながら苦笑いを浮かべていた。私が名前かあと考え込んでいると、セレスティアさまが小さく手を挙げた。私がどうぞと告げれば、セレスティアさまがにこりと笑い鉄扇を広げて口元を隠す。


 「ナイ。直接的に天馬の森では駄目でしょうか?」


 「竜のお方も暮らしているが、最初に住み着いたのは天馬さまだからな。私は良い名前だと思う」


 セレスティアさまの提案にソフィーアさまが同意したためか『あら、ソフィーアさんとこの手の話題で賛同を頂けるとは』『別に、全てに反対していないだろう。良いものは良い。それだけだ』と言葉を交わす。

 家宰さまも特に問題はなく、私次第と言いたそうだ。ということであれば『禁忌の森』から『天馬の森』に決めて良いだろう。ただエルとジョセたち天馬さま方にも相談してみようとなる。そして禁忌の森の側に建設中の町についての話題に変わった。


 「観光地化も視野に入れていますが、勝手に触れようとしたり、捕まえようとする人が出そうですからねえ。案内役を付けて森の中を移動するとかが精々かなあ」


 天馬さま方が森に住み着くようになり、見てみたいという人が増えているのは事実だ。実際に森に近づいている人も出ているようで、警戒中の警備部の方に追い払われたという事があった。

 天馬さま方を攫うような不届き者が現れれば、地獄の底まで追いかける用意はしている。ヴァナルと毛玉ちゃんたちに残った臭いを嗅いで貰い、移動ルートを見つけ出し、場所が特定できればロゼさんの転移で追いかける。


 距離があるなら飛竜便を手配するし、一緒に脅しを入れて貰うようにお願いするつもりだ。私も犯人を見つけ次第、魔力を全力で放出することを厭わないつもりである。

 そんなことを夜の駄弁りの時間に幼馴染に話してみれば、クレイグとサフィールは『犯人が可哀想だな。いや不届き者に命は必要ねえけどよ』『他の人にはできない手法だね』と呆れていた。ジークとリンは私がやりたいようにやれば良い派で、クロは『手加減はしようね』という言葉を残し、ヴァナル一家は『群れの仲間に手を出したなら容赦しない』という方針の様だ。


 天馬の森を観光地化するならば、やはり案内役の先導で森の中を移動する方式が無難だろうと、私はソフィーアさまとセレスティアさまを再度見る。


 「天馬さま方に手を出せば、竜のお方が出てくるだろう。大丈夫とは言い切れないが危険性は低いのでは?」


 「そんな無謀を犯す方が出るのでしょうか……いえ、しかし万一のこともあり得ます」


 完璧な対策を取ったとしても抜け穴はあるし、堂々と天馬さまを誘拐しようとする人が出てくる可能性はある。どうして無謀を働くかなと言いたいが、お金に目が眩んでしまうのだろう。

 

 「では次。種苗研究所ですが、研究者同士の諍いもなく実験は進んでいるようです。とはいえ目に見える成果が出せず、研究者たちは焦っているようですね」


 どうやら研究所の方たちは直ぐに結果がでることを求めてしまっているようだ。アストライアー侯爵家直轄の研究所だから、彼らのプレッシャーになってしまっているのかもしれない。

 とはいえ時間が掛かることは承知の上である。私が黄金の妖精さんに種を渡して、魔力がふんだんに込められた野菜から種を取り出しても良いけれど……それをするといつかは鈍詰まりそうである。

 だからきちんとした手法で、きちんとした種を得て、きちんと育てて収穫をし次の種を残しておく。そうしないといつかアストライアー侯爵領が廃れてしまいそうだし、いつか魔力量の少ない当主が誕生してもおかしくない。研究所については私の代で大きな成果は得られないことを覚悟している。だから。


 「直ぐに結果がでるような研究ではないですからね。急がなくて良い……とは資金提供者として言えませんが、倒れてしまうような研究は控えるようにと、お伝えください」


 「承知致しました」


 そんなこんなで執務を終えて昼食を摂る。そうしてユーリの部屋へと向かい、私はいつも通りに彼女の相手を務めていた。私が部屋に入るとユーリは『ナイおねえちゃん!』と言って、嬉しそうに私の下へと駆け寄った。乳母の方が『走らずとも』と苦言を呈したそうにしているが、私は問題にしていないため言い辛いようである。ユーリが両手を広げてこちらにきたので、私は脇の下に手を差し込んで抱き上げた。


 「ユーリは本当に成長が早いねえ。可愛いよお」


 すっぽりとユーリが私の腕の中に納まるけれど、そろそろはみ出してしまいそうである。クロは私がユーリを抱き上げたために、翼を広げて肩の上から飛んでいっている。


 『最初はあんなに小さかったのにねえ』


 クロがしみじみと声を上げ、私はユーリのほっぺに頬ずりをしてぷにぷに感を楽しみながら『可愛いねえ』と呟いた。


 「ユーリ、きゃわいい!」


 最近、ユーリはこうして自分で自分を褒め称えることがブームになっているようで、よく『きゃわいい!』と口にしてきゃっきゃしている。本当にいろいろあったけれど、彼女の成長はまだまだ私の楽しみだと、ユーリを高い高いする。


 「ぬ……腰が!」


 ユーリはきゃっきゃと喜ぶけれど、私の腰が悲鳴を上げそうになっていた。そろそろユーリを高い高いするには限界が近づいていると私はゆっくりと彼女を床へと下ろした。

 

 『だ、大丈夫、ナイ?』


 「ごめん、ごめん、大丈夫。ぎっくり腰にはなっていないから。でも、ユーリは随分と大きくなって、私がたかいたかいするのは止めた方が良さそう」


 クロが驚きながら私の顔を覗き込み、ユーリは床の玩具で遊び始める。私は自分の腰を手で叩きながら、ユーリの成長を改めて感じるのだった。

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― 新着の感想 ―
いつまでも抱き上げられるように筋トレしてもいいんですよ?騎士達のトレーニングの一つにしてもいいんだし。
更新お疲れ様です。 ヴォイド様とプライム様についての報告を受けたアルバトロス上層部の皆さん、きっと揃って胃を撫でたんじゃないかとww ヴォイド様とプライム様は人間風に言うなら、異性一卵性双生児という…
ユーリちゃんきゃわわ! アン◯ンマンチョコあげたい
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