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これからの予定


 シュシュちゃんの元お友達。言葉を選ばずに表現するならば、私達と敵対していた頃のシュシュちゃんの元取り巻きだ。シュシュちゃん本人と、その他の小僧──、いや、元お友達とは和解して友情を育んでいるけれど、そのルクなんとかとはそれきりだ。そいつの姉だか妹だかをアイドルになれるように導けと。


「私、そのルクなんとかって子と仲悪いんだけど……。いや、本人が望んでるならお手伝いするのは吝かではないんですけど、ご家族の許可は取れているんです? 次のライブの準備とかで今はあんまり時間も取れないですし」


 学園内でのライブは成功したけれど、上の年代の大人たちというのは、同年代の子たちに比べてやはり頭が固い。この世界では新しい表現方法の数々をどう認めさせていけば良いのか、まだ試行錯誤の段階だ。

 学園内のライブではなく、貴族の大人たちも対象にした商業ライブの成功。それが、今後のアイドル事業のスポンサー、エール公爵様から課せられているミッションである。


 でも、せっかく興味を持ってくれたのだ。家族の反対も無いと言うなら、出来る限りサポートしたい。この世界にはもともと『アイドル』なんて概念は無かったけれど、それを拡めようという私達の仲間になってくれるのなら、歓迎するに決まっている。


「ご両親は放任主義みたいよー。家の不利益にならないなら勝手にしなさいって。……ま、うちの放任主義とはちょっと違うみたいだけどね。子どもに興味が薄いって感じ」


「うちは娘に甘いが故のある程度は好きにしなさいってスタンスですからね。……と、なれば時間さえ作れたらどうにかなるか」



 考え出した私の横で、クレイスくんがそっと手を握ってくれる。


「俺達なら出来るだろう。俺も、ユリーシアも、ルルが傍に居るだけで普段の何倍も頑張れる」


「クレイスくん……」



 そんな風に言ってくれるのは、嬉しい。嬉しい。でも、時間以上の懸念がある。クレイスくんのコミュニケーション能力だ。仲良くなればとっても良い子だっていうのはすぐ分かるんだけれど、言葉足らずとトンチキな言動で、最初は私ともシュシュちゃんともちょっと揉めた。しかも、今回は歳下の女の子だ。変なことにならないと良いけれど。


「よし、決まりね。クレイス坊や、頼んだわよ。もし断られたらきみたちの交際も認めなーいヤダヤダってゴネようと思ってたから、やー、良かった良かった」


「ちょっと、お姉様っ」


 私の制止も聞かず、言いたいことだけ言ってお姉様は退室してしまった。


「……クレイスくん。あー、もう何かごめんねっ。メリンダお姉様の方はあんなに変じゃないんだけどなあ」


「ルル、俺は義姉上を変人だとは……」


 言葉を濁しているのは、私の方が変人だとかそういうことを言いたいのだろうか。別に好きでおもしれー女をやっているわけでもないが、前世の価値観に基づいて行動するとこちらの世界では変わったやつだと捉えられてしまうだけだ。


「まあ変人オブザイヤーは置いといて。認めないとかなんとか、お姉様にそんな権限ないのに。なんたって、公爵様とお父様が認めてくれているんですから」

「心配なんだろう。ルルが。俺はいずれ次姉殿にもきちんとご挨拶をして、ルルに相応しい人間であると認めていただくつもりだ」


 メリンダお姉様は他国へ嫁いでしまったから、いつ帰ってくるかもわからないけど。


「あのね、クレイスくん。十年間ずっと私のためにっていろんなことを頑張ってくれてたクレイスくんを認めないとか、勝手なことを言われたくないです」

「ルル。嬉しいが、この件で義姉上と喧嘩はするなよ。どこの馬の骨とも分からない男に、そう簡単に妹はやれないだろう」

「……公爵家のご子息が馬の骨を自認しないでください」


 この肩書で馬の骨なんて言ったら、他の男の子はなんて表現されてしまうのだろう。犬のフ……、いや、現世の私は可憐な侯爵令嬢。これ以上は思い浮かべてはいけない、絶対。


「今の俺は……、妹の部屋で節操なく手を出そうとしていた不届者に見えていても仕方がない」

「二人きりでお部屋でお話してきていいよー、ってお父様からのお許しをもらってます」


 だから、多少のいちゃいちゃくらいは大丈夫なはず。見られて気まずいのは変わらないけれど。


「私室で二人きりだからな。……他者からしたら、俺がルルの身体を暴こうとしていたと判断されることもある、かも、しれない」


「……あばっ、」


 変な声が出た。恋人たちがすることの最終地点だ。確かに甘い雰囲気だったけど、そんなことはしない。


「そんなつもりなかったでしょ?」

「当然だ。順序というものがある。この誓いを守れないくらいなら、舌を噛み切って自害する」


 覚悟の決まり方がおかしい。そんな理由で自害されるなんてごめん被りたいが、ツッコミを入れるだけの気力が残っていない。


「えっと、自害はしないでね。何があっても。……あの、それより小僧……何号か忘れたけど。先方の都合が良ければ明日の予定に組み込みます?」


 明日は、クレイスくんとクレイスくんのお姉様であるユリーシア様と、大事な約束がある。


「ルクゼだ。覚え……なくて良いな。あいつは覚えなくて良い。覚えなくて良いし、危険だから近付くなよ。ルクゼ侯爵家には俺から連絡を取っておく」


「? 殺意マシマシってこと? もう難癖付けられたりはないけど。えっと、じゃあ、連絡はお任せしますね。明日、楽しみにしてます」


「ああ。いや、殺意ではないんだが……、ルル、もう一度言うが、ルクゼには近付かないでくれ」


「いや、フォンスくんみたいに仲直りしたってこともなく、結局仲悪いままですし、お話することもないと思いますが……、分かりました、えっと、避けるようにします」


「良かった。ありがとう」


「お礼を言われるようなことでは……」


 それにしても、クレイスくんがこんなにはっきりと誰かに対して嫌悪を露わにするのも珍しい。和解前のシュシュちゃんには、嫌悪というよりは恐怖といった感じだったし。


 何かあったのかな、なんて思ったけれど、必要なら自分から話してくれるかなと、こちらから聞き出すことはしなかった。


 読んでくださってありがとうございます!

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