5-31 屍龍の息吹がもたらした圧倒的な敗北
既に戦闘は終結していたが、個人的に羅一星にはムカついていた俺っちは全身を泥状にしてベチャン、と荒れ果てた地面にへばりついた。
後見せ場も作りたいし。折角俺っちが主役なのに頼りになる仲間が強すぎて辛いよぉ。
「このまま帰ってもいいけど……その前に希典先生がちょっくら虐げられる側の痛みを教えてあげようかねぇ」
黒い泥は瞬く間に周囲に存在するありとあらゆるものを飲み込み巨大化していく。
軍用車両に廃墟の建物、木々に化学薬品――万物は屍龍の糧となり、異形の怪物を組み立てていく。
『なに、これ……』
喚き散らしていた羅一星も語るべき言葉を失い現実が受け入れられない様子だった。
それはきっと遠く離れた場所にいる彼女にも脅威であるとはっきりと認識できるほど巨大で悍ましかったからだろう。
スクラップを寄せ集めて作った九頭龍ならぬ屑龍は猛毒の息吹を口から吐き出し、その場に存在するだけで敵を腐らせ絶命させる。
全ての戦争は見苦しく醜悪なものだが、人類の業によって構築されたこの魔龍程戦争の醜さを説明するのに相応しい化け物はいないだろう。
「さぁてと」
屑龍はかき集めたスクラップを体内で合成し、有り合わせの素材で生体ミサイルを生成する。
これを戦場にぶっ放せば味方も巻き添えを食らってしまうが、ざっと見た感じゾンビくらいしかいないので問題ない。
このまま羅一星に撃つのもありだけど、どうぞ撃ってくださいと言わんばかりに兵器と兵士が集まっている拠点がある。
拠点内部には羅一星をヨイショしている政治家がメインで徴兵された奴もあまり多くない。取りあえずビビらせるためにもあそこに撃ってみるか。
「外道に相応しい最高に美味い毒を食わせてあげるよぉ。そぉら!」
背中から放たれた生体ミサイルは放物線を描いて拠点に墜落、爆風を巻き起こし一撃で建物を半壊させる。
「おー、いい感じだねぇ。面白い顔してやがるよ」
彼等はすぐに体勢を立て直そうとしたが、生体ミサイルが撒き散らした猛毒により兵士や政治家達は激しく痙攣し白目を剥いてのたうち回る。
世界を滅ぼさない程度に威力も抑えておいたし、あれなら大勢が生き残るだろう――自らの意志では動く事も死ぬ事も出来ない状態で。
この攻撃は爆発そのものよりも追加効果のほうが強力だ。
やろうと思えばもっとすんごいのを作れるけど、フツーに死の土地に変えちゃうからねぇ。
『あり得ない……認めない……こんなの……』
圧倒的な暴力による敗北は羅一星に現実に突きつける。
並々ならぬ執念で全てを手に入れたと思い込んでいた彼女はぽっと出の勢力によって兵力と支援者の大半を失ってしまった。
この敗北は自分がただ食われるだけの豚だったのだと羅一星に否が応でも理解させたはずだ。もしも俺っちがあいつの立場なら発狂していただろう。
『―――――ッッ!!』
なので膝から崩れ落ち、人間が聞き取る事が出来ない地球外の言語で奇声を上げてわき目もふらず荒れ狂うのも無理はない。
面白いしもうちょっと観察してもいいけど、見せ場も作れたからぶっちゃけもうどうでもいいし江九龍の所に戻ろうかねぇ。




