5-20 希典先生の鉄板宴会芸~荒木の一族に古来より伝わるブレイクダンス~
宴会場周辺は警備の人間が若干多かったけど幸いにしてドアの前で固まっていた。
このまま強行突破をしてもいいけど、ここは伝家の宝刀生首爆弾投げをしてみよう。
「さわやかまれっち先生だよ~」
「ん? ぎゃああ!?」
俺っちはレジェンドプロボウラーを彷彿とさせる綺麗なフォームで生首爆弾を転がし、敵の群れの中心で爆発させ見事なストライクを決め、ついでにドアも破壊した。
「お邪魔しまーす」
「なんだ!?」
宴会場に顔を出すとそこには酒をしこたま飲んで弱体化していた連合軍の将校がうじゃうじゃいた。
ホステスの様な民間人もいるし毒ガスで一網打尽にするのはよろしくない。最低限のルールは護って巻き添えにしない様に立ち回ろう。
「そーらよ!」
「ぐぇえ!?」
テーブルを足場に跳躍した俺っちは士官の頭部を両足で挟み、ぐにんと捩じって首をボキンと折る。
「クソが、ごお!?」
そのままアイスピックを掴んで飛び跳ね、その辺にいた奴の口の中にツッコんで延髄をグサッと。ちょっぴりエグイけど比較的地味な殺し方だ。
でもちまちま戦うのはちょっと面倒くさい。どうせなら派手に戦いたいしアレをやってみるか。
「はぁい! 荒木の一族に古来より伝わるブレイクダンスを披露しま~す!」
俺っちはテーブルに置かれた酒を一気飲みした後、宴会芸をするノリで叫びお立ち台の上に飛び乗り両手両足を機関銃に変化させた。
「そぉいそぉいそぉいそぉいそぉいッ!」
「あああああ!?」
バババババッ!
回転しながら放たれる四丁の機関銃は全方位に攻撃をし、過激にも程があるパフォーマンスで連合軍の将校たちは一人残らず肉塊に変わってしまった。
「や、やだ……」
「怖がらせてごめんねぇ」
もちろんホステスは殺さない様にして。戦争で人の死には慣れているはずだけど、流石にこの凄惨な光景は怖かったらしい。
「ととっ。まだ残ってたね」
念のため生き残りがいないかマップ機能で確認するとすぐ近くの部屋に将校が隠れていたので、鉄球パンチで壁を壊してショートカットをした。
「うわあああ!?」
将校はエビぞり状態で両手両足を拘束されており、部屋には鞭や蝋燭があったのでこの部屋はいわゆるそういう事をするための部屋だったのだろう。
「お楽しみ中ですがガサ入れをしまーす。んべええ」
「ま、待てッ!?」
部屋には丁度浴槽もあったので俺っちは硫酸ゲロを吐いて程々に満たした後、男を担ぎ上げて湯船にぽい、っと放り投げた。
「俺っち流ソーププレイをご堪能くださ~い」
「あああ熱ぅうう痛ぁいあ!?」
それはSMプレイとしては少しばかり過激だ。絶妙な加減で浸っているのですぐには死ねないだろう。
「終わったよ~」
「あ、ああ……」
連合軍の士官を全滅させた後、俺っちは宴会場に戻ってホステスの様子を確認する。
ちゃんと配慮はしたけど怪我とかはしていないし皆大丈夫みたいだ。
「ひ、ひぃいい! 殺さないで!」
「きゃあ!?」
「ん」
ついでにジャーナリストの福元知弘も殺さないでおいたけれど、ホステスを押しのけて隠れようとする様にやっぱり判断を間違えたのではないかと思ってしまった。
まあいい、こいつは生かさず殺さずの状態で上手く泳がせておこう。後々面白い事になりそうだし。
それよりも今はホステスの方だ。
「で? お前さん方はこれからどうするの? 殺すつもりはないけど」
「私達を売るつもりなの」
「うんにゃ。後は好きにして。ここで働くなり実家に帰るなり」
何かしらのトラウマがあるホステスは冷静に確認したけれど、そう答えると彼女は退廃的な笑みを浮かべてしまう。
「……あなたは面倒を見てくれないのね。なら少し前みたいに二束三文のお金で兵隊さん相手に身体を売るだけよ。私を売り飛ばした実家には帰れないからね」
どうやら俺っちのした事は彼女達にとっては余計なお世話だったらしい。
金払いのいい連合軍の士官は他に生きる術がない人間にとっては最高の上客だっただろう。
「ごめんねぇ。もしよかったら良さげな移住先はあるけど」
「そこではクスリは手に入るのかしら。普通に働くつもりがない性病持ちの薬物中毒者を税金で養ってくれるのかしら」
「多分駄目だね」
「ならこっちのほうがいいわ。私はこういう生き方しか知らないから。幸せの形は人それぞれなのよ」
「そうかい」
おそらくここから出た彼女達はまた同じ事を繰り返すので助けた事にはならないだろう。
こうした悲劇は戦争が終わらない限り永遠に続くのだ。
殺されない事を理解した女性たちは士官の懐から財布を抜き取り、黙々と生きるための金を集め始めた。
札束の王冠と腰蓑を身にまとって大はしゃぎしていた士官は綺麗に金目の物を奪われ、時計やネクタイまでも奪われてただのブリーフ一丁のオッサンの死骸に変わってしまう。
「なんていうか、ままならないねぇ」
分かってはいたけれど多少なりとも悲しいものはある。
もしも俺っちが正義のヒーローなら、山田や彼女達も救えたのだろうか。
(さてと、ジジイと茶飲み話でもしてくるかな)
だけどその辺は割り切るしかないだろう。
俺っちはすっぱり諦め連合軍の拠点を後にした。
会うのは久しぶりだけど、あのマイペースな好々爺は元気にしているかな。




