5-19 クエスト:羅鋼兵団の拠点からの脱出
偵察に出ていた眼球ドローンを自分の眼孔に戻し、俺っちはゴキゴキと身体を動かして軽くストレッチをした。
隠れながら戦って脱出するステルスミッションをしてもいいけど、そういうのがしたければ身体を泥に変えて適当な隙間に潜り込めばいいだけだ。
後はあの手のステージは普通に面倒くさい。ここはやはり思う存分暴れるほうが楽しいだろう。
俺っちはそう考え口の中に手を突っ込み小刀を取り出した。
マップ機能もあるしいくらでも無双出来るけどそれでは少しばかり品がない。
ヌルゲーになるから縛りプレイで初期装備は小刀だけにしておくか。
連合軍の兵士は鍵束を取り出し、鍵穴にガチャガチャと突っ込んで重厚なドアを開ける。おそらく女をこれから客に引き渡すのだろう。
さて、タイミングを見計らって。おもむろに小刀をペン回しっぽく回してみたりなんかしてね。
「出番だ、」
「はいよー、ご指名入りましたー!」
そして重厚なドアが開くと同時にぴょんと飛び跳ねてスパンと喉を掻き切って。うん、我ながら決まったねぇ。
「ぞっ?」
「きゃああ!?」
首を半分程度斬られた兵士は何をされたかもわからず事切れ同室の女性も悲鳴を上げてしまう。この調子で目に入った奴を片っ端からやっつけておこう。
「ん?」
「あ、わわ……」
しかし俺っちは見張りがいた事を思い出した。
クスリが切れてシラフに戻った山田は返り血を浴びてニマニマと笑う俺っちに恐怖し腰を抜かしていたので、取りあえず戦う意志はなさそうだという事だけはわかる。
「殺してもいいけど一応智樹ちゃんとヒカリちゃんの友達だからなあ……折角だしホレ、捕まった奴を助けておくり。殺さないから」
こいつには殺す価値もない。
俺っちは山田に交換条件として捕まった女性の救助をさせるために鍵束を渡すが、
「う、うわあああ!?」
「ありゃ」
彼は一切聞く耳を持たず脱兎の如く逃げ出してしまった。
命の危機に瀕した状況ならば人として当然の反応だけど絶妙にクズだねぇ。
「仕方ないか。ほい」
「はいよー」
このまま囚われた女性を放置するのはどうにも気が引けたので、俺っちは分裂して増やしたまれっち二号に鍵束を渡した。
「んじゃ行きますか」
俺っちは小刀を舐めて致死性の毒をたっぷりと塗りたくる。
さあて、極悪非道なテロリストの戦い方を見せてあげようじゃないの。
「な、なんだ!? ぎゃああ!?」
「そらよっと!」
廊下を駆け抜け、俺っちは壁や床を跳ねながら秒殺ならぬコンマ殺で見張りを斬り殺していく。
カエルパンチよろしく低い姿勢からの切り上げ攻撃は普通の人間に回避する事は難しかっただろう。
「う、撃て! 撃てェ!」
彼等は全員人間と戦う事を想定して訓練しているが、逆に言えば通常の人間とは全く違う戦い方をする人間には経験がない分めっぽう弱いのだ。
「べろろーん!」
「ごぼぉ!?」
無論こうして鋭利なベロを伸ばして頭部を串刺しにしてくる敵とは戦った事なんてないだろう。
「何だよこいつ、何なんだよぉ!?」
俺っちはそのまま絶命した兵士をフレイルの様に振り回して敵を軽く一掃する。
ううむ、爽快感はあるけどまるで歯ごたえがないねぇ。
雑魚をいくら殺しても意味はないしやっぱり羅一星にも挨拶してこよう。えーと、羅一星はどこかなあ。
「む」
けれどマップで確認すると彼女はもう宴会場におらず、既に拠点の外に出て高級車に乗って移動していた。
どうやら危険を察知し一部の部下と逃げたらしい。
まったく、逃げ足だけは早いんだから。
うーん、でもこの後用事があるから追いかける時間もないし……手ぶらで脱出するのももったいないし残った連合軍の将校だけでもやっつけておくか。




