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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第五章 鬼となりし見えざる者達【幕間1】

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5-10 夢桜しばえもんの都市伝説の調査(桜島の噴火)

 何もわかっていない連中にぶつくさ文句を言った後、俺っちはニューヨークから鹿児島にとんぼ返りして今度はモクモクと白煙を上げる桜島を眺めた。


『桜島の噴火警戒レベル引き上げ』


 それは一見非日常的な災害だが鹿児島では数年に一度のペースで定期的に発生し、九州ならば年中起きているなんら珍しくもなんともない現象だった。


 これがいつもなら日常のニュースとして話題にもならずにスルーされていただろう。


 だが夢桜しばえもんという予言者の存在により、民衆はやはりこの情報に食いついてしまった。


『まじか……噴火を予言とかもうほぼ確定だろ』


 いやだから桜島は常に噴火してるっての。


 週に二、三回は噴火してるから曖昧にすれば誰が予言しても一週間以内に当たるっての。


『笑えないこれ。怖すぎる』


 最初は興味本位で首を突っ込んでいた彼等は災害というわかりやすい恐怖によって戦慄してしまう。


 とするとお決まりの様に当然別のジャンルの手合いも現れるわけで……。


『本来はもっと大きな被害になるはずでしたが我々黄王教団の祈りが天に通じ無事に滅びを避ける事が出来ました。祈りのみが終末より我々を救うのです』


 目ざといカルト団体は夢桜しばえもんの話題を利用し動画を投稿し、何気に皆勤賞のガ〇使のおばちゃんの様な教祖様が有難い説法をしていた。


 だらず世界ではカルトのトップとなり、ミヤタ世界ではメアの命を奪うという大役を任されたけど、今回もやはりちょい役で現れたらしい。


 社会不安に便乗して勢力を拡大するのは世の常だ。


 もしも災いが起きたら祈りが足りなかったと言い、何も起きなかったら祈りが通じたと主張してどちらに転んでも正解になる様にする。


 面白みも何も無い教科書の様なドテンプレだ。奇跡でも何でもない誰でも起こせるトリックである。


『外宇宙の天使たる荒木希典と夢桜しばえもんこそが救世主となります。後継者と認められた太子様の御言葉は荒木希典の御言葉です』

(あらそうなのー)


 名前を使うのはこの際どうでもいいけどせめてロイヤリティとか払って欲しいものだ。こんなババアを後継者に選んだ覚えはないんだけどねぇ。


 でも夢桜しばえもんがいつの間にか予言者から宇宙人になっちゃったねぇ。俺っちに関しては外宇宙の存在だから微妙に否定しづらいけど。


 こんな馬鹿馬鹿しい話を語った所で普通は一笑に付されるだけだろう。けれどむしろ信じていない人間のほうがこの場では少数派だった。


『やっぱり荒木希典と夢桜しばえもんは関係があるのかな』


『荒木希典ってテロリストだろ。妄想も大概にしろって』


『この期に及んでお前まだ気付いてないの? 終わってる』


『これだけ騒ぎになっても小説が未だに削除されていないって事はそういう事なんだろうな』


『もうマスコミも政府も信じられない ゾンビも存在しない だから俺は信じたいものだけを信じる』


『奴らの言いなりになって死ぬな 玩具の兵隊になって無駄死にするな 俺達は意志を持った人間だ』


『真実を知る者だけが生き残る 我々は選ばれる』


 洗脳された彼等にはもう誰の言葉も届かない。


 思考を奪われた民衆はやがてゾンビ同然の存在となるのだろう。


 彼等に無理矢理名前を付けるのならば、インフォデミックによって誕生した社会学的ゾンビとでも言うべきか。


 英雄を求める民衆の歪んだ想いは夢桜しばえもんという虚構の英雄を生み出し、その時はそう遠くないうちに訪れようとしていた。


(そろそろ俺っちも動くか)


 だがこの展開は概ね予想通りと言える。


 実際は種も仕掛けもあるんだけど、何かを言った所で情報の海に飲み込まれてしまうだけだ。


 もちろんこっそり検索システムをいじればどうとでもなるが、そんな事をしてもあまり意味はなく特にする理由もない。


 夢桜しばえもんの都市伝説の状況の確認はこれくらいで十分か。


 基本は放置で上手い具合に利用しつつ、アドリブで立ち回るとしよう。


 さて、寄り道も済ませたしそれじゃあ連合軍がうろついている大陸のほうに行くか。


 あまり人間同士の揉め事に首を突っ込みたくないんだけどねぇ。


 そんな事してもややこしくなるだけだし、人類が滅びようがあんまり興味がないし。

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