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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第五章 鬼となりし見えざる者達【幕間1】

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5-9 夢桜しばえもんの都市伝説の調査(ニューヨークの崩壊)

 宮崎編はしばらく泳がせ、今度は特に騒ぎとなっている大分編の反響を調査してみる。


 俺っちが向かったのは大分県の陽区市ではなくアメリカの方だった。数分で日付変更線を跨いだけどまたすぐに戻れば時差ボケはしないだろう。


『ニューヨークの大規模な陥没とビルの倒壊』


 大分ではこれといった事は特に起こっていなかったが、その代わりナジム自治区のモチーフとなったニューヨークでまあまあな大事件が起きてしまった。


 具体的に何が起きているかは一目瞭然である。


 アメリカを代表する大都会ニューヨークは戦時下に突入してから衰退の一途を辿っていたが、陥没が至る所で発生した結果物理的にどん底に落ちてしまったのだ。


 文明の象徴でもある高層ビルは倒壊し、大型トラックは垂直の状態で穴の中に突き刺さっている。


 交通インフラが崩壊した結果火災を止める事が出来ず、建物は現在進行形で延焼して黒焦げになり、住む場所を失った民衆は呆然自失となって身を寄せ合い飢えと寒さを耐えていた。


『これ知ってる。ネットニュースで見た。下水管が壊れていろんな所で大規模な陥没が起きてビルが倒壊したんだっけ?』


『もっと言えばそのビルはイタリアマフィアの拠点になってて倒壊に巻き込まれて全滅したっていう』


 インフラが崩壊した今、下水管の損傷による陥没は世界中で有り触れている。


 しかし倒壊したビルの中にニューヨークを象徴する高層ビルがあり、なおかつそのビルがイタリアマフィアの拠点だった事が噂に尾ひれを付けてしまった様だ。


 ニュースの映像では横倒しになったイタリアンの店の看板が映し出されていた。


 が、もちろんこの店はイタリアマフィアとは一切関係ない。


 おそらくメディアが数字を稼ぐために意図的にやっているのだろうが、サブリミナルにしてはあからさま過ぎる。


 普段はマスゴミと批判しているくせにそれに気付かない連中も大概だけど。結局オワコンとか言いつつ彼等はちゃんとメディアによって操られているのだ。


『夢桜しばえもんの小説もやっぱりこれを暗示してるよな。イタリアマフィアのリーダーは死ぬ直前にナポリタンを食ってたそうだし』


 ちなみにナポリタンは日本発祥でイタリアには存在せず、イタリア人に言わせればなんやねんこれキッショイなあ、と不人気なパスタだ。


 なのでこの投稿はファクトチェックをせずとも嘘だという事は明らかである。


『夢桜しばえもんは予言者じゃなくて、何かしらの方法で下水管の陥没を起こしてイタリアマフィアを一網打尽にしたんじゃないか』


『そもそも下水管の破損でこうなるのか? 爆弾とか仕掛けないとこんな事にならないだろ』


 下水管の破損でこうなるし爆弾とか仕掛けなくてもこうなるよ――とは思ったけど指摘しても彼等は信じないだろう。


『連中はいつも真実を隠している そう遠くないうちに全ての真実が明らかになり世界は再構築されるだろう』


 お前らが勝手にヘンテコな真実を作ってるだけだよ――とは思ったけど以下略。


 俺っちは鼻で笑いながら心の中でツッコんだ。この類の奴に説得するだけ無駄ってものだろう。


 ――皆がそう言っている。


 ――ネットの情報にはそういうものしかない。


 ――だから真実だ。そんな事も知らないのか。まだ気付いていないのか。


 その原理の種明かしをすれば、それは閲覧している人間の興味に合わせた検索エンジンのアルゴリズムだ。


 それ自体は別に陰謀でも何でもない。


 宇宙が好きな人に宇宙の情報を、プロレスが好きな人にプロレスの情報を、陰謀論が好きな人には陰謀論を。


 ユーザーの趣味や傾向に応じて求める情報が手に入りやすくなれば日々は有意義なものになり、ターゲットを絞り込む事で企業も効果的に宣伝出来るからだ。


 けれどその仕組みを理解していなければ、自らが作り上げた閉鎖的な電子空間で反響し続けるエコーチェンバーによって洗脳された彼等は信じたいものだけを信じ、やがて信じたい情報しか認識出来なくなる様になる。


 彼等が手にする情報は基本的に検索エンジンのアルゴリズムによって与えられただけの情報に過ぎないけど、カラクリを伝えても無意味だろう。


 そうした人間がまるで自分で気付いたかのように特定の思想を抱き、政治に影響を与える程度の数になれば、人類は人工知能によって間接的に支配されていると言い換える事も出来る。


 無論そんな人間を支配者達が利用しないわけがない。何も考えない民衆は権力者にとって最も都合がいい存在だからだ。


 彼等は結局気付いていると思い込んでいるだけで、とっくの昔に支配されシステムに組み込まれているのだ。


 おおよその情報はわかったが最後に鹿児島の話題を見てみよう。正直結果はわかっているから見ても見なくてもどっちでもいいけど。


 うーん、でも折角アメリカに来たのにまた日本に戻るのか。面倒くさいお使いイベントだねぇ。

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