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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第五章 鬼となりし見えざる者達【幕間1】

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5-6 葉瀬帆オブザデッド~ごま豆腐サバイバー~

 世界の揺らぎが収まり、俺っちは再びしのさき駅のホームに降り立った。


 虚しくも美しかった景色は一変し、駅の構外から一歩外に出ると戦争とゾンビハザードによって荒れ果てた町並みが広がっている。


 ムゲンパレスは悠久の時の流れによって浄化されたがこちらはより陰鬱な空気が漂っていた。それはきっと現在進行形で死のニオイが噴き出ているからだろう。


「ああぅう」

「かぁみさぁまあがいるよぉお」


 駅から程なく歩くと市街地エリアでは原初の泥が人間に擬態したゾンビが満面の笑みでうろついていた。


 某ゾンビゲームと同じく何気に変異種ではない普通のゾンビと遭遇するのは久しぶりかもしれない。


 とある世界ではショゴス細胞だのなんだの言われ、こちらの世界でもそんな感じの説明が採用されたが、ゾンビは人工知能コクリのハルシネーションから生まれたデマだという事を多くの民衆は知らないだろう。


 実際だらず世界やミヤタ世界のゾンビはそういう成り立ちだし、疑似的に設定も再現されているから説明がややこしいんだけど。


 ともあれ確かなのは普通に襲い掛かって来るので殺られるまえに殺らなければならないという事だ。


「んじゃー酔い覚ましにゾンビゲームを楽しむとしようかねぇ」


 やろうと思えば街ごとゾンビを消し去る事も出来るけど、あまり派手な事は出来ない。


 なので取りあえず二丁拳銃スタイルになってちまちまとヘッドスナイプで周辺のゾンビをワンキルしていく。


「ほい、バンバンバン。ババンババンバンバン」


 現実世界の葉瀬帆には今後もちょいちょい訪れるし、へなちょこな智樹ちゃんやヒカリちゃんのためにも軽くゾンビをやっつけて数を減らしておこう。どうせまたリポップするけど。


「ぱーてぃー、とくぎをひろぉお」

「しなくていいよ」


 ゾンビ映画でありがちなどこかで見た有名人ゾンビもハチの巣にしてやっつけて。


 いやこいつは有名人って程でもないけど、結局最後まで一発ギャグを披露させずに退場させてしまってなんかごめん。


 微妙なローカルタレントのこいつは時代に媚びを売って天下を取ったって裏設定があったけど、そういえばミヤタ世界でも雑魚ゾンビでチラッと出てきたような。


 まあどうでもいいか。


 ダウンした後は弾の節約も兼ねてちゃんと死んでるか確認する為にナイフでベシベシ。リメイク版の二作目はゾンビが硬くて難易度が高いからねぇ。


 他には足を撃って上手く水場に誘導して溺死させて。


 よく通過する通路の窓には事前に板を取り付けて。


 ドングルキーは回収してバッジにして事前に本棚を動かしておいて。


 うん、悪ノリはこの辺にしておこう。後半は全部悪ふざけだよ。


「ん」


 補給も兼ねて店を調べると何故か長崎特産のゴマ豆腐を発見した。普通はゾンビハザード中に手に入れる機会はない日持ちのしないアイテムである。


 ここで豆腐の化け物でも出てくれば面白いが流石にそれはくどすぎる。腐ってないかちょっと心配だったけど俺っちは普通に回収して後で美味しく頂く事にした。


「さて、こんなものかな。じゃこれあげるから後はヨロー」

「うぃー」

「ゴマ豆腐かあ。立ち位置がわからないから組み合わせにちょっと困るんだよね。取りあえず白ワインと飲んでみるか」


 ゾンビ狩りに飽きた俺っちは分裂した俺っちに片付けを任せる。仮に長崎中のゾンビを倒した所でどうせまたリポップするし大体の感じでいいだろう。


「ん」


 何かを踏んだ事に気が付いた俺っちは足元を見る。そこにはボロボロになった新聞記事があり、


『羅大統領誕生 民衆の歓喜の声』


 と、なかなか面白い三文記事が書かれていたのだ。


『得票率99.8%』

『戦争終結に向けた和平交渉へ』


 続けて新聞にはそんな文言も見受けられる。


 連合軍の中核を担う羅鋼らごう兵団のルオ一星イーシン総統は人気だけはあったけど、どうやらようやく中国のトップになったらしい。


 写真には若作りをしたアイドルの様な女性が涙ぐんで拳を突き上げ、銃を持った兵隊が見守る中で民衆も全力で勝利を祝福していた。


 少なくともこの新聞社は羅大統領の誕生を概ね好意的に捉えている様だ。


 これによって中国に自由と平和がもたらされて戦争が終結する――そういう事にしておきたいのだろう。


 羅一星は元々芸能人という事もあり政治家にしては美少女の部類に入る。タレントから国家元首になった人間は割と多いがそれは民衆を扇動する能力に長けているからだろう。


『正当性に疑問の声も』


 だが問題は中国の選挙制度の都合上、本来大統領なんてものは誕生しないという事だ。


 一応意地とばかりに隅っこのほうに小さくそう書かれていたけどよく検閲が通ったものだ。


 つまりこれは適切なプロセスを経ずに勝手に選挙をし、勝手に大統領になったと自称している政治も軍事もド素人の元タレントのアラサーに、戦う余力がなくなった連合軍が後の事を丸投げしてほなさいなら、と言っているだけである。


 普通はそんな人間を国のトップとして認めるわけがない。三日天下とまではいかなくても長続きはしないだろう。


 当然混沌は続き戦争もさらに激化するだろう。細々と延命していたけれどこりゃいよいよ人類が滅びるかもねぇ。


「よいしょー」


 俺っちは光の翼を背中に生やし飛行モードになってバビューン、と飛んでいく。ゾンビゲームならバランスと世界観をぶっ壊すチートだけど。


「そいじゃあぼちぼち行きますか」


 中国三大悪女になりそうな羅一星も気にはなるけど、まずは夢桜しばえもんの小説がもたらした九州各地の異変を確認するか。


 形を持たないデミウルゴスデマは誰にもコントロール出来ない。


 多くのデマを利用しようとした為政者は、往々にして自らが育て上げた悪魔によって貪られる。


 妄念は時として王や神すらも殺し、それは無論俺っちも例外でない。


 だがそこはその都度アドリブで上手い具合にやるしかないだろう。行き当たりばったりとか言わないでねぇ。

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