4-204 活気を取り戻したムゲンパレス
――聖智樹の視点から――
ニライカナイでの死闘を終え、俺達はようやく愛すべき故郷に帰る事が出来た。
空を翔ける黄金電車の車窓にかじりつき、あの場所に辿り着くのを今か今かと待っていたヒカリとマタベエは駅に到着するや否やタッタとドアに駆け寄る。
「「だーいぶ!」」
ドアが開くと同時に二人は最高の笑顔で復旧した葉瀬帆駅にホームに飛び降り、構外へと駆け出していった。
そこには復興途中なので少し不格好ではあったけれど、何も変わらない愛すべき故郷が存在していた。
「えっほえっほ」
「そっち頼むなー!」
「わーいわーい!」
住民の変異ゾンビ達だけではなく人間もムゲンパレスの復旧作業に従事しており、集団で異世界転移した事で葉瀬帆の街はずいぶんと賑やかな事になっていた。
「ああ……感無量です! こんなにもたくさんのお客さんがムゲンパレスに来てくれるだなんて!」
「やってる事は労働だけどね」
ムゲンパレスの復興を願い続けたオトハは長年の夢が叶い、苦笑しながら指摘したタカオも珍しく微笑んでいてとても嬉しそうだ。
「何だろう、私の知っている葉瀬帆だけど私の知っている葉瀬帆じゃないよ! うぇーい!」
「うぇーい!」
ヒカリは意味もなくその辺のもふもふに絡み両手を握って回りながら踊る。
無茶ぶりに対しても即座にちゃんと笑顔で付き合ってくれる当たり、流石はムゲンパレスのマスコットキャラクターだ。
「ご時世のせいでギスギスしてたけど、昔から国際都市の長崎はいろんな国の奴らと上手い具合にやって来たからな。ある意味では昔に戻ったんだろうな」
その優しい光景は戦争しか知らない時代に生まれた俺も知らない故郷の姿だった。
彼等は全てのしがらみから解放されて自由を謳歌し、春の芽吹きを祝福する様に眩い光を浴びていた。
たとえこれが世界が終わる前に見る夢だとしても、こんなにも幸せに満ち足りているのならどうだっていいだろう。
ミトラさんも人々の笑顔と活気に溢れた駅前を眺めた後、ほんの少し真面目な顔になって俺に告げた。
「ただ自由と混沌は紙一重です。盛り下げる様で悪いですが、早速今後の事について話し合いましょう」
「わかってます」
けれどいくら幸せな光景で平和と自由が素晴らしいものだとしても急激な変化は様々な問題を引き起こしてしまう。
この優しい光景を護り人々の笑顔を奪わないためにも、まずは今後の付き合い方も含めてその辺りのプロフェッショナルであるミトラさんと調整をしなければならないだろう。




