4-201 リンドウの罪滅ぼし
後始末が進むと次第に被害の全容もわかる様になり、NAROの拠点には次々と回収された遺体が運ばれた。
中には旧希典派や異世界軍の死体もあるが、異世界軍の死体のほうはカルラ族部隊に返却していく。
死体は放っておくと蛆が湧き病気の原因にもなるので、人道的な観点を抜きにしても可能な限り回収しなければならない。
言葉を選ばずに言えば、ニライカナイの人にとっては誰でもいいからとっとと持って帰って欲しい迷惑な廃棄物なのだろう。
「あれは……」
しかし彼等は玉の様な汗を流しながら亀の様な墓を作り、遺体は尊厳を持って弔われていた。
昔の沖縄ではああいうお墓に入れて風葬をしていたんだっけ。
「リンドウさんまで」
その中には何故か特に絡みがないけど、だけどある意味では一番接点があるリンドウさんもいて、骸となった兵士のためにせっせと亀甲墓を作っていた。
死んだ後の事なんてどうでもいいけど、やっぱりああいう風にちゃんと悼んでくれるのならば救われた気持ちになる。
俺はいてもたってもいられず彼女に声をかけて埋葬に協力する。
戦う事が求められる英雄の役割ではなくともこれは戦争で一番必要な儀式だろう。
マジムン達はノミとハンマーを使い、魂を込めて平和の礎に今回の戦いで死んだ人の名前を彫る。
沖縄戦で亡くなった全ての人の名前が刻まれたようにそこに敵味方の区別はない。
彼等は可能な限り名前を彫り、存在した証を残し続けた。
突貫工事で墓を作ったマジムン達が祈りを捧げて弔いを終え、リンドウさんも流石に疲れたのかふう、と腰を下ろした。
「お疲れ様です」
「いいって事よ。頑張ってくれた智樹に負けないくらいオバちゃんも張り切らないとねぇ」
リンドウさんは魔法瓶に淹れた麦茶を飲み、切なそうにカップに揺蕩う水面に映った自分の顔を眺めた。
「智樹。またうちの子と友達になってくれてありがとうね」
「リンドウさん?」
彼女は不意にそんな不思議な言葉を呟いた。
だけど俺が聞き返しても彼女はそれ以上何も言わなかったので空耳だったのかもしれない。
「母ちゃーん」
「あら、アマビコ。なんか用かい?」
「うん、修理が必要な設備があってNAROの人達が……」
一休みしているとアマビコがやって来てリンドウさんに用事を伝えようとした。だけど彼は、
「母ちゃん……なんか雰囲気変わった?」
「気のせいだよ」
と尋ね、リンドウさんはいつも通りの気さくな笑顔で笑い飛ばした。
「そっか」
「じゃ、行こうかね。智樹はもう少しゆっくりしてな」
アマビコはそれ以上何も聞かず、リンドウさんは後始末をするために次の現場へと去っていった。
もしかしたらリンドウさんは鍋島竜胆の記憶を思い出してしまったのだろうか。
厳密には転生者だとは断言出来ないけど、きっとそうなのだろう。
リンドウさんを眺めているとニイノとマタベエも駆け寄り、彼女は楽しそうに笑っていたけれど、その後ろ姿はほんの少し切なそうだった。
彼女は今暖かな家族に囲まれて幸せに生きている。難しく考える必要なんて何もないんだ。




