4-200 ニライカナイの騒乱の後始末
それから程なくして捜索隊が迎えに来て、大喜びした仲間からもみくちゃにされハーレム気分を思う存分に味わった後集落に帰還し、俺はすぐに現実に直面する事となる。
「パンパンスパパンッ!」
「オウ!」
「オウ!」
「アーッ!」
「オウッ!」
俺はリズムゲームの様に手際よく回復弾を発射して負傷者の治療をする。
もちろん卑猥な要素は一切無く彼等は癒された事で気持ちよくなっているだけだ。
「すーぱーぽふぽふ!」
「にゃふ~」
キノコ胞子が強化されたマタベエもあっちへこっちへ駆けずり回り、ぽふぽふと健気な姿でNAROの隊員を骨抜きにしていた。
「ごめんね、智樹。戦いが終わったのにこき使って」
「気にするな、ヒカリ。後始末も含めて軍事行動だ。この辺をきちっとしておかないと結局水の泡になる。実際の戦争はヒーローみたいに街を好き放題壊してさいなら、とはいかないからな」
元気を取り戻したヒカリは隊長としての役割を全うし復旧作業に全力を尽くしていた。
ニライカナイの人を巻き込んだのは俺達の方だし責任を持って元通りにしないと。
「……それよりなんかバタバタしてるけどもう戦いは終わったんだよな。残党を探してるのか?」
「うん。旧希典派の幹部の死体は見つかっていないし、我那覇総督とかもまだ。後はまだ密林地帯に残ってるNAROの皆を探してる。死体だとしても見つけてあげないといけないから」
「そっか」
これだけの激しい戦闘だ、おそらくそれなりの死者も出たはずだろう。
生きて帰れなかったとしても、やはり骨だけでも元の世界に返してあげたいという気持ちはよくわかる。
「ユルグも見つかってないんだって。生きてるといいんだけど……」
ヒカリは親しい人間とまだ再会出来ていないらしく悲しげにつぶやいた。
ユルグって確かあの小柄な黒人系の少年だっけ。
こういう時はどう言葉をかけるのがいいのだろう。安易に気休めの言葉をかけるのも違うだろうし。
「ユルグ? ユルグなら会っただぁよ」
「え!? 本当!? ってどなた?」
だけどその言葉を聞いてひょっこりと甲冑を着た女性が現れる。
随分と和風ファンタジックな見た目だが、ヒカリは初対面の相手にそう告げられ喜びつつ困惑してしまう。
「オラだよ、吹雪だぁよ。でもわかんないからいつもの姿に戻るだよ」
「おお!?」
吹雪は説明するのが面倒くさくなりいつものイノシシの姿に戻った。マップ越しに軽く戦っている様子は見たけど実際眼にするとなかなか驚いてしまう。
「ユルグと会ったの!?」
すると即座にむちポチャなミカン隊員がどすどすと現れヒカリに駆け寄った。彼女は確かユルグと仲が良さそうな隊員だっけ。
「あっ」
彼女の後を追ってミトラさんと険しい表情のトレンタ隊長も現れたが、ヒカリはまずミカンに伝える事にした。
「うん、うちの吹雪が会ったって」
「んだ。ピヨタンに乗って武器とか服とかくれただよ」
「ピヨタン……それでその後は!? 怪我とかしてなかった!?」
「わかんないだぁよ。ちょっと雰囲気が変わってたからすぐにはわからなかっただども、特に怪我とかはしてなかっただぁよ」
「……そっか」
状況がよくわからないがそれはミカンにとって吉報だったらしく安堵する。
そして遅れてミトラさんとトレンタ隊長もやって来て彼女に尋ねた。
「櫟隊員に会ったのですね。現在彼を捜索している最中なので詳細な報告をお聞かせ願えますか?」
「んだども今言った通りだんべ。ピヨタンに乗ってやってきて武器とか服とかくれた後、オラ達はバラバラに戦ったからわかんないだんべ。役に立てなくてごめんだぁよ」
「ふむ、ピヨタン……つまりMr.ハロウィンと遭遇した後ですね。生きている可能性はあるというわけですか」
吹雪は困った様に証言したがミトラさんにとっては十分生存を信じる根拠となったらしい。
それにしても旧希典派の大幹部のMr.ハロウィンと遭遇してよく生きてたなあ。
だけどぼんやりとそんな事を思っていると、いきなりトレンタ隊長が深々と頭を下げた。
「……すみませんッ!」
「わわっ!?」
「うおっ?」
ただそれは会話の流れにそぐわない不自然なものだった。
彼はユルグの上司だったはずだが、だとしても謝罪する要素が特になかったのでミトラさん以外は困惑してしまう。
「ユルグは作戦の途中で脱走しました。なのでもう探しても見つからないと思います……全部俺の監督不行き届きが原因です!」
「ユ、ユルグが……?」
「トレンタ隊長、何を言ってっ」
ユルグが仲間を見捨てて逃げ出した――彼の報告は到底信じられるものではなく、ミカンはすぐに訂正しようとした。
だけどミトラさんはミカンを制し、トレンタ隊長を睨んで追及する。
「その様な報告は受けていませんが。それにもしもあなたが仰っている事が事実ならあなたも処分されます。それでもいいのですね」
「はいッ!」
「トレンタ隊長……」
どうにも怪しいものはあったがミカンは口をつぐんで何も言わず、トレンタ隊長は処罰を受けるのを承知で懇願している様に見えた。
きっと俺には知りえない複雑な事情があるのだろう。
「わかりました。後ほど詳細な報告をしてもらいます。処分は報告を聞いたうえで決めましょう」
「はいッ!」
ミトラさんも当然その事はわかっているはずだが、トレンタ隊長を追求する事はなかった。
唯一何もわからないヒカリは不安げな様子だったがやむをやまれぬのっぴきならない事情があると察したのだろう、それ以降ユルグについての話をする事はなかった。




